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== ハードボイルド ==

ブラック・アイス

マイクル・コナリー
扶桑社ミステリー
★★★★★



新種の麻薬ブラック・アイスの大規模な密輸ルートに挑むボッシュの孤独な闘い

【あらすじ】
クリスマスの夜、ハリウッド署殺人課刑事のハリー・ボッシュは、
警察の無線スキャナーで刑事と思われる死体がモーテルで発見された事を知った。
現場に駆けつけたボッシュだが、ロス市警の幹部から捜査を外れよとの命令が下る。
死体は頭部をショットガンで吹き飛ばされており身元判別不明だったが、
指紋照合の結果、死体は同じハリウッド署の麻薬課刑事ムーアと推察された。
ムーア刑事はブラック・アイスと呼ばれる新種の麻薬を追っている最中だった。
警察の上層部は自殺として処理しようとするが、
死体発見現場の不審点に気づいたボッシュは単独で捜査を開始。
やがてメキシコとアメリカをむすぶ大規模な麻薬密輸の実態が浮かび上がり
ボッシュは単身でメキシコに飛ぶが…。

【読みどころとポイント】
人気ミステリ作家マイクル・コナリーが書くハリー・ボッシュシリーズ第2弾。
今回はアメリカとメキシコをむすぶダイナミックで骨太なミステリとなっている。

ボッシュはかつて、連続殺人事件の犯人に対する判断ミスの射殺で
LA警察署殺人課から「ロス市警の下水」と揶揄されるハリウッド署に左遷。
日頃から上層部と事あるごとに衝突し署内でもはみ出しものである。

上司のパウンズは真相解決よりも犯罪検挙率の数にしか興味なく
ボッシュを煙たがりながらも彼の検挙率の高さから
他部署への異動を躊躇せざるをえない小心者の役人だ。

組織対個人という図式を抱えつつ、麻薬王ソリージョと対決すべく
単身でメキシコに渡るボッシュ。
警察署内部にソリージョとの密通者がいると噂されるメキシコでの単独行は
まさにハラハラドキドキ。いやが上にも緊張感が高まる。

地元警察との共同による大規模な麻薬工場への強行突入シーンは
ハリウッドの映画を見ているような緊迫感あふれる描写。
ぞくぞくするようなスリリングな銃撃戦も見所たっぷりだ。

「おれは自分がなにものかわかった」という
謎めいたムーアの遺書に隠された真実を洗い出すうちに
ボッシュ自身も幼かった頃の孤独感を改めて見つめ直す事に。
事件の真相を追うプロセスは
同時にボッシュの過去を彼自身が再認識する過程でもあるのだ。
この点もハリー・ボッシュシリーズを高みに押し上げている要因だと思う。

ムーアの死体発見からメキシコへの単独行、ムーアの妻シルヴィアとの交情、
クライマックスの麻薬工場急襲シーン、そしてラストの意外などんでん返しまで
スキの無いプロットがこれでもかと続く屈指のエンターテインメント。
本書「ブラック・アイス」は、人気を呼んだ前作「ナイト・ホークス」を
ストーリー、プロット、アクションすべてにおいて大きく凌いだ傑作だ!

「なんにもならないことになぜすべてを賭ける?」 という上司の問いかけにも
自己の生き方をかたくなに曲げないボッシュ。
ボッシュは果たしてこれからどこへ向かっていくのか。
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== 現代ミステリ ==

ウィーラーからの電話

ウィリアム・G・タプリー
扶桑社ミステリー
★★★☆



大自然に抱かれた湖畔で発生した失踪事件に都会派弁護士コインが挑む

【あらすじ】
ボストンで弁護士を営むブレイディ・コインのもとに、
カナダ国境に近いレイヴン湖畔でロッジを経営しているタイニ・ウィーラーから
一本の電話が入った。
地元インディアンから周辺が聖地であると主張され、
土地の買収問題に巻き込まれているといのだ。
コインは水上飛行機で現地へ飛ぶが、到着と前後して2人の男が姿を消した。
やがて殺人事件が発生し、捜査を進めるコインにも危機が迫る。
ボストンの都会派弁護士ブレイディ・コインの活躍を描くシリーズ5作目。

【読みどころとポイント】
ブレイディ・コインシリーズは既に絶版で古書店でもあまりお目にかからない。
ボストンが舞台のスペンサーシリーズ等と比べても
人気や知名度の点で大きな差があるのも事実で
読んだ事が無いという人も多いだろう。
しかし私の大好きなシリーズのひとつである。

