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== 海外文学 ==

旅の終わりの音楽

エリック・フォスネス・ハンセン
新潮クレスト・ブックス
★★★★☆



豪華客船タイタニック号に乗り合わせた楽団員たちの最終楽章

【あらすじ】
沈みゆくタイタニック号の船上で、乗客のために最後まで演奏を続けた楽団員たち。
彼らはいったいどんな人生を歩みどのように運命の船に乗り合わせたのか?
タイタニック号沈没の史実に、架空の楽団員たちの運命をかけあわせ
夢破れた者たちの人生の喪失とヨーロッパ文化の没落を描いたベストセラー。

【読みどころとポイント】
さて、この感動をどのように表現したら良いのだろう。
この美しくも痛ましい喪失の物語の前には
どんな言葉も陳腐になってしまうかもしれない。

映画タイタニックが大ヒットしたのは1997年。
沈没寸前まで乗客を勇気づけるために演奏を続けていた
楽団員たちの姿を目に焼き付けている人も多いだろう。

この物語はタイタニックと共に海の底へと消えた楽団員たちをモデルに
作者のハンセンが架空の楽団員たちを想像し
かれらの人生を克明にたどったフィクションである。

豪華客船タイタニック号はヨーロッパが築き上げた
技術や文化の象徴であり人々の大いなる夢でもあった。
そういう意味でタイタニックの沈没は
急速に発展した科学技術と華やかな文化に浮かれたヨーロッパ社会に
大きな警鐘を鳴らす象徴的な出来事と言える。

そんな運命の船に乗り合わせた楽団員たちもまた、
将来を嘱望され才能がありながらも
夢破れ没落の人生を歩んだ落伍者ばかりだ。

父母の死をきっかけに人生の流転を迎える者、
才能を生かしきれず転落した音楽人生を歩む者、
ふとしたことから犯罪に手を染める者
純粋すぎる愛情ゆえに恋敵に銃を向けた者…。

皮肉にも彼らは、運命の糸をたぐり寄せられるかのように
あのタイタニック号に乗り合わせることになったのだ。
私は本書を読んで、生きていくことの難しさと素晴らしさを
あらためて考え直した。

本書を読み始めるすべての読者は
彼らがどんな結末を迎えるのかを知っている。
そして知りつつ読まなければならない。

夢破れた落伍者たちがタイタニック号で奏でる
人生最高の最終楽章をすべての人に聞いて欲しい。
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┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 映画 ==

シャーロックホームズ



★★★★
[監 督]ガイ・リッチー
[出 演]ロバート・ダウニーJr.、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムスほか
[データ]2009年/イギリス/ワーナー・ブラザース映画


ホームズ&ワトソンが黒魔術を操る悪と対決するアクション・エンターテインメント

【あらすじ】
19世紀末ビクトリア朝のロンドン。ホームズとワトソンは、黒魔術の儀式で若い女性を次々に生け贄にするブラックウッド卿を逮捕する。彼は絞首刑となるが、後日墓は破壊され処刑されたはずのブラックウッドが蘇り、ふたたびロンドンは恐怖に包まれる。黒魔術で市民を洗脳し世界の支配をたくらむブラックウッド卿。ここに壮絶な闘いの幕が上がる。

【観どころとポイント】
や~、とにかく一般的に知られる
パイプをくゆらせ思考をめぐらすホームズの紳士像を
見事なまでに徹底的に払拭した。

ロバート・ダウニー・Jrが演じるホームズは
アクションバリバリの格闘家。
敵の大男との素手の格闘、爆発する現場からの決死の脱出、
ロンドンの高層窓からテムズ川へのダイビングと、
とにかく次から次へとアクションが連続する。

冒頭の殺人現場の急襲場面からラストの格闘シーンまで
ガイ・リッチー監督は息もつかせぬノンストップの
ハイテンション・エンターテインメントムービーを創り上げた。
映像のテンポも速く画面の切り替えも頻繁だが
お得意の時間巻き戻しリプレイを随所に織り込み
緩急の差をつけ見落とした伏線や手がかりもきっちりフォロー。

産業革命で発展をとげたイギリスのよどんだ空気感や重く沈鬱な曇り空、
建設中のタワーブリッジが架かる薄汚れたテムズ川など、
当時のイギリスの情景が、彩度を抑えた映像表現とあいまって、
実に雰囲気たっぷりと描かれている。

