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== 国内小説 ==

武士道エイティーン

誉田哲也
文春文庫
★★★★★



青春エンターテインメント「武士道シリーズ」、感動の完結編。

【あらすじ】
宮本武蔵を心の師と仰ぐ磯山香織と、日舞から剣道に転進した甲本早苗。
彼女たちもついに三年生。最後のインターハイでの決戦は目前だ。
部下の指導に頭を悩ます香織、思わぬアクシデントに見舞われる早苗。
二人の勝負のゆくえはいったいどうなるのか?
オールキャスト総登場でおくる感動のクライマックス。
青春エンターテインメント「武士道シリーズ」、堂々の完結編。

【読みどころとポイント】
既に読んでいたのだけれど、随分レビューが遅くなってしまった。
シックスティーン、セブンティーンと続いてきた3作目の完結編。
結論から言うと、完結編にふさわしい出来映えだった。

宮本武蔵を崇拝する一匹狼の女剣士「磯山香織」も剣道部の主将。
剣道部をまとめあげていく事に難儀し、後輩の指導にも頭を悩ます毎日。
そもそも自分勝手に生きてきた人間がはじめて剣道部を俯瞰し
リーダーシップを発揮していくのだから無理も無い。

一方、福岡南高校に転校したライバルの甲本早苗も
思わぬアクシデントに見舞われ、香織との闘いの前に
大きなハンデを背負ってしまう。
もともとお気楽に剣道をやってきた早苗が
この危機をどのように乗り越えて行くのかも見どころ。

本書の楽しみはそれだけでなく、脇役の銘々伝もなかなか読ませる。
香織の師匠「桐谷隆明」が道場を開いたいきさつや
早苗が所属する福岡南高校の顧問「吉野先生」の血風録、
モデルをめざす早苗の姉「緑子」の恋愛話まで、
とにかくオールキャスト総登場、サービスたっぷりの完結編だ。

とにかく、武士道シリーズは面白かった。
武士道という見立ての中で、香織と早苗の「心の間合い」や
一人ひとりの生き方、人生観を鮮やかに描き出した点が素晴らしい。
3年間が輝いていただけに、ラストはほんの少し寂しいけれど
それもまた人生。香織と早苗、二人の未来に幸あれ!
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┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 国内小説 ==

世界でいちばん長い写真

誉田哲也
光文社文庫
★★★★



不思議なカメラを手にしたフツーの中学生のさわやかな青春小説


【あらすじ】
クラスの人気者だった親友の洋輔が転校してから、
宏伸は冴えない毎日を送っていた。
たいした目標もなく、クラブ活動の写真部も気が入らず。
そんなある日、祖父の古道具屋で不思議なカメラに出合う。
それは、世界一長い写真が撮れるカメラ。
そのカメラを手にした宏伸の生活が徐々に動き出して行く。
ベストセラー作家の誉田哲也が贈る、さわやかな青春小説!

【読みどころとポイント】
肩の力を抜いてサクサク読めるさわやかな青春小説。
主人公はどこにでもいるフツーの中学生。
勉強もフツー、スポーツも得意というほどではなく
恋愛に対してもあまり積極的ではない。

そんなどこにでもいそうな中学生が
ふとした事で不思議なカメラを手にした日から
生活が徐々に変わっていく。

まず、この小説のポイントは
これと言ってとりえのない(かと言って落ちこぼれでもない)
普通の中学生を主人公にすえた点だ。
読者に、何となく自分もこん感じだったよな〜という
妙な親近感を与えたことがミソ。

そしてもうひとつのポイントは作中で宏伸が手にした不思議なカメラ。
このカメラは、360度パノラマ写真による世界でいちばん長い写真が撮れるのだ。
360度を映し出すカメラを内向きな主人公に持たせることで彼の視野を広げ
「君の周りにはこんなに素晴らしい世界があるんだよ」という事を
宏伸にも、そして読者にも知らしめた事だ。