コインシリーズの魅力は適度なミステリと洒落た会話のセンス。
人物造形のうまさとリラックスして読めるストーリーだ。

コインはどこかの私立探偵のように人生の訓示を並べ立てたり
ワイズクラックを不必要に乱発したりしない。
芝居がかった荒唐無稽なアクションもなく
じっくりと腰を据えて冷静に事件をとらえる“知性派弁護士”だ。

円熟した大人の落ち着きと洒落たセンスを持ち合わせ、
それでいて適度な明るさとユーモアがあるから
物語も陰鬱にならずリラックスして読めるのである。
本書の巻末で解説の池上冬樹氏も同様に述べており同感である。

さて今回は“弁護士の休暇”とでも副題をつけたくなるような内容。
行動目的の半分は仕事。半分は趣味の釣りだ。
カナダ国境に近い大自然の懐に抱かれた湖畔での釣り場面が何度も登場し
コインと一緒にアウトドアを満喫している気分が存分に味わえる。

タプリーはアウトドア誌への寄稿もしていたそうで自然の描写は天下一品。
季節のうつろいや生き物たちの息づかいまでも
繊細かつ詩的に描き出すセンスに満ちあふれている。

肝心のミステリの方は、アメリカが抱えるインディアンの問題を背景にしつつも
都会派らしいツイストをきかせた仕上がり。
結末には意外な真相が用意され、読者を十分楽しませてくれる。

ウィリアム・G・タプリーは2009年に亡くなり
扶桑社ミステリから発刊されていたコインシリーズもすべて在庫ゼロという状況。
できれば復刊して多くの人に読んでもらいたいと思っている。

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== マンガ ==

ラスト・ワルツ

島田虎之介
青林工藝社
★★★★★



知られざる人生、語られなかった物語が紡ぎだす歴史の一大叙事詩

【あらすじ】
そこらにいる普通の人、たまたま出会った人々が
実は世界の歴史に一役かっていたとしたら。
そんな知られざる人生、語られなかった物語がひもとかれる時
我々は連綿と続く歴史の海に身をゆだねる事になる。
現代のマンガ界においてひたすら物語の可能性を追求し続ける
孤高の作家シマトラが贈る壮大な叙事詩

【読みどころとポイント】
さて島田虎之介=シマトラの作品の登場である。
シマトラは2008年に「トロイメライ」で手塚治虫文化賞新生賞を受賞した
知る人ぞ知る実力派のマンガ家だ。

初めて読む人はまずこのマンガの読みにくさに唖然とするかもしれない。
マジックでひたすら描きこんだような個性的な作風。
一見何のつながりも無いようなシーンの連続。
一読しただけではわからず読者に想像力を強いる短いセリフまわし。
しかしここで投げ出してはいけない。

ここには私たちが知らなかった壮大な歴史のドラマがある。
本書に収められた11の短編は語られなかった過去へ我々を誘うのだ。

いくつかの短編を紹介すると、
伝説のバイク開発に隠された沈黙の歴史、
チェルノブイリで独り生き残った消防士の孤独、
ガガーリンに有人宇宙飛行を譲った元飛行士の苦悩、
60年の時を経て日本に帰国したブラジル移民の追憶…など。

これらが独立した読み応えのある物語であるばかりでなく
個々の物語がラストのクライマックスに向けて
複雑に絡み合いながらドラマチックに結実していく。
いやー何というマンガだろう。

表層的でビジュアル重視の現代マンガに迎合せず
あえて重層的な歴史ドラマを持ち込み
丹念に緻密なエピソードを積み重ねながら
ひとつの壮大な物語を構築するという試みだ。

歴史の中に埋もれた人々の孤独と人生の喪失。
しかし最期の最期に
シマトラは永きにわたる喪失の物語を
未来へ続く希望の物語へと見事に昇華させた。

かつて手塚治虫が「火の鳥」や「アドルフに告ぐ」といった
重厚な物語で紡ぎだした“物語としてのマンガの感動”を
もう一度我々に提示してくれる素晴らしい作品。
定価¥1,300の価値はあるよ!恐れ入りました。

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== 現代ミステリ ==

最後の喝采

ロバート・ゴダード
講談社文庫

★★★★☆



舞台俳優トビーが真実を求めて奔走する8日間の迷宮サスペンス

【あらすじ】
舞台俳優のトビー・フラッドは不人気な芝居の主役に抜擢され地方巡業先のブライトンに赴く。そこには、離婚訴訟中の妻ジェーンが新たな婚約者と在住していた。未だ妻に未練を残すトビーに当のジェーンから連絡が入った。見知らぬ男に見張られているから何とかして欲しいというのだ。男の身元を洗い出すべく行動を起こしたトビーだったが、そこには思いもよらぬ運命が待ち受けていた。
ストーリーテラーの巨匠ロバート・ゴダードが放ったスピーディーなサスペンス。

