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== 児童書 ==

ドリトル先生航海記

ヒュー・ロフティング
岩波書店
★★★★☆



動物語を話すドリトル先生が幻の島を目指す大冒険の航海記!

【あらすじ】
ドリトル先生は知る人ぞ知る博物学者。何と動物の言葉を話せる特技をお持ちだ。
しょっちゅう世界の秘境を渡り歩く日々。
今回も助手を申し出た靴屋のむすこのトミー少年を加え、
ドリトル先生自身が大博物学者と崇拝する
ロング・アローなる人物をさがしに大冒険の旅へ出発!
目指すは大海原を浮遊する幻の島「クモサル島」だ。
密航者に積み荷や金を盗まれたり大荒れの海で船は大破。一難去ってまた一難。
果たしてドリトル先生一行はロング・アローを探し出し
無事故郷に戻ることが出来るのか??


【読みどころとポイント】
実に30年以上前に読んだ本の再読。
このシリーズだけはどうしても捨てられずに
書棚にひっそりとしまい込んでおいたのだ。

奥付の増刷録を見ると、どうやら私は小学校5年生の時に読んだものらしい。
当時学校でドリトル先生を読むのが流行っていて
夢中でシリーズを読みあさった記憶がある。

読まれていない人のために(いるのかな?)
ちょっとだけドリトル先生についてご紹介。

ドリトル先生は世界を旅する博物学者で、
先生が住んでいるのは、イングランドの湖沼地方をモデルにした、
「沼のほとりのパドルビー」という架空の町である。
シルクハットに燕尾服、パイプ煙草を愛飲する小太りの英国紳士で
特技は何と動物の言葉を話せること。
パドルビーのドリトル先生の屋敷はさながら動物園で
たくさんの動物と一緒に住んでおり家政婦は何とアヒルがつとめている。

本作は、ドリトル先生も世界一の博物学者と信ずる
ロング・アローなる人物を探しにいく物語。
行き先は、海上を浮遊する所在地不明のクモサル島。
物語も起伏に富んだドリトルシリーズの代表作だ。

それにしても記憶が薄れていたとはいえ
ドリトル先生はかくもアグレッシブな先生だっただろうか。
航海記を読み直して改めてビックリしてしまった。

ふだんの性格はいたっておだやかだが、
状況により勇猛果敢でワイルドな冒険家に変身してしまうのだ。

あの体型で闘牛と曲芸するパフォーマンスを披露したかと思えば、
船がバラバラになってしまう暴風雨の海でも豪腕の船長ぶりを発揮。
とある島の原住民たちの戦に自らこん棒を手に飛び込んでいく場面にいたっては
いや~あっぱれ。恐れ入りましたって感じ。
ほとんどこれは航海記といよりはドリトル先生冒険記だ(笑)

周りも固めるキャラクターたちも個性的だが
本作ではオウムのポリネシアが助演賞。
年齢百歳を超える大長寿のこのオウム。ちょっと口がすぎるけれど
この冒険行では、幾多の困難を明晰な頭脳で解決に導く名参謀を演じる。

この航海から先生の助手をつとめることになったのが
靴屋の息子のトミー・スタビンズ。
好奇心旺盛なトミー少年の登場により、
読者はドリトル先生の活躍ぶりを
助手というごく身近な目線でとらえることができるようになったわけだ。

ヒュー・ロフティングのほのぼのとした挿絵も素晴らしく
井伏鱒二先生の訳もユーモラスで心が和む。
かつて僕もドリトル先生を読みながら
トミー少年のように見果てぬ世界に夢を見、先生の冒険に心躍らせた。
本書を読み返して改めて、
ドリトル先生は私の読書の原点だと思った。
永遠に読み継がれて欲しい名作。
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┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 未分類 ==

ディック・フランシス読本

早川書房編集部 編
★★★★★☆



さようなら、そしてありがとう、ディック・フランシス!