さすが上手いぞ、誉田哲也。
宏伸をとりまく年上の従姉・温子や写真部の部長・奈々恵とのやりとりも良い。
彼を叱咤激励するのがいづれも女性っていうのもハマっているのだ。
宏伸がこのカメラを使ってどんなチャレンジをするのかは読んでのお楽しみ。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 国内小説 ==

砂漠

伊坂幸太郎
新潮文庫
★★★★★



パンクロックのビートにのせて描く現代の大学生たちの青春小説。

【あらすじ】
同じ大学に入学した5人の男女がコンパで出会った。
合コンや麻雀、ボウリングに明け暮れる薄っぺらな毎日、
そんな彼らもちょっとした事件に巻き込まれ…。
共に経験したいくつかの出来事が彼らをほんの少し成長させていく。
社会という砂漠の中にある大学という小さなコミュニティで
あがきもがきながら何かを見つけようと生きる現代の学生たちの姿を
パンクロックのビートにのせて描くリアルな青春小説。

【読みどころとポイント】
伊坂幸太郎が書く現代の大学生たちの肖像。
麻雀とコンパとボーリングに明け暮れる
薄っぺらな大学時代の生活を極めてリアルに描いた佳作だ。

作中で事件が起こるけれど本作は別にミステリではなく
あくまでも北村と取り巻きの大学生たちの日常がメイン。
淡々と進む物語ではあるけれど、物語は読者を飽きさせない。

どこにでもあるような大学生活の風景が
伊坂幸太郎の筆力によって爽やかな感動を生む物語に仕上がっている。

冒頭に、北村は仲間の一人からこんな事を言われる。
学生は近視眼型か鳥瞰型に分類されると。

主人公の北村は鳥瞰型、冷静で慎重だが、事なかれ主義。
どこか社会を冷めた目で傍観しているタイプだ。
ところが本書には、彼と相反する西島という男が登場する。
思い立ったら即行動。独特の理論で周囲を論破する近視眼型タイプ。

彼の行動は北村をはじめ友人たちの予想を逸脱しているが
不思議とその結果は吉と出る事が多いのだ。
「一生懸命」や「努力」「熱い友情」なんて言葉が
どうもしらけがちな現代の学生生活の中において
西島のような存在は極めて特殊だ。

彼らは現代社会にどこか斜に構えて冷めた目線を送りつつ
彼らなりに現代社会の厳しさや現実を認め
それを「砂漠」としてとらえ、一瞬の大学生活を謳歌する。

北村の彼女が彼に向かって言うセリフ。
「学生は、小さな町に守られているんだよ。
町の外には一面、砂漠が広がっているのに、守られた町の中で暮らしている」

しかし西島は北村にこう言う。
「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、
 余裕でできるんですよ。」

どこか冷めたような現代の若者たちの日常に
「西島」という古風で行動派の人間を置いた事で
薄っぺらな大学生活を鮮やかな風景に一変させたのがミソ。

ストレートな青春小説を書きにくい時代かもしれないけれど
こうした時代に爽やかな感動を呼ぶ物語に仕上げた伊坂の筆力は見事。

そして最後の卒業式に学長が社会に巣立つ学生たちに語る言葉が白眉。
さすが泣かせるよ、伊坂幸太郎!


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== 国内小説 ==

ダック・コール

稲見一良
ハヤカワ文庫
★★★★★



美しく幻想的な調べが織りなす珠玉のハードボイルド

【あらすじ】
夏も終わりかけの河原で若者は石に鳥の絵を描く不思議な男と出会う。
驟雨を避け二人でキャンピングカーに避難したが
やがて若者はまどろみ六つの夢を見る。
自然への畏怖や愛惜、野生の厳しさ、男たちの矜持などを
美しく幻想的なハードボイルドに昇華させた必読の短編集。


