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== 警察小説 ==

失踪当時の服装は

ヒラリー・ウォー
創元推理文庫
★★★★



女子学生の突然の失踪事件の謎を追う警察小説の古典的名作

【あらすじ】
マサチューセッツ州の女子大学生ロウエル・ミッチェルが失踪した。
警察の丹念な捜査にもかかわらず、行方は杳として掴めなかった。
失踪の理由は?果たしてミッチェルは生きているのか?
ブリストル警察署長のフォードと部下のキャメロン巡査部長は、
連日捜査に明け暮れるが有効な手がかりは何一つ発見されない。
警察の捜査活動をリアルに描ききった「警察小説」の古典的名作。

【読みどころとポイント】
これは紛れも無い「警察小説」だ。
しかし現代の警察小説に精通した読者が思い浮かべる
巷の警察小説とは少し趣が違う。

科学捜査が進展した現代では、
捜査の過程でいくつかの手がかりが発見されたり
ミステリとしての魅力づくりのために
割と早い段階で魅力的な謎が提示されたりするのだが
本書には全くそれが無い。

物語を2/3まで読み進めても何の手がかりも見いだせないのだ。
警察の捜査は全て空振り。よりどころとなるのは彼女が残した日記のみ。
しかし、手がかりにつながる記述はほとんど見当たらない。
とにかく捜査の進展が何も無いまま終盤に入るのだ。

それともうひとつ、昨今の警察小説と異なるのは
犯罪を巡る人間ドラマには主眼を置いていないのだ。

通常は聞き込みの課程で様々な登場人物が現れ
失踪した女子大生を取り巻く人間模様が露になっていくのだが
肝心の聞き込みのシーンの描写が無く
キャメロンが聞き込みの結果を署長へ報告するという形で
読者に提示されるため、登場人物の人間像がほとんど伝わらないのだ。

何だかこのように書いていると
とても地味でつまらない小説のように思えるかもしれないが
この物語にリズム感と新鮮さを与えているのは
フォード署長とキャメロン巡査部長のやり取りだ。
お互いに憎まれ口をたたきながらも、どこか信頼感で結びつき
警察官である事の誇りを失わない男たちの
プロフェッショナリズムあふれる行動は実に良いのである。

フォードの残された家族に向ける優しい眼差しや
朝から晩まで捜査に明け暮れるキャメロンの姿は
警察官としての矜持に溢れているのである。

ずばり、本書の醍醐味は…
警察とは何か?警察官の仕事とは何か?を
この二人の行動を通して浮き彫りにした事だと思う。

捜査が行き詰まりを見せ、弱音を吐きかけたキャメロンに
フォード署長が言った次の言葉が本書のテーマを象徴している。

『きみだって警察の仕事が
 どんなことかぐらいは知ってるだろう。
 歩く仕事だ、歩いて、歩いて、歩き回るんだ。
 あらゆる見こみをしらみつぶしにするんだ。
 1トンの砂をふるって一粒の砂金を探し出す仕事だ。
 百人の人間にきいても何の手がかりもなく、
 さらにまたもう百人の人間に
 ききに出かけてゆく仕事なんだ。』


冒頭に述べた紛れも無い「警察小説」たる所以はここにある。

必読。
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== 警察小説 ==

ウォッチメイカー

ジェフリー・ディーヴァー
文春文庫
★★★★



正確無比な連続殺人者と科学捜査・監察の天才ライムの熾烈な頭脳戦!

【あらすじ】
ウォッチメイカーと名乗る殺人者あらわれた。
被害者が死に至るまでの“時間のかけ方”にこだわる残忍な手口。
いずれの現場にもアンティークの時計が残されてい た。
しかも犯人が同じ時計を十個買っていることが判明。
四肢麻痺で科学捜査・監察の天才リンカーン・ライムは
尋問のエキスパートであるキャサリン・ダンスととも に
史上最大の難敵に捜査を挑んでいくが…。
シリーズの最高傑作と評されるベストセラー作品。

【読みどころとポイント】
恥ずかしながら、ジェフリー・ディーヴァーは初読。
映画でボーン・コレクターを観たくらい。
噂に違わず、緻密な構成。どんでん返しの連続。
結論は、さすがのベストセラー作品だった。

完全犯罪の遂行に至福の喜びを感じるウォッチメイカーと、
科学捜査・監察のエキスパートであるリンカーン・ライムの
ハイレベルな頭脳戦には、ホントに舌を巻いてしまった。