ディック・フランシスが亡くなった。
2月14日に家族が明らかにしたという。
私にとっては大変なショックである。

フランシスは、1962年に処女作「本命」を発表して以来
ほぼ年1作のペースで高水準のミステリを書き続けて来た。
障害物競馬の騎手としての経験や知識をいかんなく発揮し
競馬界の内幕や人間ドラマを抑制のきいた文体で
きびきびと描いていく彼の作風に私はすぐ魅了された。

執筆を支えた妻のメアリーが2000年に亡くなってからは
しばらく作品がとだえていたが、次男のフェリックスとの共同で
「再起」で見事カムバックを果たした事は記憶に新しい。

彼の作品に登場する主人公は誰もがストイックな生き方を貫くナイスガイ。
女性にも優しく、行動や会話に英国の気品ある香りが漂う紳士である。
ちまたの冒険小説に登場するタフガイではないけれど
しっかりとした規範と行動様式、強い意志を持ち
自己蔑視を何よりも耐えられない事とするシビレル男たちなのである。

私もそんな主人公たちの生き方に憧れたし
その行動をひとつの指針にもしてきた。(実際は模倣すらかなわないが…)
それだけに「再起」での復活には手をたたいて喜んだし
85歳という高齢ながら
息子との共作という新たなチャレンジに踏み出したフランシスに
改めて敬服した次第であった。

ここに1冊の本がある。
早川書房が1992年に刊行した「ディック・フランシス読本」である。
フランシスの騎手時代のスナップや年表、
作品の舞台となった英国の写真、作品のエピソード、
著名人によるフランンシスを語る会など、
フランシスワールドを100倍楽しめるファン必携の一冊だ。
今回本書を読み返して
収録されたフランシスのインタビューから
彼の人柄や作品づくりへの真摯な姿勢に改めて感銘を受けた。

これからもディック・フランシスにはずっと書き続けて欲しかったが
それはかなわぬ夢となってしまった。
しかし彼は我々にとびきりの作品群を残してくれた。
これは時代が変わっても永遠に読み継がれる作品だと思う。

彼は今頃天国で、メアリ婦人を傍らに
嬉々として障害馬を操っているのではないか。

さようなら、そしてありがとう、ディック・フランシス!

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 海外文学 ==

停電の夜に

新潮クレスト・ブックス
ジュンパ・ラヒリ

★★★★★




インド系アメリカ移民たちの孤独と不安、夫婦の乖離を描いた珠玉の短編集


【あらすじ】
子供を死産した夫婦が停電の夜ごとに語り合う表題作をはじめ
戦地に家族を残して来た来客を見つめる少女の心のゆらぎや、
乗車した夫婦の乖離を感じひそかな夢を見るタクシー運転手の姿など、
身近な人々の微妙な距離感と孤独を
客観的かつ抑制された文章で淡々と描く。
O・ヘンリー賞やPEN/ヘミングウェイ賞など
文学賞を独占したベンガル人作家ジュンパ・ラヒリのデビュー短編集。

【読みどころとポイント】
この感覚は何だろう?これまで味わった事のない…
我々日本人の感性では予測しがたい微妙な感覚。

ジュンパ・ラヒリという作家は
カルカッタ出身の両親を持つベンガル人だ。
収録作品のほとんどにインド系移民が登場する。

異国での不安感や孤独感、夫婦間のわずかな心の隙間、
男女の目に見えぬ距離感など
人々の繊細な心のゆらぎを見事に描いている。

本作に収められたいづれの作品も
さしたるドラマチックなしかけや構成が無いにもかかわらず
ハッとする驚きや新鮮な感動を与えてくれる。

室内に置かれた小物や家具、衣装、食材などを
丁寧にカットバックで織り込みながら
日常のなにげない生活の情景に
移民の孤独、夫婦の乖離、男女の痛みをさりげなく描写する手腕は見事。

読者の予想を紙一重で少しずつかわしながら
意外な結末へと導いていく。

その才筆は美しく気品があり
それでいて情に流されない抑制された趣がある。

個人的には、インドからアメリカに移民してきた新婚夫婦を描いた
最終話の「三度目で最後の大陸」がベスト。
手の届きそうなヒューマンスケールの日常描写と
インド・アメリカ大陸間のダイナミックな構図との対比が鮮やかだ。

読後、一番大切な人にすすめたくなる一冊。





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== ハードボイルド ==

スコッチに涙を託して

デニス・ルヘイン
角川文庫
★★★☆



ギャング団の抗争が勃発するボストンの闇を探偵パトリック&アンジーが切り裂く!