【読みどころとポイント】
何度も読み返したくなる小説というものがある。
この物語を初めて読んだのはもう随分前になるのだが
今でも時折頁を開いて新鮮な感動を味わっている。

稲見一良は癌のため1994年に9冊を残してこの世を去った。
ハードボイルドと大人のメルヘンが融合したような
タフだけれどどこか透明感がある美しい物語を書ける作家だった。

本書は、日常の仕事に忙殺される生活に疲れ旅に出かけていた若者が、
石に鳥の絵を描く不思議な男と河原で出会うシーンから始まる。
二人は降ってきた雨を避け若者のキャンピングカーに乗り込むが
片言の会話も尽き男は眠り、やがて若者も夢の中へ誘われる。

夏の終わりの河原、石に鳥の絵を描く男との出会い、山を包む豪雨…
若者の夢想がそのまま以降の6つの物語へとつながっていくのだが
このプロローグから本編への入り方が映像的で何とも美しい。

少年と初老の男の密猟譚、アメリカ山中でのマンハント、
漂流した漁師が遭遇する不思議な出来事など、物語は多彩であるが
どれも味わいがありそこには静かな感動がある。

6つの短編はそれぞれ全く別のストーリーで趣も異なるものの
根底には自然への畏怖や愛惜、野生の厳しさ、男たちの矜持など
稲見流ハードボイルドが脈々と流れている。
作品を読むたびに彼の死が惜しまれてならない。

本書は第4回の山本周五郎賞受賞作。
小池真理子、宮城谷昌光、中島らも、安倍龍太郎など
錚々たるノミネート作家を退けての受賞である。

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武士道セブンティーン

誉田哲也
文春文庫

★★★★★



女子高生二人が活躍する大人気青春エンタメ剣道ストーリー第2弾!

【あらすじ】
剣一筋の磯山香織と日本舞踊から転身したお気楽不動心の甲本早苗。
高校2年生になり、早苗は父親の転勤について福岡へ。
剣道の強豪、福岡南高校に転入するも強豪校ゆえの慣習にとまどう毎日。
一方の香織は早苗のいない剣道部で悶々とする日々を過ごす
やがて二人は夏のインターハイで再会を果たすが…。
青春時代の戸惑いや不安、家族との軋轢、友情と恋愛、
多彩なエピソードを盛り込みながら
武士道とは何かを二人の女子高生が探っていく人気シリーズ第2弾。


【読みどころとポイント】
はい、あいかわらずぶっちぎりの面白さです。
剣の道一筋の磯山香織と、日舞から剣道に転身した甲本(西荻)早苗が
もがき苦しみながらそれぞれの武士道を模索していくストーリーは健在。

父親の転勤について福岡へ渡った早苗は剣道の強豪である福岡南高校に転入。
そこには強豪がゆえの集団競争、弱肉強食、合理主義の世界が待っていた。

そんな中、剣道をスポーツ至上主義と割り切る黒岩怜那との出会い。
合理的に勝つことのみを信条とする怜那に早苗は違和感を覚え
やがて二人には大きな溝が生まれていく。

一方の香織は早苗のいなくなった東松学園に一抹の寂しさを感じつつ
その空しさを後輩の指導にぶつけて悶々とする日々が続く。

まず今回の物語で成功しているのは、あえて二人を遠ざけることで
お互いの存在感をそれぞれが強く意識し合う構成にしたこと。
離れてみて初めてわかりあえる部分というのがあるわけで
この展開が憎らしいほど見事に成功して熱い友情エンタメになっているわけだ。

このセブンティーンでは二人をとりまく多彩な脇役にもスポットをあて
物語の厚みもぐっと増して面白さが倍増している。

僕が上手いなと思うのは、「武士道」という見立てを
学校生活での不安や葛藤、いじめ問題、家族との軋轢等、
現代の若者たちが抱える課題をからめながら書くことで
誰もが共感できる上質な成長小説に昇華させている点だ。

今回も文句無しの★5つ!


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