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== ハードボイルド ==

狼の震える夜

ウィリアム・K・クルーガー
講談社文庫
★★★★★



ミネソタの大自然を舞台に繰り広げられる熾烈なサバイバルチェイス!

【あらすじ】
ミネソタ湖畔の町を舞台にした元保安官コークのシリーズ第2弾。
コークは、消息を絶った人気女性歌手の捜索を娘の父から依頼される。
幼少時に目の前で母を殺され、心に傷を抱える彼女は、
母の故郷であるミネソタの町に戻り消息を絶ってしまった。
果たして彼女はどこへ消えたのか?
捜索に向かったコークだったが、正体不明の敵の襲撃に見舞われた。
雄大な自然を舞台に繰り広げられるサバイバルチェイス。

【読みどころとポイント】
物語は、消えた女性を捜す謎の男たちが、老いたインディアンに
過酷な尋問を加えるショッキングな場面で幕を明ける。
元保安官のコークは、カントリーレコード界の大御所から
この失踪した人気女性歌手シャイローの捜索を依頼されるのだ。

一方、シャイローの失踪後、音楽仲間の女性が他殺体で発見され
FBIも女の捜索に乗り出しコークと行動を共にすることになった。
そして他にもシャイローの行方を追う者たちが現れ
不可解な状況のまま娘の捜索行が展開することになる。

本書の読みどころは、ミネソタの厳しい冬の大自然を舞台にした
謎のスナイパーとの熾烈なサバイバルチェイスである。
コークもけっして大自然を前にひるむような柔な男ではなく
この地を熟知するアニシアナベ族の親子が先導してくれてはいるが
敵の方が2枚も3枚も上手で、同行した捜査官が一人またひとりと
スナイパーの手で倒されハラハラドキドキの緊迫した状況が続いて行く。

そしてもうひとつの魅力は何といってもタフでありながら
心優しい主人公のコークの人間像である。
超人的スーパーマンではなく妻とのわだかまりを抱えつつも
家族を愛し強く実直に生きようとする姿勢には心打たれる。

そして、彼の妻であるジョーも家庭の良き母親でありながら
有能な弁護士として今回の件においても
事件解決の重要な役回りを演じコークの行動を影で支えていく。

ミネソタの大自然の描写もダイナミックにして繊細。
やや説明過多であるものの、随所に織り込まれる地元住民との交流や、
先導をつとめるアニシアナベ族の親子の絆、
この地に伝わる伝統や風習も物語に深みを与えている。

それにしても、昔からアメリカの小説や映画では
タフで心優しい父親が家族や愛する者たちのために
必死で苦難に立ち向かって行く物語が実に多い事。
本作を読んでみても、やっぱりアメリカならではの作品だな〜とつくづく思う。

すべての闘いを終えて傷ついたコークの帰る場所が
家族の元「home」というのも素晴らしく良いではないか。
エピローグを読んだ後もしばらく頁を閉じるのが惜しくなる
そんな一冊である。
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== ハードボイルド ==

夢果つる街

トレヴェニアン
角川文庫
★★★★★



「吹き溜まりの街」を往く警部補の哀感と孤独を叙情的に描いた一遍


【あらすじ】
カナダのモントリオール市の一地区「ザ・メイン」で奇妙な刺殺死体が発見された。
その死体は胸を一突きされて祈るような格好で路地にうずくまっていた。
30年以上街のパトロールを続けているラポワント警部補は、
丹念な聞き込みを続け徐々に真相に迫っていくが
そこには意外な犯人像と悲しい街の記憶が横たわっていた。

【読みどころとポイント】
海外ミステリ通ならばおそらく読んでいると思われる作品。
トレヴェニアンは寡作の作家ではあるものの、いずれの作品も評価が高く
「アイガー・サンクション」や「シブミ」あたりでご存知の方も多いだろう。

本作「夢果つる街」ではエンターテインメント性を抑えて
卑しい街をパトロールする老練な警部補を主役に
感傷的かつ叙情性あふれる芳醇なミステリを展開してくれた。

小説の舞台となる「ザ・メイン」は、カナダのモントリオール市の一地区。
通称「吹き溜まりの街」は猥雑で産業も荒廃し犯罪も絶えない。
ここで生活する者たちは夢を失い、街全体が疲れているのだ。

