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== ハードボイルド ==

ナイトホークス

マイクル・コナリー
扶桑社ミステリー(文庫)
★★★★☆



ハリー・ボッシュシリーズ1作目。ベトナムの悪夢がLAの地下にこだまする!

【あらすじ】
パイプの中で死体で発見されたのは、ベトナムの戦友だった。
事故死と処理されたが、腑に落ちないボッシュは捜査を続行する。
しかし思わぬFBIの介入で捜査は難航。
ベトナム戦争の後遺症に悩む刑事ボッシュの脳裏に
トンネル地下壕の悪夢がよみがえる。
タフで孤独な刑事「ハリー・ボッシュ」を描く
マイクル・コナリーの記念すべき1作目。

【読みどころとポイント】
ベトナムの地下壕にこだまする兵士たちの吐息は
ブラック・エコーと呼ばれる。
いつどこから襲ってくるかわからない恐怖
数ヶ月に及ぶ暗闇での攻防。
発狂するものも後を絶たないという。
そんなベトナム戦争の後遺症を背景に物語は展開する。

魅力的な女性FBI捜査官エレノアとの共同捜査やFBIの不可解な介入。
犯行が予期される戦没将兵記念日に向かって突き進むタイムリミット型の展開など
ツボをおさえたストーリー運びで飽きさせない。
LAの地下を舞台にしたクライマックスの追跡劇と銃撃戦は、
ベトナム地下壕での攻防とオーバーラップし緊迫感とスリルに満ちている。

ベトナム後遺症やFBIの暗躍、女性捜査官とのロマンス、
組織のはみ出し刑事としての造形など
使い古された設定と批判される方もあるかもしれないが
私は本作を大きく評価する。

なぜなら、
最後にボッシュがとった選択は苦渋に満ちたものだけれど
それは現代社会の暗闇に一条の光を見い出さんとするものであり
自らブラック・エコーを断ち切り心の暗闇に決着をつけんとする
これからのボッシュの生き方を象徴したものだと思われたからだ。

作者は安易な連作ものの道を選ばなかった。
そう、これはハリー・ボッシュ自身の闘いと再生の物語なのだ。
シリーズ化の意味はここにある。

はじめて手に取る人はまず原点の本書から読まれよ。
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== 海外歴史小説 ==

カエサルを撃て

佐藤 賢一
中公文庫
★★★☆



ローマに反旗を翻す悪のヒーロー、ウェルキンゲトリクス!


【あらすじ】
ローマの侵略に苦しむガリア部族をまとめあげ
反旗を翻す若き闘将ウェルキンゲトリクスと、
ご存知ローマ軍総統カエサルの戦いを書いた歴史小説。
ポンペイウスの台頭に劣等感を感じるカエサルに
圧倒的な力と悪でローマに立ち向かうウェルキンゲトリクス。
激戦の果てに二人がたどりついた結末は?

【読みどころとポイント】
今回はミステリではありません。
古代ローマ、カエサルの時代を描いた歴史小説です。
最近は歴史小説もよく読みます。
歴史そのものが壮大なミステリですから。

でもって、今回は佐藤賢一です。
とにかく、ガリアの闘将ウェルキンゲトリクスの
圧倒的なキャラクターが強烈!
美しくも残虐な悪がローマを恐怖の底に陥れる物語の凄さよ!

一方のカエサルは老いと薄毛を悩み
世間体を気にしながらガリア戦記を必死に脚色中。
小心な姿をひた隠しながら
部下の前では冷静沈着を装う
不甲斐ないリーダーとして描かれている。

これまでのカエサル像を払拭したことで
若さと力を武器にローマ反撃を指揮するウェルキンゲトリクスを
一層引き立たせていることに注目!

それにしても、何と残虐なヒーロー像を描いたこと!
カエサルの妻をさらってやりたい放題。
これでもかの性描写。(映画化できません)
気に入らなければ見方でも何でも簡単に殺しちゃいます。
品格なんて言葉はウェルキンの辞書にはございません。

しかし、この圧倒的な悪の力があったからこそ
ガリアの民は結束するのです。
ガリアがローマ相手にどんな戦いを挑むのかも見所です。
はたして、カエサルは撃たれるのでしょうか?