【あらすじ】
ボストンで探偵事務所を営むパトリックとアンジーのもとに
上院議員から盗難書類の捜索依頼が舞い込んだ。
書類は掃除婦をつとめていたジェンナとともに消えていたのだ。
何とか彼女を見つけたパトリックだったが
ジェンナは彼の目の前で消されてしまう。
社会の歪み、腐敗する政治家たちとギャング団の抗争。
ボストンの街は戦場と化した。
探偵パトリック&アンジーシリーズの第一弾。

【読みどころとポイント】
幼児期のトラウマに悩まされるパトリックと
夫の家庭内暴力に耐えるアンジー。
心の傷を抱えた二人が
時には反目し合い時には助け合いながら
事件に真相に迫って行く私立探偵もの。

大物上院議員が必死になって探そうとする紛失書類。
書類をめぐり殺人が発生し
背後に浮かび上がる裏社会の黒い影。

いかにも定型的、類型的な設定だが
現代のアメリカ社会が抱える闇に切り込んでいく
二人の活躍は意外にスリリング。

探偵と言うと大抵はインタビュワーとして
真相をつかむまでがお仕事だが
必殺仕置き人として
銃をぶっ放し、悪を葬ることも辞さない探偵は
そう多くはない。
どうしようもない悪に鉄槌をくだす二人は
ダーティハリーのごとき
アメリカ版のヒーロー像なのかもしれない。

警察という大組織の後ろ盾もない二人が
探偵という領域をこえて活躍する骨太の物語は
従来の感傷的な探偵像を払拭した。

やや近いところでは
アンドリュー・ヴァクスの探偵バークだろうか。

書類の真相とギャング団とのつながりは後半まで伏せられ
謎解きの面白さもあるし
29才の時に書いた処女作であるが
セリフ回し、キャラクター造形、プロット、いずれも堂々としたもの。

アクションバリバリのパトリックとアンジーだから
このテンションのまま、いったいどこまで続くのか心配になる。
(1作目から心・身体ともにボロボロ)

お互いにひかれつつも
仕事上のパートナーとしてふるまう二人の
今後の恋の行方も読みどころ。

作者のルヘインは、その後
ミスティック・リバーという傑作を書いて
映画化もされたので読んでいる人もたくさんいるでしょう。

パトリック&アンジーシリーズもぜひどうぞ!

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== マンガ ==

アタゴオル外伝 ギルドマ

MF文庫
ますむらひろし

★★★☆



植物に支配された世界に繰り広げられる不思議な闘いの物語

【あらすじ】
かつて大陸を支配したという知的な植物の女王が復活をとげた。
封印の扉が開かれたのだ。
女王ピレアは圧倒的な力で再び大地を植物で覆い尽くそうとする。
つぎつぎと植物にされる住人たち。
森を守ろうとする魔術猫ギルバルスを中心に
人間のタクマ、ぐーたら猫のヒデヨシといったおなじみの面々が
ピレアの制圧を阻止せんと果敢に立ち向かう。

【読みどころとポイント】
実は、ますむら作品を読むのが初めて。
昔「銀河鉄道の夜」のアニメ版で
彼がキャラクターデザインを手がけていて
一度読みたいと思っていたのだ。

植物に支配された世界というと
ブライアン・W・オールディスの「地球の長い午後」が有名だが、
こちらのアタゴオル外伝は、植物に女王という個性を持たせ
自由の奪還という闘いをストーリーに組み込み
現代的なテーマメッセージを持たせたところがミソ。

支配するものとされるもの。
時間に追われるように生きる人々。
管理された社会に安住し個を忘れた組織人たち。
各章の最後の一コマで描かれるメッセージには
現代社会への強烈な風刺がこめられている。