かつてホームズをあざむいた美形の女盗賊アイリーンも
敵方ブラックウッド卿の陰謀に一役買っておりホームズを翻弄。
危険なロマンスの香りも十分だ。

ホームズはもちろん頭脳明晰だが
暴走が過ぎて窮地に陥る状況も連続する。
逆にワトソンが暴走するホームズに手を焼きつつも
土壇場で助けにまわるという場面も多い。

ホームスはとにかく捜査でハイテンションだから
オンとオフの落差が激しく、これといった事件が無い時は
引きこもりの鬱状態になってしまうという設定も笑える。

ジュード・ロウのワトソン役はカッコよすぎて
主役のロバート・ダウニー・Jrを喰うこともしばしば。
二人の競演も観どころのひとつだ。

敵方の黒魔術を操るブラックウッド卿役のマーク・ストロングも
なかなかの怪演を見せるも、ラストの攻防が若干あっけなかった。
まあ、最大の黒幕モリアーティ教授との対決はお預けとなり
次回作も多いに期待が持てそうだ。

┃ テーマ:映画レビュー ━ ジャンル:映画

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== 未分類 ==

「アガサ・クリスティー展」~ミステリーの女王 その軌跡~



開催場所:相田みつを美術館第2ホール
主催:テレビ朝日 相田みつを美術館
後援:駐日英国大使館
協力:早川書房

生誕120周年記念企画、アジア初のアガサ・クリスティ展覧会

3月17日からはじまったアガサ・クリスティ展に行って来た。
平日の日中だったため、ゆったりと鑑賞することができた。
アジア初ということで期待して足を運んだが
写真パネルの展示が大半を占めており、実物資料はあまり多くはなかった。

作品よりもどちらかというとアガサ本人にスポットをあてている展覧会で
彼女の生い立ちや幼少時代の写真、
学生時代のポートレートなどが多数展示されていている。

それでも、タイプライターで書いた実際の原稿や
手書きのアイデアメモなど、貴重な資料も展示されており
それらを間近でじっくり見る事ができる。

個人的に展示されている資料のベストスリーをあげれば

第一位:レミントン社製のアガサ愛用のタイプライター
第二位:ホームビデオで撮影したふだんのクリスティ
第三位:クリスティの肉声

特にテーブルの上にぽつんと置かれたタイプライターは
随分と使い込んだ感じがあり
ここからあれだけの作品を世界に送り出したかと思うと本当に感慨深い。
じっと見ていると何だかそこに
タイプをうつクリスティが座っているような感覚におちいってしまった。

同じコーナーには彼女が愛用した旅行鞄も展示され
中近東を旅しながら執筆をつづけた
活動的なクリスティに想いをはせることができる。

ホームビデオでは、おばあちゃんになった彼女が
家族や孫に囲まれてはしゃいでいる様子や
水着で海に飛び込むやんちゃな姿なども見られる。

展示予算がもっとあってミステリとしての研究成果が打ち出せれば
「小説の殺人現場を再現」とか
「アガサ永遠の名トリック」なんてコーナーが出来たかも。
まあこの辺は無いものねだりかもしれないし
小説の中身を具体的に展示で再現すること自体
文学の展示では御法度でナンセンスといえるかも。

それとミュージアムショップがあまりにも小規模なのは残念。
入場料が1,300円ということを考えると
もう少し展示も充実してほしいなと思ってしまう。
一般的には大型企画展クラスの価格設定なので
どうしても割高に感じてしまうのだ。

ただ、海外のミステリ作家の展覧会そのものが貴重だし
ましてやミステリの女王アガサ・クリスティの資料となれば
ファンは必ず見ておいて損は無いと思う。

何より、嬉々として家族とともに生活を送る
可愛いおばあちゃんクリスティを見られるだけでも良いではないか。
とにかくこんな企画をしてくれた主催者に
まずは拍手を送りたいと思う。