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== 国内時代小説 ==

秘太刀「馬の骨」

藤沢 周平
文春文庫
★★★★



派閥争いの歴史の影に消えた幻の剣技の行方は?

【あらすじ】
北国の小さな藩で近習頭取をつとめる浅沼半十郎は、
筆頭家老から「馬の骨」と呼ばれる秘太刀(ひだち)の存在について聞かされ、
小出の甥の石橋銀次郎を手伝い、秘太刀の継承者を探せとの命を受ける。
かつての派閥争いの暗殺につかわれたと言われる
幻の剣「馬の骨」は本当に存在するのか?
何故今になって家老は「馬の骨」を調べようとするのか。
秘太刀探索を命じられた半十郎と銀次郎は、
藩内の剣客ひとりひとりと立合い、
己の剣技をもって秘剣の存在をつきとめようとする。
半十郎がたどりついた真相とは?

【読みどころとポイント】
藤沢周平の隠れた逸品とも言われる作品。
もともと藤沢はミステリが大好きで
彼の著書には謎解き色が濃いものも多い。
この物語では
秘太刀と呼ばれる「馬の骨」は存在するのか?
存在したとしたら「継承者」は誰か?
筆頭家老の真の目的は何か?
といった謎が冒頭から提示される。
読者は半十郎の目線で
その謎を追う楽しみが用意されているという訳。
それも剣の立ち会いを通して、ですよ。
どうです、魅力的でしょ!

それにしても、藤沢周平は
江戸時代のサラリーマンを書かせると天下一品
派閥争いの中で不安を抱えつつも
組織の中を泳ぎながら
自分の生き方を全うしようとする半十郎の姿に
現代のサラリーマン諸氏は共感すること請け合いです。
圧倒的なヒーロー像を俯瞰した視点から描く司馬遼太郎とは対照的です。
心を病む妻の杉江の存在も
こうした演出に一役かっているのです。
う~ん、うまい!
サラリーマンなら絶対に読みなさい!(笑)

ここで注意!
文春文庫の出久根達郎氏の巻末解説は
絶対に先に読んではいけません。
それから最後まで本書を読んだ方は
必ず巻末解説を読むべし。
これ以上は読んでからのお楽しみということで!

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== ノワール ==

俺たちの日

ジョージ・P・ペレケーノス
ハヤカワ文庫
★★★★★



ギリシア移民の男たちの生き様をエモーショナルに書ききった傑作

【あらすじ】
ギャングの仲間となって借金を取りたてる幼なじみのジョーとピート。
ある時ピートは情から取り立ての相手を見逃してしまう。
このことがもとで、ギャングの手下に脚をたたき折られてしまう。
それから三年後、ギャングから足を洗い
食堂の店員として働くピートのまえに、
ボスの右腕となったジョーが現われた。
またしても二人の運命が大きく動き出す。
ワシントン裏面史をつづるギリシア移民たちのサーガ第1弾。

【読みどころとポイント】
ピート・カラスを主軸にしつつも、三人称多視点で語られるストーリー。
前半では、幼少時代のピートとジョーの交情がじっくり語られ、
その後の二人の確執と葛藤に深みを与えている。
物語が進む中、様々なエピソードが織り込まれ、
そのひとつひとつが極めて質の高い人間ドラマとなっており、
物語の厚みを増している。
ピートとの友情とギャング団の掟の間で
矛盾を感じつつも運命を享受するジョーと、
あくまでも自分の生き方を貫くピート。
大きな流れが彼らをいやおうなく飲み込もうとする。
二人の思いが交錯し、
華々しい火花を散らすクライマックスは凄絶だ。
それまで運命に流されるように生きてきた男たちが、
自らの債務に決着をつける「俺たちの日」が訪れるのだ。
男たちの生き様を圧倒的な筆致で書き上げた
ギリシア移民のサーガ第1弾はたまらなくエモーショナル。
ひとたびページをめくれば、読者は彼らとともに、
その時代の空気を吸い、酒を酌み交わし、家族や恋人と語り合い、
笑い、悲しむことができる。
ぜひ、ぜひ、「俺たちの日」に立ち会って欲しい!