我々現代を生きる者は
天真爛漫に生きるヒデヨシを羨望し
純粋な心を持つタクマに共感を覚え
強烈なヒーロー像ギルバルスの登場を待ち望む。

女王ピアレの圧倒的な力の前に
次々と同化していく住人たち。

もちろん最後に悪は終焉を迎えるのだけれど
最終的に悪を葬ったのは「力」ではない。
小さくも力強く輝く「?」が
混沌とした世界を再び明々と照らしてくれるのだ。

果たしてどんな結末を迎えるのか。
深遠なメッセージがこめられたエンディングを
みなさんの目で確かめて欲しい。



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== ハードボイルド ==

チャイナタウン

S・J・ローザン
創元推理文庫
★★★★☆



中国人女性と白人男性の絶妙な探偵コンビが躍動するフレッシュなハードボイルド

【あらすじ】
チャイナタウンの美術館から寄贈されたばかりの磁器が消えた。
盗難によって美術館の信用を失うことを恐れた役員は、知り合いの探偵に調査を依頼する。
調査役に抜擢されたのはアメリカ生まれの中国人女性リディア。
パートナーの白人ビルと共にチャイナタウンを奔走するが
二重三重の謎が二人を待ち受けていた。
溌剌とした感性とアクティブな行動力を持つリディアと
心優しき白人男性のビルが、美術品盗難の謎に迫る
爽快でフレッシュなハードボイルド・シリーズの開幕。

【読みどころとポイント】
このシリーズははじめて読みました。
新鮮かつ爽やかな感動。一言でいえばそんな作品だ。

まず、アメリカ生まれの中国人女性、主人公のリディアが何と言ってもいい。
私立探偵を主人公としたハードボイルド小説と言うと
男性の探偵は感傷的でタバコと酒好きのバツイチ一匹狼。
女性の探偵は生活感の無い仕事完璧スタイリッシュウーマン。
なんていう設定が定番のようにもなっているが、このリディアは違うぞ。

同居するお母さんに、「アンタ、いつになったら結婚すんのよ?」と
毎日怒られまくってる28才だ。(もう少し若く感じます)

しかし、探偵としての自負と誇りは人一倍強く
いざ調査となればフットワークは軽快。
アブナイ場所にもガンガン行っちゃう。
射撃とテコンドーが得意なアクティブな女性探偵だ。

一方、リディアのパートナーをつとめる探偵のビルは
彼女が安心できる唯一の白人男性。
いつも温かい眼差しでジョークをとばしながら
時々暴走しそうになるリディアをぐっと受け止めてくれる“大人”だ。

この絶妙なコンビが物語に躍動感とリズムを与え
読者は彼らと一緒に最後まで飽きること無く
チャイナタウンの中を駆け巡ることができる。

舞台となるチャイナタウンの描き方もうまい。
風景が目に浮かぶような映像的な描写も魅力のひとつだ。
状況描写は上手でも風景描写が苦手な作家は多いのだ。

リディアが行き過ぎた自分自身の行動を戒めるモノローグや
傷ついた女性の繊細な心の動きの描写なども見事。
登場人物ひとりひとりへの目配りも行き届いており
読んでいて心が和む場面も多い。

かかわっている人物たちそれぞれ利害をかかえ
各々がある局面で利己的な行動を起こすため
それがミスディレクションとなって読者を幻惑する。
謎解きも十分楽しめる作品となっている。
読後感もさわやかなので、
暗く重い犯罪小説に疲れた人にはイチオシ!

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== 冒険小説 ==

無頼列車、南へ

ブラウン・メッグズ
文春文庫(絶版)
★★★★☆

荒くれ者たちを乗せた大陸横断列車を操る見習い青年車掌の冒険活劇!




【あらすじ】
パンチョ・ビリャ討伐隊をメキシコまで運べ!
見習い青年車掌マッギルに大任の命が下った。
酒と賭け事にあけくれる騎兵隊員、アル中の獣医、
娼婦たちまで乗り込んで、大陸横断列車は大混乱。
さらにはVIPの大富豪一家を一緒に送るハメに。
おまけに助手を頼んだ相棒は
飲んだくれで喧嘩っ早い暴走野郎と来ているから始末に悪い。
いまにも爆発しそうな危険を乗せて、列車は一路メキシコへひた走る。
史実に基づくワイルドな軍用列車大冒険の旅のはじまり。

【読みどころとポイント】
どこにでもいる誠実で職務に忠実な青年が
急遽軍用列車の車掌に抜擢され
荒くれ者たちを手名づけ、一路メキシコを目指す大列車冒険活劇!