【読みどころとポイント】
ロバート・ゴダードお得意の「巻き込まれ型」サスペンス。
といってもこれは近年のスタイル。
これまでどちらかと言えば歴史を遡る重厚なミステリも多かったが
8日間という限定された時間と舞台もブライトンという場所に固定され
主人公が真実を求めてひたすら右往左往するサスペンス色の濃い作品となっている。

ゴダードの魅力を一言で言えば、「隠された真実は何か?」を探すことである。
殺人事件が起きて犯人を捕まえるといった単純なプロットではなく
この物語には一体何が隠されているのか、どんな秘密が潜んでいるのかを
主人公とともに探し回ることこそがゴダードの小説の醍醐味なのである。

そしてもうひとつ、主人公が出会う人物ひとりひとりが
何らかの秘密を抱えているような節があり、
一体誰が本当のことを言っているのかわからなくなるのも特長のひとつ。

協力を仰いでいる人や関係者すべてが
果たして敵か味方かわからない。
そんな中での単独行動だからこそサスペンスは盛り上がる。
とにかく読み出したら真実を知りたくて
最後まで頁をめくる手を止めることができない。

あえて本書の難を言わせてもらうなら
主人公のトビーが妻に未練を残している理由や背景が
今ひとつ書き込まれていないので
何故そこまで危険をおかしてやらなければならないのか、
舞台の公演に支障をきたしてまで行動する必要があったかどうか等、
首をかしげたくなる部分もあることは否めない。

そうは言っても並の作家よりもずっとハイレベルの作品であり
ゴダード作品にしては過去の謎をじっくりひもとく事より
危機的状況におかれた主人公が不安を抱えつつ
謎を解明していくサスペンス色の濃い作品のため
はじめてゴダードを読む方にも受け入れられやすい内容といえる。

初期の作品があまりにも高水準の作品が多かったため
本書のように高いクオリティの作品でも
昔からのファンからは辛口の評価が出ることもある。
天才ゆえの悲しき宿命か?
でもって結論!
それでもロバート・ゴダードはやっぱり最高に面白い!

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== ノワール ==

愚か者の誇り

ジョージ・P・ペレケーノス
ハヤカワミステリ文庫(絶版)
★★★★



愚かだが誇りを堅持せんとする男たちを描くワシントン・サーガ第2弾

【あらすじ】
ノワールの傑作「俺たちの日」に続くワシントン・サーガ第2弾。
前作で主役を務めたピート・カラスの息子ディミトリが今回の主人公。
麻薬の横流しで気楽な人生を送るディミトリは、
真面目に働く親友マーカスを伴い、売人のもとに麻薬の買付に訪れるが、
売人の男が情婦に暴力をふるう現場を目撃し、彼女と現金を奪って逃げてしまう。
この事件をきっかけに、たまたまこの現場に居合わせた、
別の取引相手の殺人狂団から、命を狙われるはめになった。

【読みどころとポイント】
舞台は1970年代中期のワシントン。
法の裁きも警察も役に立たない無法地帯として描かれており、
悪人は徹底的にワルだ。

そしてプロットはいたってシンプル。
殺人狂からいかにして身を守るか。
まさに、やるか、やられるか。

作中に上演されるポン引きの黒人映画や当時のミュージックシーンが、
70年代中期の時代の香りを醸し出している。
主人公のディミトリは、そんな時代を体現する「気楽な愚か者」だが、
否応無しに殺人狂との抗争に巻き込まれて行くことになる。

ストーリーはありきたりのノワールのようだが、
これを芳醇な物語に押し上げているのは、
ペレケーノスの人物造型の上手さと、人間ドラマの書き込みだ。
なかでも、ある事件をきっかけに、
麻薬の売人から足を洗おうと決意するディミトリの心情描写や、
親友マークスとの交情のドラマは印象的。

ディミトリの父ピートの親友であるニック(シリーズを通して出演)から
彼の息子の更正役を頼まれるディミトリは、
リトル・ニックに対して自分の姿を重ね合わせ、
すさんだ自分の生き方を自問自答する事になる。
この辺りの書き方が上手いのである。

終盤、クライマックスのアメリカ独立記念日に向かって物語は加速し
ラストの銃撃戦はまるで映画を見ているようだ。

愚かなりにも誇りを堅持せんとする男たちの生き様を
これでもかとドラマチックにつづるこの物語はやっぱりしびれる。
何と言われようと、ペレケーノスは最高だ!

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