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== ハードボイルド ==

幻の終わり

キース・ピータースン
創元推理文庫

★★★★★



冬のマンハッタン、新聞記者ウェルズがたどりついた愛と絶望の結末

【あらすじ】
初雪が舞ったマンハッタンの夜、新聞記者ウェルズは、
ある著名な海外通信員ティモシー・コルトに出会った。
彼と意気投合したウェルズは彼の宿泊先のホテルまで同行し、
酔いつぶれるまで二人で飲んだが、
翌朝謎の侵入者の手でコルトが殺されてしまう。
いったい誰が何のために?
コルトが酩酊しながら口にしたエレノアという名前を手がかりに
彼の過去を探っていくウェルズ。
そんな彼にも殺人者の手がのびてくる。
ウェルズがたどりついた愛と絶望の結末とは?

【読みどころとポイント】
1988年の作品で既に評価が定まった作品です。
評論家諸氏の絶賛通り素晴らしい内容でした。
会話、人物造形、舞台演出、語り口、文体、
そのどれもが逸品なのです。酔えるのです。
初冬のマンハッタンを舞台に
ひとり孤独に事件の謎を追う新聞記者の哀感が
雰囲気たっぷりに描かれています。
ローレンス・ブロックの作品が好きな方なら
絶対オススメです。
というより当然読んでいらっしゃるでしょう。
いえいえ文章だけではありません。
殺人者とのチェイスも手に汗握る緊迫感があるし
ウェルズがたどりつく真相が
革命の戦火に包まれた街での
緊迫感あるドラマというのも印象的。
同僚の新聞記者や恋人とのやりとりも
すべて忘れがたい名シーン。
これはシリーズの2作目で4作目までが刊行されています。
高い評価は本書以降だそうです。
明日にも読んで下さいな。



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== ミステリ古典 ==

誰の死体?

創元推理文庫
ドロシー・L. セイヤーズ

★★★



貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿が難事件に挑む英国ミステリの逸品

【あらすじ】
ある朝、建築家のフラットの浴室で見知らぬ男の死体が発見された。
しかも男は全裸で身につけているものは金縁の鼻眼鏡だけ。
一見すると貴族のようだが
遺体には労働者階級を思わせる痕跡も。
一体これは誰の死体なのか? 
解決にあたるのは、デンヴァー先代公妃を母にもつ
貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿。
クリスティと双璧をなすと言われるミステリの女王
ドロシー・L・セイヤーズの記念碑的作品!

【読みどころとポイント】
読みどころはもちろん
皮肉とユーモアとウイットに富んだ会話を連発しながら、
事件を解決に導く貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿のキャラクター。
脇を固める従僕のバンターや警察のパーカーも助演賞もの。
個人的には母親のデンヴァー先代公妃が好きですね。
虫眼鏡で現場の痕跡を仔細に観察し
“はんはん”と言いながら独自の推論を組み立てる
古き良き時代の探偵ものの雰囲気がたっぷり味わえます。
名探偵ぶりを際立たせるために
警察の捜査も無能に描かれている点など
黄金期のミステリには多く見かけられる点もあります。
犯罪にいたる動機やトリックにも
現代ミステリに精通した読者なら
首をかしげる人も多いと思いますが
英国貴族社会の気品あふれる会話や博識を好む人には
好きになること間違いなしの作品。
論理的な推論構築よりも
心理的なかけひきに重点をおいたことも
E・クイーンやヴァン・ダインの作品とは趣を異にし
独自の世界観を際立たせています。
一時絶版でしたが、1990年代に入って新訳で再販され
現在は入手もしやすくなっているので
興味をもった方はぜひ手に取ってみてください

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== 現代ミステリ ==

黄 金

ディック・フランシス
早川書房
★★★☆



遺産相続人の一族から、富豪の父を守る息子の孤独な闘い

【あらすじ】
競馬を物語に織り込みながらミステリを書き続ける
ご存知、巨匠ディック・フランシスの作品。
巨額の富を築いた大富豪マルカム・ベンブロゥクの5番目の妻が殺され、
マルカム自身も同様に殺されかける。
マルカムは自分の一族の中に犯人がいるのではと疑いはじめるが、
警察はマルカム自身を妻殺しの有力容疑者として考え彼の話に全く取り合わない。
仕方なくマルカムは、2番目の妻の長男イアンに護衛を依頼するが
二人にもさらなる危機が訪れる。