┃ テーマ:ミステリ ━ ジャンル:小説・文学

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== ミステリ古典 ==

予告殺人

アガサ・クリスティ
ハヤカワ文庫
★★★☆



地元新聞に載った殺人予告。ミス・マープルの推理が冴えるクリスティの秀作。


【あらすじ】
ミドルシャー州の小さな村チンッピング・クレグホーンに
毎週配達される地元新聞「ギャゼット」。
その広告欄に奇妙な文章が掲載された。
「殺人お知らせ申し上げます。10月29日金曜日、午後6時30分より、
 リトル・パドックスにて、お知り合いの方のお越しをお待ちします…」
リトル・パドックスは村の下宿屋だ。
記事に興味を示した村の人々がぞくぞくとリトル・パッドクスに集まる。
かくして、時計が六時三十分を指したとき突然明かりが消え銃声が…。

【読みどころとポイント】
久しぶりにクリスティを読んだ。中学の時以来だろうか。
と言っても、本作は初読了。
限定された家の中での殺人、容疑者はおのずと絞られる典型的な設定。
それでも、殺人予告のお知らせという導入部は
当時かなりセンセーショナルだったのではないだろうか。

まあとにかく、限定された場所での殺人であるし
クリスティはミスディレクション(誤った方向へ読者を導く)がうまいので
どの容疑者も怪しく見えるのです。

謎解きの伏線や手がかりも丁寧に披露されていくけれど
まじめな読者ほど犯人は絞れないだろう。

クリスティの作品のほとんどに言えることだが
説明的な描写があまり無く、
複数の登場人物たちの会話を中心に構成されているので
まるで舞台劇を見てるような感覚なのである。
会話もどこか芝居がかったユーモアさがあり
連続殺人があっても作品が暗くならないのが特徴。
特に老婦人素人探偵マープルものはその典型。

冷静に考えると、
こんな広告そもそも新聞社が乗せるのだろうかという素朴な疑問や
新聞見ただけで都合良く村の人々が集まってくるのだろうか
なんてことをつい考えてしまう。
ただ前述のように、
クリスティ作品は観客が納得ずくのお芝居としての仕立てがあり
多くの評論家曰く、英国ならではの風刺や喜劇の要素が根底にあるので
設定の強引さをある程度許容できてしまうのだろう。

ずばり、ミステリを読み慣れた読者なら
最初から犯人はわかります。
ファンの間では本作は上位にランクインしており
クリスティも自らのベストテンの一冊にあげているが
私はさほどずば抜けた作品とは思わない。
しかしそれでも、私はこれを読めと言いたい。
なぜって
紅茶とケーキをいただきながらクラシックをかけて
心地よく楽しめるミステリって、そう無いじゃありませんか。
長く読み継がれる所以です。




┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 冒険小説 ==

脱出航路

ジャック・ヒギンズ
ハヤカワ文庫
★★★★★



一隻の帆船の運命と誇り高き人間たちの生き様を描いた海洋冒険小説の最高峰

【あらすじ】
第二次世界大戦末期、戦況が連合国側に大きく傾く中
ブラジルのベレン港から一隻の老朽帆船が出港した。
それはドイツ人男女を乗せた偽装船だった。
一行は中立国のスウェーデン船を装い
一路祖国ドイツを目指す。
しかし船齢六十年の船体に加え、
大西洋は連合国軍の圧倒的な制圧下にある。
荒波にもまれながら大海原をひた走るドイッチェラント号。
一方、乗組員たちの運命を翻弄するかのように
英国の北方ファーダ海域には
至上空前のスケールの大嵐が接近していた。


【読みどころとポイント】
冒険小説ファンを自負する人なら読んでいな者はいないほどの名作。
作者のジャック・ヒギンズは、第二次大戦を背景に
連合国、枢軸国、双方の人間たちの銘々伝を書き分けながら
物語に広がりと厚みを持たせダイナミックな人間ドラマへと昇華させた。

荒波にのまれ転覆寸前の状況に落ち入りながらも
何度も何度も死の底から奇跡の生還をとげる
老朽帆船ドイッチェラント号の姿は雄々しく感動的だ。

登場人物たちは、どうにもならない苦境におちいった時にも
やせ我慢を持ち前のジョークで吹き飛ばすロマンティックな奴ら。
緊急時には軍人だけでなく
乗り合わせた尼僧たちも男顔負けの活躍を見せる。
この物語では敵味方や男女関係なく
誰もが冒険ドラマの主人公だ。