乗員は乱暴者の騎兵隊、娼婦、アル中獣医、エセ神父、軍馬。
この列車にはミスマッチな大富豪一家も同乗。
とにかく一難さってまた一難。アクシデントの連続だ。

冒険小説というと大抵は戦争や大自然の猛威などを背景に
タフな主人公が持ち前の能力でアクシデントを切り抜けるものが多い。
それはそれでスリリングなのだけれど、
どこか映画じみていて絵空事っぽいなって感じてしまう場合もあるんだな。

本書のように、フツーの真面目な青年が性格のよさを武器に(後半暴走あり)
かろうじて危機を回避していく物語って意外に少ない。
それだけに読者は親近感を感じて彼を応援してしまうのだ。

途中あまりにも車中のディテイル描写が多いので
展開が遅く感じることもあるかもしれないが
作者が祖父から聞いた史実をもとにしているからであり
リアリティを追求した結果でもある。

災難つづきのマッギル君だが、その成長ぶりも見事。
途中から犯罪者の逃亡に手を貸すわ、借りた金でポーカー賭博をふっかけるわ。
兵卒に対していっぱしの口をたたくわ、
大富豪の娘にまで…? なかなかのもんです。

それでもそこは冒険小説。大ピンチも来るんです。
マッギルがあまりの困難にくじけそうになっているとき
アル中の獣医官がかけるセリフが気に入ったので紹介しておこう。

「人間にとって、この世でいちばんだいじなものは自尊心だ。
こればかりは雑貨屋で買うことも、学校でおそわることもできん。
自分で身につけるしかない。いちばんむずかしいことだろうがね。」

キャシアス・マッギル君がこの大列車行で学んだものは
人間の欲望、弱さ、憎しみ、裏切り、恋愛、悲しみ‥そして友情と勇気。
そう、これは古きよき時代のアメリカの伝統を受け継ぐ
若者の大いなる冒険活劇であり成長小説でもある。
本書は絶版。明日にでも古本屋を探すべし!

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== 海外歴史小説 ==

ウィーンの密使

藤本ひとみ
講談社文庫
★★★



革命に揺れる混乱のパリ、青年士官とアントワネットの運命は?


【あらすじ】
オーストリアの青年士官ルーカスは
マリー・アントワネットの兄ヨーゼフ2世の密命を受け、
フランス革命の激震に揺れるパリに向かう。
王家の存続と体制を堅持しようとするルイ16世とアントワネットを説得し
立憲君主制への移行を画策するルーカス。
ミラボー、ダントン、ロベスピエールらを利用し
革命の流れに歯止めをかけようと奔走するが
ますます混迷を極めるパリの現状に恐れをなした国王は
アントワネットとともにひそかに脱出を企図する。

【読みどころとポイント】
本書に対する多くの読者の評価は高いようですが
私としては、う~ん。惜しい!といったところ。

時代の雰囲気もよく出ているしキャラクターも立っている。
ミラボー、ダントン、ロベスピエールといった
フランス革命の立役者が総登場するのも興味深い。

しかし少し残念な点を言わせてもらうなら
ルーカスがとる行動が消極的な懐柔策の域を出ていないこと。
(もちろん小説のレベルとしてですよ。)
歴史秘話とするのであれば、もっと大胆な着想で
ドラマチックな企てを用意しても良かったのではないか。

歴史が変えられないのは歴史小説の宿命ならば、
あわやの一発逆転劇をねらう秘策をうってほしかった。

アントワネットとルーカスはかつて幼なじみで
ルーカスは今もアントワネットに思慕をよせている。
アントワネットは定説どおり自由奔放で贅沢三昧の気ままな王女として描かれ
ルーカスの懐柔策にも耳をまったくかさない

アントワネットの気ままなふるまいにあきれつつも
肝心なところで手を差し伸べてしまうルーカスの優柔不断さは
自分の職務をまっとうするという義務感よりも
アントワネットへの思慕に端を発している。

ならば、ルーカスとアントワネットの幼少時代の交流や
若き日の交情などをもっと書き込んでおいた方が
より説得力が増したのではないかと思う。

とは言え、革命に混乱するパリの描写は見事だし
それがかえってルーカスとアントワネットの運命を際立たせている。

革命阻止を図る奇想天外の謀略ではなく
革命下の士官と王女の悲哀ドラマに重きを置いたのは
作者の企図するところであり、万人に受ける要因にもなっていると思う。
物語のテンポも早く会話も多いので
ドラマチックな舞台設定での歴史ロマンスを好む人にはオススメ。

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