【読みどころとポイント】
この物語では、10名以上のベンブロゥク一族が登場し、
全ての人物に遺産相続という利害関係があり、
誰もが容疑者としての資格を持っている。
しかし、この作品はミステリー色よりも、
むしろこれまでの確執から絶縁状態にあった父マルカムとイアンが、
事件を通じて徐々に打ち解け心を通わせていく人間ドラマがメイン。
ディック・フランシス作品の共通テーマである競馬も、
二人の長年の確執を氷解し互いを結びつける道具立てとして使われる。
遺産を独り占めするのではと一族から疑われ、
全員から罵声を浴びせられながらも、
ストイックにそして紳士的にふるまうイアンに、
読者は感情移入とともに強い憧れを抱くだろう。
金欲に取り付かれた一族のふるまいに辟易するかもしれないが、
後半では、一族のメンバーもそれぞれ苦しみを抱えていたことが判明し、
生きて行く事の難しさを考えさせられる展開となっている。
遺産相続をめぐる人間ドラマに重点をおいているため、
謎解きの楽しみは全体的に弱いが、
実はそれ自体をミステリの要素にしている事がミソ。
最後に意外な真相が待ち受けている。
地味ではあるがぜひ読んでいただきたい、ディック・フランシスの秀作。

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== 国内ミステリ ==

犬神家の一族

横溝 正史
角川文庫
★★★★☆



憎しみが渦巻く一族の殺人劇。日本推理小説史上、不朽の名作!

【あらすじ】
昭和20年代のはじめ、
信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛が死去した。
佐兵衛はかつて3人の妾を持ちそれぞれに娘が3人いた。
3人の娘、松子・竹子・梅子の関心は佐兵衛の莫大な遺産の相続権。
当然相続権を得るものと確信していた3人は、
弁護士が読み上げた遺言書に驚愕する。
「相続権を示す犬神家の家宝“斧(よき)・琴(こと)・菊(きく)”の三つを
一族の人間ではない野々宮珠世にすべて与える」というものだったからだ。
これを機に世にも恐ろしい連続殺人の幕が開けることになった。

【読みどころとポイント】
本書を今さら紹介するまでもないだろう。(します)
日本推理小説史上屈指の名作。作者はもちろん横溝正史。
久しぶりに本書を読み返して
この人は物語の雰囲気をつくるのが本当に上手だと思った。
日本の古い風習や因習を背景にしたドラマづくりはさすが横溝。
何度も映画化されているので作品の認知度は随一ですが
意外に細かい筋立てやトリックは
覚えていないという人も多いのではないでしょうか。
トリックそのものはそれほど難解ではないので
注意深い読者ならおよその見当はつくはず。
読みどころはむしろ、遺言をめぐる一族の葛藤と
遺産の斧・菊・琴の言葉にかけた「見立て殺人」の奇怪さ。
遺産争いが背景にあるだけに
登場人物すべてに犯人の可能性がある。
おどろおどろしい血の系譜に隠された真実は暗く陰惨。
作品の古めかしさが逆に強烈な個性を放ち
読者を世にもおぞましい殺人劇へと引きずり込む。
この圧倒的な世界観を持った作品を
一度は必ず読まれるべし。

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== 現代ミステリ ==

ストリート・キッズ

ドン・ウィンズロウ
創元推理文庫
★★★★★




元ストリート・キッドが敵地に乗り込み大活躍。痛快でほろ苦い青春探偵小説!


【あらすじ】
一九七六年五月。八月の民主党全国大会で
副大統領候補に推される予定の上院議員から、
行方不明のわが娘を捜し出してほしいとの依頼。
期限はなんと大会まで。
探偵のノウハウをたたき込まれた元ストリート・キッドが、
減らず口と繊細な心を武器に大活躍する
みずみずしくさわやかだがほろ苦い探偵小説。

【読みどころ・ポイント】
何と言っても、主人公ニールの魅力が素晴らしい。
不幸な生い立ちをものともせずに、へらず口を軽快にかまし、
敵地に乗り込み悪党たちを翻弄しながら行方不明の娘を救い出す爽快感。
探偵のノウハウをたたきこまれたいるからといっても、
そこはまだまだティーンエイジ。
ヤバい場面では心臓は爆発しそうになるし足はすくむ。
でもでも、持ち前の度胸とワイズクラックを武器に
すんでのところで切り抜ける。
見知らぬ地の暗黒街で
家出少女アリーをヤク中から抜け出させるために
孤軍奮闘するニール君を読者はきっと応援したくなる事間違いなし!
そう、これは痛快な探偵ミステリであると同時に
サイコーの冒険小説だ。
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== 国内ミステリ ==