ヒギンズは、戦争に翻弄されるちっぽけな人間たちと
圧倒的な猛威をふるう大自然のスケールを対比して描くことで
戦争という行為の愚かさを浮き彫りにし
登場人物一人ひとりの誇り高い生き様を見事に活写した。

物語の後半、空前の大嵐に翻弄されるドイッチェラント号の姿に
米・英、独の軍人たちそれぞれが戦への矛盾と
自分たちの生き方を重ね合わせ自問自答する場面がある。

クライマックスの連合国・枢軸国の隔たりを越えた
ドイッチェラント号をめぐる感動の救出劇は本書の白眉。
長く苦しい航海の果てにヒギンズが用意した結末は至高の光を放っている。

戦争に翻弄されながらも誇り高い生き方を堅持する人間たちの生き様を
一隻の帆船の運命とともに高らかにうたいあげた本書は
まさに海洋冒険小説史上に残る不朽の名作だ。

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== 警察小説 ==

目くらましの道

ヘニング・マンケル
創元推理文庫
★★★★★☆



謎の連続殺人に挑むヴァランダー警部の活躍を描くスウェーデン警察小説の金字塔

【あらすじ】
恋人との夏期休暇を心待ちにするヴァランダー警部に一本の電話が入った。
現場に駆けつけると、菜の花畑で少女がガソリンをかぶり焼身自殺。
目の前で少女が燃え上がる姿に衝撃を受けるヴァランダー。
一方、別の事件発生の一報が入った。
元法務大臣が背中を斧で割られ
頭皮の一部を髪ごと剥ぎ取られているというのだ。
そしてその後、第2、第3の殺人が…。
CWAゴールドダガー賞を受賞したスウェーデン警察小説の傑作。

【読みどころとポイント】
冒頭に物語の伏線となる挿話が描かれ、
その後少女がヴァランダー警部の目の前で焼身自殺をとげるという
劇的なファーストシーンから物語の幕があく。
一方、元法務大臣が斧で殺されその後次々と殺人が発生。
夏期休暇を目前にイースターの警察署は
警察官総動員で姿なき犯人を追うことになる。

とにかく全編にわたり、きびきびとした捜査状況がリズムよく描かれ
組織警察小説の醍醐味が存分に味わえる作品。
各章の合間に犯人の行動とモノローグが織り込まれ緊迫感も十分。
テンションを最後まで維持したまま物語が進んでいく
第一級のエンターテインメントだ。

警察ものと言うと、組織のはみ出し者の刑事が
一人で難事件に挑んでいく作品も多いが
ヴァランダー警部は年配の管理職でもあり、
部下を巧みに動かしながら真相へと迫っていく。
この展開がリアルかつ新鮮である。

管理職という立場だから
捜査のビジョンや指示出しも全て自分で行わなければならない。
自分の判断ミスは部下全員の捜査ロスにつながる。
率いる部下の面々も多種多様。
仕事よりもサッカー観戦を楽しみにしている者や
二人の子育てをしながら捜査に携わる者など、
価値観や家庭環境も異なるメンバーを
首尾よくまとめあげていかなければならない。

当のヴァランダーも父親の病気という課題を抱える一方、
間近に迫った夏の休暇を心待ちにしている一人だ。
解決までのタイムリミットが恋人との旅行期日というのもいい。

情にもろいのに警部という立場ゆえ
部下の前では自分の感情をおさえるも、
少女の自殺を目にして人知れず泣き出してしまう事も。
そんな人間味あふれるヴァランダーのキャラクターは
誰もが共感するところ。

一方、犯人による連続殺人の手は止まらず捜査は難航を極める。
連日の捜査で職員も疲労困憊だ。
捜査のプロセスや手がかり、証拠品、犯人の行動が
すべてフェアに開示されているのに
下巻の後半まで読者は犯人を絞れないだろう。
作家ヘニング・マンケルが周到に用意した「目くらましの道」に
読者はヴァランダー警部と迷い込む事になる。

長い上下巻のフィナーレとなるラストの挿話は
いま思い出しても涙が込み上げてくる。
感動の警察ドラマだと断言したい。

本書はミステリ好きなら絶対に読まなければならない傑作。
未読の方は、現在手にしている本を放り出し
すべての約束を後回しにしてでも読むべし!

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