主人公であるライムは自分にも部下にも厳しい規律を課しており、
頑固で喰えない堅物のキャラクター。
(映画ではD・ワシントンが好演)
読者の共感をあまり呼びそうにも無いが、
周りを固める個性豊かな捜査陣が人間味溢れていて、
素晴らしいチームプレイを披露してくれれる。

今回は尋問のエキスパートであるキャサリン・ダンスが加わり
これまで以上に(読んでないが)捜査内容もぐっと厚みを増した。
そのチームをもってしてもこのウォッチメイカーは相当に手強い相手だ。
時計が寸分違わず時を刻むが如く、正確無比に完璧に犯罪を遂行していく。
頭が良すぎて憎たらしさよりも、畏敬の念すら抱いてしまうほどだ。

リンカーン・ライムシリーズの最高傑作の呼び声も高いそうだが、
その通り、確かにハイレベルの作品に仕上がっている。

これまで、高水準の作品で読者を欺き続けてきた作者だけに
これくらいの内容にしないと読者は納得しないのだろう。
それだけに、やや作り込みの感があり、
かえってそれをマイナスポイントと評価する読者も多いはず。
天才作家の宿命か。ツラいね。

作者のディーヴァーが毎回ライムに課すハードルは高く厳しいが
それは作者ディーヴァーにとっても、超えなければならない壁なのだ。
ライムとディーヴァーの厳しい戦いから今後も目が離せない。

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== 警察小説 ==

警官嫌い

エド・マクベイン
ハヤカワ文庫
★★★



警察小説のジャンルを切り拓いた87分署シリーズの記念碑的1作目

【あらすじ】
夜勤に向かう87分署の刑事が、銃弾2発を受けて即死した。
分析の結果、45口径の拳銃で殺されたことが判明した。
87分署の刑事たちは懸命の捜査を重ねるが
つづいて同じ部署の刑事がまたもや射殺されてしまう。
はたしてこれは「警官嫌い」の犯人によるものなのか。
ミステリの分野に「警察小説」の新分野を切り拓いた
87分署シリーズの記念碑となる第一作目。

【読みどころとポイント】
お恥ずかしながら、87分署シリーズを読むのは初めてなのだ。
海外ミステリを読み始めた頃は本格推理ものに傾倒しており
存在は知っていたもののあまり興味が湧かなかった。
現在では、50年以上にわたる長寿なシリーズであるため
最初の1冊がなかなか手に取れなかったのだ。

やっと読む機会ができたが、噂通り王道の警察小説だった。
昔も警察官が主人公の推理小説はあったものの
ミステリ黄金期のそれは他の探偵と同じように
一般人と離れた威厳のあるキャラクター設定が主体だった。

マクベインは、大都会の街の片隅を駆け回りながら
額に汗して働くいわば二流の警官像を等身大の視点から描いた。
今でこそこの手の警察小説は国内外も含めて巷にわんさと溢れているが
これが50年以上前ともなれば、かなり新鮮に受け止められたのだろう。

本書の主人公であるスティーヴ・キャレラは
真面目で堅実な性格。現場の警官であることを誇りに思っている。
決して天才肌ではないこのスティーヴが地道な捜査を重ねながら
真犯人に近づいていくオーソドックスなストーリーが展開される。

検死解剖による死因分析や銃創からの犯行状況の推察など
今日の警察小説ではあたりまえになっている捜査の背景もきっちり押さえられ
当時としてはかなり画期的だったのではないだろうか。

アイソラ市は架空の街であるが
ここにはニューヨークの街の猥雑な香りが漂っている。
こうしたリアルな空気感も人気の理由のひとつだろう。

今回は警官が連続して殺されるという事件であるが
連続殺人の必然性や動機という点でいささか疑問が残り
その点で本書の評価は★3つとしたが、
87分署シリーズは今後も読み続けていきたいと思う。

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== 警察小説 ==

黒い犬

スティーブン・ブース
創元推理文庫
★★★



反目し合う2人の刑事が失踪少女殺人事件に挑む気鋭の警察小説

【あらすじ】
犬がくわえてきたのは、血の付いたスニーカーだった。
失踪していた少女が他殺死体で発見されたのだ。
捜査に駆り出された刑事のベン・クーパーは
新しく異動してきた女刑事ダイアン・フライと捜査にあたるが、
性格が全く噛み合ず、ことあるごとに反目し合う。
英国警察小説の新鋭と期待されるスティーヴン・ブースのデビュー作。