容疑者Xの献身

東野圭吾
文春文庫
★★★★★



天才数学者VS天才物理学者。至上の愛と犯罪の狭間にゆれる探偵ガリレオ。

【あらすじ】
花岡靖子は一人娘の美里とアパート暮らしをし弁当屋で仕事に励む毎日。
そこへかつての靖子の元夫、富樫慎二が訪ねてくる。
彼はかねてから疫病神のように靖子につきまとい
平穏な暮らしをおびやかすようになっていた。
アパートにまで押しかけ、美里にまで暴力をふるうようになった富樫を、
靖子はやむなく殺してしまう。
花岡親子にひそかに想いをよせる隣人の石神は、
靖子が前夫を殺害したことを知り、二人を救うべく完全犯罪を企てる。
天才数学者と呼ばれた石神が仕掛けた謎に挑む天才物理学者の湯川。
だが皮肉にも二人はかつての親友であった。

【読みどころ・ポイント】
毎日の生活に絶望を感じていた石神を救ってくれた花岡親子への想いが、
彼を完全犯罪へと突き動かす原動力となっている。
それは安っぽい恋愛感情を超えた聖母マリアを慕う至上の愛とも言えるものだ。
それだけに読者はトリックを究明することよりも、
二人の親子と石神の運命は今後どうなるのかを知りたくて、
ページをめくる手を止められないだろう。
もちろん本書の探偵役をつとめる天才物理学者の湯川(ガリレオ)が、
天才数学者のトリックをどう崩すのかも読みどころ。
数学のテーゼを比喩に互いの腹を探り合う二人のかけひきも目がはなせない。
本書では花岡靖子が犯人とわかっているのだが、
石神がどんなトリックで親子を救ったのかは最後まで伏せられている。
このトリックはミステリを読み慣れた人でもそう簡単に解けるものではない。
しかし完璧かと思われた石神の完全犯罪も、湯川の登場でその歯車が狂いはじめる。
もちろん最終的に湯川はトリックを見破るのだが、
かつての親友の一途な想いに気づき心がゆらぐ。
安易なトリック(正解)ご披露ではなく、
湯川が解答(事件の結末)をどう導くかに焦点をすえた展開も見事。
そして最後の最後に訪れるラストシーン。
泣いて下さいね。

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== ノワール ==

フラッド

アンドリュー・ヴァクス
ハヤカワ文庫
★★★★★



ニューヨークの闇社会をゆくアウトロー探偵バーク登場!

【あらすじ】
前科27犯のアウトロー探偵バークは、フラッドと名乗る女武道家に、
千ドルでコブラという幼児虐待殺人鬼を捜してほしいと依頼を受けた。
フラッドは、親友の子どもをコブラに殺され、復習を誓ったのだ。
ニューヨークの闇社会に身を置くバークは、
仲間とともにコブラを追いつめて行く。
ポスト・ネオ・ハードボイルドの旗手と称された、
アンドリュー・ヴァクスの記念すべき、そして衝撃的なデビュー作。

【読みどころとポイント】
ぞくぞくするようなニューヨークの闇社会が、非常にリアルに活写されている。
そして何よりも、バークが従来の私立探偵と異なり、この闇社会に身をおいて
犯罪ギリギリ(犯罪と言っても良い場合もある)の稼業を営んでいる設定が斬新だ。
前科27犯の過去もだてじゃなく、裏社会の裏のウラまで知り尽くしており、
そこでいかに生きていくかを信条としているのだ。
そんなバークだから、彼のもとに持ち込まれる依頼も、
表社会の民事とは一線を画すアブナい話や、
法や警察を介入させることができない揉め事の解決が多いのもうなづける。
闇の社会に生きるからこそ、そこでの自警手段も堂に入っている。
聾唖の武術家、アンダーグラウンドのメカ専門家、男娼のスパイなど、
独自の自警団を組織し、敵を追いつめて行く。
安易な必殺仕置人に陥らないのは、彼らが正義をふりかざすヒーローではなく、
闇社会で犯罪に極めて近いところで活動しているアウトローだからだ。
バークがどのようにコブラを追いつめていくのかも、
一般社会に身を置く我々には驚きの連続。
ラストのフラッドとコブラの対決シーンでは、自分の心臓の音が聞こえるぞ!必読!