そして、この地区をパトロールするラポワント警部補もまた、
若くして妻を亡くし、心臓のそばに動脈瘤という爆弾をかかえている。
しかし、30年以上にわたってこの街を担当してきたラポワントは
この街の法律であり、「ザ・メイン」の掟であり、
街に生きる者たちを見守る、真の「警官」なのである。

一方、彼の部下として配属されたガットマンは大卒のエリート。
頑固で昔気質の地道な捜査を身上とするラポワントにとまどいつつも
彼と行動を共にするうちに次第に共感を覚えていく。

彼の元にころがりこむ若い娼婦とのやりとりも良い。
時々に挿入される二人の何気ない日常のシーンが
本作に漂う孤独と哀しみを浮き彫りにするのに一役買っている。
随所に挿入されるトランプ仲間との「罪と罰」の談義も奥深い。

肝心の物語は、この地区で発見された身元不明の死体の事件を
丹念な聞き込みによって真相に迫って行くという単純なもの。
いたってどこにでもあるようなストーリー、プロットも平板。
なのに、この深い余韻のある読後感はどうだろう。
物語全編に漂う哀感が読者の心をつかんで離さないのだ。

本作は1988年の「このミステリーがすごい!」で
スコット・トゥローの「推定無罪」を抑えて堂々の1位。
古い作品であるがまだ時折、古書店などで見かける。
未読の方は、秋深まるこれからの季節にぜひ手に取ってほしい。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== ハードボイルド ==

ピアノ・ソナタ

S.J. ローザン
創元推理文庫
★★★★★☆



タフで心優しき探偵ビルが危険な潜入捜査に挑む傑作ハードボイルド

【あらすじ】
ブロンクスの老人ホームで警備員が殴り殺された。
被害者のおじから捜査を依頼された探偵ビルは
警備員に扮して潜入捜査を開始する。
手口から地元ギャングの仕業と警察は断定したが
ビルは納得がいかず真相の追及に奔走する。
タフで心優しき探偵ビルが相棒リディアの助けを借りて
危険な捜査に挑む人気シリーズ第二弾。

【読みどころとポイント】
ペアで探偵業を営むリディア&ビルの人気シリーズ第二弾。
リディア、ビルと回ごとに語り手が変わるが
今回は白人探偵ビルの視点で語られる骨太なハードボイルドだ。

ビルが潜入捜査をする老人ホームの立地は
ブロンクスの中でも少年ギャング団が仕切る荒れた一角。
高い塀で守られた本施設も一歩外に出ればそこはジャングル。
死の危険と隣り合わせなのだ。

本作の特徴は、土地開発にからむ汚職や高齢者介護、
ストリートチルドレン、ドラッグ、違法医療など
アメリカの現代社会が抱える諸問題を織り交ぜながら
それらを重層的に組み合わせてミステリの枠組みを構成した事だ。

悪が存在しそれを正義が裁くという単純な物語ではなく
アメリカの社会システムが生んだ複雑な都市の課題と
その結果生まれた人々の哀しみや偽善、エゴなどを
丁寧な筆致で紡ぎだした濃密な人間ドラマが形成されている。

タフだけれども感受性豊かな心優しいビルが
捜査の過程で出会う人々とのやりとりが何とも素晴らしい。
特にホームの高齢者アイダとのシーンが胸を打つ。
抑制が効いている分、泣けるのである。

物語の合間に挿入されるビルのピアノ演奏もポイント。
ビル自らの心の隙間を埋めんとするシューベルトの旋律は
優しく美しく卑しい街ブロンクスに一条の光をもたらしてくれる。

地元ギャング団「コブラ」との緊迫感あふれるやりとりや
ラストの攻防もスリリング。相棒のリディアも胸のすくような活躍を見せる。

作家ローザンの登場人物一人ひとりに向ける眼差しが優しく
どこか心温まる読後感も人気の秘密だろう。
アメリカ私立探偵作家クラブのシェイマス賞最優秀長編賞受賞も納得の出来映え。
未読の方にはぜひ読んでいただきたい一作。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== ハードボイルド ==