【読みどころとポイント】
いや〜地味で暗い警察小説です。舞台も登場人物も事件もすべてが。
兎に角、捜査にあたる2人の刑事の確執が何ともいただけない。

男勝りで上昇志向、まったく可愛げのない女刑事ダイアン・フライと
殉職した父の栄光の影に悩まされ続ける内向的な性格のベン・クーパー。

フライは過去の事件で心に傷を負っており他人との協調を否定し
異常なまでの上昇志向を胸に抱いている野心家だ。
一方のクーパーは、ある事件で殉職し地元から英雄と崇められる父の影に
大きな重圧を感じており、日常生活でも母の介護という難題を抱えている。

まったく噛み合ない2人が反目しながら殺人事件の捜査にあたるのだが
全編にわたって2人のぎすぎすした関係が描かれ
とにかく嫌~な雰囲気が延々と続くのだ。

舞台も「嵐が丘」を思わせるような寒々しいイギリスの田舎町。
他の登場人物も一癖も二癖もある連中で物語のトーンも暗い。
小さなコミュニティである田舎町特有の複雑な人間関係と
登場人物一人一人が抱える暗い悩みを作者はじっくり描いていく。

リアリティはとってもある警察小説なのだが共感できる人物が不在なのだ。
容疑者の一人に名を連ねた老人がクーパーにこんな事を言う。
若い者がふさぎこんだりすることを、
背中に黒い犬がべったりついているというのだと。
黒い犬にとりつかれ何もかも上手く行かなくなったクーパーが自暴自棄になり
フライとつかの間の交情が生まれるシーンは辛辣だ。

事件の解決後も遺恨を残すこの2人の今後はどうなっていくのだろう。
次作も翻訳されているようだが、そう簡単に関係が修復するとは思えない。
という訳で、次も読まざるをえなくなった次第。

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殺人者の顔

ヘニング・マンケル
創元推理文庫

★★★★



中年刑事クルト・ヴァランダーが活躍する人気シリーズの第1弾。

【あらすじ】
スウェーデン南部のスコーネ地方の村で、老夫婦が何者かに襲撃を受けた。
隣人の通報で警察が現場に赴くが夫は既に死亡。妻も瀕死の状態であった。
二人とも激しい拷問を受けた痕跡があり、重傷を負った妻も
「外国の…」という謎の言葉を残して搬送先の病院で息を引き取る。
一方、スウェーデン国内ではかねてから外国人排斥運動が高まり
今回の事件が運動に拍車をかけ、移民一人が射殺されるという事件が発生。
スウェーデン警察小説に新たなページをつくるシリーズの第1弾!

【読みどころとポイント】
ご存知、中年刑事クルト・ヴァランダーが活躍するシリーズの第1弾。
地元スウェーデンではもちろん、日本でも人気のシリーズだ。

先に本シリーズの傑作とされる「目くらましの道」を読了しているので
内容はいかにと思い読み始めたが、初回から高水準の内容だ。

とにかくこの中年バツイチ刑事クルト・ヴァランダーの造形がいい。
一言で言えば、冴えない中年オヤジなのである。

出て行った女房に泣きながら帰宅を懇願したり、
ひとりヤケ酒をあおって自虐的にふさぎこんだり
寂しさから女性検察官に抱きついたりと、兎に角情けないのだ。

彼は捜査においても天才的なひらめきを発揮するタイプでなく
事実をひとつずつ積み上げながら真実に迫っていく
ある意味では不器用な警察官である。

かの「マルティン・ベック」シリーズに代表される通り
スウェーデンの警察小説は、手がかりを地道に積み上げ
徐々に事件の核心に迫っていく堅実な構成が特徴であるが
これに冴えない中年オヤジの哀感を掛け合わせたことで
幅広い読者層の支持を得たのではと思う。

肝心のミステリはよく出来ていて
死亡した老夫妻が何故激しい拷問を受けていたのか、
ダイイングメッセージが意味するものは何か等、
魅力的な複数の謎が冒頭に提示され
捜査の進展が新たな謎を呼ぶ展開も読者を飽きさせない。

スウェーデンにおける外国人排斥運動など
当時の社会状況も物語の背景に据えることで
小説の奥行を持たせ単なる謎解きものに終わらない構成になっている。

シリーズは既に完結しているようだが
これから残りの既刊を読んでいくのが楽しみである。


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