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== 現代ミステリ ==

女刑事の死

ロス・トーマス
ハヤカワ文庫
★★★★

KEIJI

劇的なシーンから幕をあけるスタイリッシュなミステリの逸品

【あらすじ】
女刑事の爆死という劇的なシーンから幕をあける本作品は、
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞したロス・トーマスの逸品。
上院の調査監視分科委員会で働く兄のベンジャミンは、
妹の死の真相を探るために帰郷する。
調べを進めるうちに、知らなかった妹の私生活が徐々に明らかになっていく。
高額な家の購入、そして多額の保険金。いったいなぜ?
巨匠のストーリイ・テリングが冴えるスタイリッシュなミステリ。

【読みどころとポイント】
知らなかった妹の姿が次々と明らかになる。
妹への思いや故郷への郷愁といったセンチメンタルな部分を極力省き、
抑制された筆致で淡々と掻き出す。
妹の死の謎を追う主人公ディルの感情の起伏も抑えに抑えた書き方で、
読者は安易な謎解きや復習劇に陥らず、彼の仕草や目線、行動のひとつひとつから、
妹の死という悲しみと向き合って行くことができる。
エンターティンメントを好む人にはまず不向きだろうが、
こうした大人の語り口に酔うのもいいものですよ。これぞ職人芸!
本書は、これまでどちらかと言えば玄人好みと言われたロス・トーマスの作品を
メジャーに押し上げた秀作と言われている。
心理描写を抑える事で行間から感動やカタルシスを生む手法は、
数あるハードボイルド系の私立探偵小説などでは常套だが、
探偵という傍観者でなく兄妹という関係式に、
あえて抑えた描写を持ち込み読書を感動の高みに押し上げる手腕は見事である。
抑えに抑え、最後の最後で周到に用意されたエンディングは琴線に触れる。
この小説も泣かせます。

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== ハードボイルド ==

長く冷たい秋

サム・リーヴズ
ハヤカワ文庫
★★★★★



シカゴのタクシー運転手が挑む孤独な闘い

【あらすじ】
シカゴでタクシー運転手を営むクーパーは、
ある日新聞で大学時代に思いを寄せた女性ヴィヴィアンが転落死をとげた事を知る。
彼女の筆跡の遺書もあり警察は自殺として処理したが、
その息子ドミニクが、殺人に違いないと主張する事から、
クーパーは真相の解明に乗り出すことに。
14才の少年ドミニクの言葉に半信半疑ながら、事件の背景を探るクーパー。
やがて、二人ををねらう殺し屋が現れ、
様相は一変し物語はさらなる謎へと突き進む。

【読みどころとポイント】
クーパーはヴィヴィアンが大学を去る直前に一夜を共にした事があり、
実はドミニクが自分の息子なのではないかと考える。
ヴィヴィアンは現在の夫と離婚したばかりで、
ドミニクは父との関係がうまくいっていない。
殺人だというドミニクの見解に半信半疑ながらも、
クーパーはこの事件に真摯に取り組まざるを得なくなるのである。
警察や探偵でもない者を真相解明の当事者にすえる場合
行動規範の根拠を明快にしておかないと
説得力やメッセージ性に乏しい作品となってしまうが
本書は親子関係の可能性という視点を取り入れ
物語をハードボイルドの高みに押し上げている。
事件の背景を探るうちにヴィヴィアンの知られざる人間関係が明らかになり、
様々な容疑者と思われる人物が現れるが、真相解明には至らない。
その間も、暗殺者の容赦ない襲撃がクーパーを襲いページを繰る手がとまらない。
その日暮らしのようなタクシー運転手の孤独な闘いを切々と描き出す物語は、
ハードボイルドの形態をとりつつも、素人探偵が様々な仮説検証を繰り返しながら、
真相に迫って行く本格ミステリ(フーダニット)の醍醐味も十分備えている。
すべての真相が究明された後、
クーパーとドミニクが対峙するラストシーンは……。
そう、いつまでも読者の心に残ります。

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== 現代ミステリ ==

横 断

ディック・フランシス
ハヤカワ文庫
★★★★



大陸横断ミステリ競馬列車に乗り込み、陰謀を阻止せよ!