八百万の死にざま

ローレンス・ブロック
ハヤカワ文庫(絶版)
★★★★★☆



大都会ニューヨークを生きる人々の夢と孤独を描ききった傑作

【あらすじ】
コールガールをしているキムが、足を洗いたいので
ヒモのチャンスに話をつけてくれとスカダーに頼んできた。
交渉にのぞんだスカダーだったがヒモはあっさりと
その依頼を受け入れてくれた。
ところが後日、キムが何者かに滅多刺しにされ殺された。
チャンスの仕業とにらんだスカダーだったが
彼は否認し逆に犯人探しをスカダーに依頼して来る。

【読みどころとポイント】
アル中探偵マット・スカダーの視点を通して
大都会マンハッタンで生きる人々の夢と孤独を
哀感たっぷりに描いたシリーズの代表作。

ニューヨーク市警だったころ、強盗犯に向けて発砲した流れ弾で
八歳の少女を死なせてしまった暗い過去を引きずるスカダー。

この事故が契機となって警察を辞職し
アルコール依存の道へ歩むことになってしまった彼は
探偵稼業を続けながらAA(禁酒に取り組む人々の集会)に
足繁く通うさえない毎日を送っている。

新聞では毎日のように繰り返し殺人の報道がなされ
どこの刑務所も受刑者過剰。仮釈放委員会が力を持ち
手当たり次第に釈放しニューヨークには犯罪者があふれている。
スカダーの知り合いの刑事がつぶやく。
この腐りきった街には八百万の死に様ざまがあると。

コールガールの死など新聞の片隅でしか報じられない卑しい街で
スカダーは、うらぶれた生活をおくる人々を訪ね歩き
彼らの孤独、夢、挫折をひとつひとつ拾い集めていく。

世の中の不条理と深い孤独にさいなまれ
何度となく酒への誘惑に負けそうになるスカダーが
自らの弱さと対峙しながら信条を貫こうとする姿に
心うたれないではいられない。

そしてすべての真相をつきとめた後のラストシーン。
最後に起こる「最高にくだらないこと」は
何度読んでも、やっぱり泣かされる。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== ハードボイルド ==

雨のやまない夜

サム・リーヴズ
ハヤカワ文庫(絶版)

★★★☆




哀しみと孤独に満ちた男の姿をクールに描き出すハードボイルド


【あらすじ】
シカゴでタクシー運転手を営むクーパー・マクリーシュは
このところ恋人のダイアナについて不安を抱えていた。
数日前にダイアナの昔の知り合いと名乗る男が現れてから
彼女の様子がどうもおかしいのだ。
ダイアナの過去を探りはじめたクーパーはやがて
ある恐喝事件の渦中へと巻き込まれていく。
「長く冷たい秋」に続くシリーズ第二弾。

【読みどころとポイント】
1994年に発表されたシリーズ4巻のうちの2冊目。
シカゴという荒っぽい街でタクシー運転手を営む
内向的だがタフな主人公クーパーを軸に展開するストーリー。

大都会でひっそりとタクシーを運転するこのクーパーにも
思いをよせるダイアナという恋人がいる。
本書ではその彼女がある事件に巻き込まれ
やがてクーパーも彼女を助けるべく事件の渦中にはまっていく。

荒れた街でも自身の信条を貫く孤独なタクシー運転手の姿は
感傷的な物語の演出とあいまってハードボイルドの雰囲気たっぷり。
クーパーの背中から漂う静かな哀感がたまらなくクールで
今回も読了後にやっぱりイイねと深くうなずいてしまった。

最近のネオハードボイルドでは主人公に頼りになる相棒がいたりするが
このクーパーには仲間と呼べる者は誰一人いないのである。
すべての危機を一人で乗り越えていかなければならず
それがまたハードボイルドな雰囲気に一役買っている。
また、今回は犯罪者側の用心棒をつとめるウェスなる男が
冷徹な殺し役として登場し全体の緊張感を高めている。

卑しいシ街シカゴの夜にタクシーを駆る
哀しみと孤独に満ちた男の姿をクールに描き出したハードボイルドの逸品を
機会があったら読んでみてください。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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