【あらすじ】
カナダ全体の競馬人気アップのために、
名馬、馬主、競馬ファンを乗せて大陸横断列車の旅が企画された。
カナダ各地の競馬場を巡りレースを行い、
車内ではミステリ劇が演じられるという壮大なキャンペーンツアー。
しかし、この特別列車に、恐喝容疑に問われ共謀罪裁判にかけられながら
巧みに追求を逃がれてきた競馬界の悪者が乗るという情報が。
英国ジョッキイ・クラブの保安部員トー・ケルジイは、
クラブからこの列車に内偵調査員として同乗を命じられる。
ケルジイの孤独な戦いが始まる。

【読みどころ・ポイント】
本書は、悪人が最初からわかっているので、
列車内でどのような陰謀がいつ行われるのか、
外界から隔絶した列車の中で主人公ケルジイが、いかに素性を隠しながら、
陰謀をどう阻止し悪人の尻尾をつかまえるかという点が読みどころ。
この物語では、車内で行われるミステリ劇が、
犯罪を暴くための重要な演出装置として機能し、
配役をつとめる面々との交流も十日間の旅を多いに楽しませてくれる。
列車システムを利用した陰謀は、一瞬で大事故につながるため、
緊迫感が高く近年の作品に比べてアクションシーンもあり、
フランシス初期の冒険活劇の色彩が強い一編だ。
車中の多彩な人物像の巧みな書き分けは、さすがフランシス。
なかでも孤独な闘いを強いられるケルジイの車外連絡役を務める、
カナダ・ジョッキークラブ保安部長の母親ミセズ・ボードレアが秀逸。
二人のやりとりはずべて名シーン。
カナダの大自然の描写も臨場感に溢れ、
まるで彼らと一緒に旅をしているかのような最高の雰囲気が味わえる作品。
みなさんもぜひ、この大陸横断ミステリ競馬列車の旅をお楽しみください。

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== 現代ミステリ ==

荊の城

サラ・ウォーターズ
創元推理文庫
★★★★★



19世紀のロンドンに繰り広げられる運命のドラマ。その結末は…?

【あらすじ】
19世紀ビクトリア朝のロンドン。下町で掏摸を行う17才の少女スウに、
知り合いの詐欺師からウマい話が持ち込まれる。
郊外の古城に住む令嬢を騙して財産をそっくり頂こうというのだ。
その令嬢は、蔵書狂の伯父のもとで、世間と隔絶した暮らしをおくっている。
詐欺師は、装丁家として城に入り込み、令嬢を妻にするという。
スウには、令嬢の待女として城に仕えてほしいと。
不安をいだきつつも企てにのるスウ。
しかしそこには思いもよらぬ運命が待ち受けていた。

【読みどころとポイント】
19世紀のロンドンの描写がまず素晴らしい。
貴族の生活と貧民街のすさんだ暮らしの対比もリアルだ。
ロンドンの下町で裏家業を営む家で育ったスウが、
貴族の生活に入り込むスリリングさ。
そしてその舞台となる場所は、俗世間から隔絶された城だ。
ここには、この物語の、もう一人の主人公となる令嬢モードが住んでいる。
彼女に罠をかけようと乗り込んだスウだったが、
いつしかモードとの交情が芽生え、
そしてそれが予想もしない悲劇へとつながる事になる。
この物語は、第1章の終わりに、まず読者が驚愕する仕掛けが用意されている。
著者のサラ・ウォーターズは、
登場人物の心情と悲劇に至るまでのドラマをじっくりと描き出すので、
ことさら物語が反転した時のショックは凄まじいのである。
物語の背景にある大きく悲しい謎。
これが二人の少女をさらに大きな悲劇へと導く。
謎解きの面白さよりも、とにかく二人の運命は一体この先どうなるのか?
それを知りたくて、誰もがページを繰る手を止められなくなる。
『2004年度このミステリーがすごい!』の堂々第1位を獲得した
文句無しの傑作だ。

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ミステリレビューのブログはじめました

子供の頃からミステリをよく読んでました。

ミステリをあまり読んだことのない方や
これからミステリを読もうと思っている方にも役立つレビューを
書いていきたいと思います。

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