== スポンサー広告 ==

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
┗ --:--:-- ━ Page top ━…‥・

== 現代ミステリ ==

子供の眼

リチャード・ノース・パタースン
新潮文庫
★★★★★☆



傷ついた者たちが“家族の愛”を守るために戦う迫真の法廷劇。

【あらすじ】
辣腕弁護士クリスのもとではたらくテリーザの夫リッチーが謎の死をとげた。
テリーザとリッチーの関係は既に冷えきっており
離婚と娘の監護権をめぐって争いを続けている最中の死だった。
その後事件当日の目撃証人が現れ、クリスが逮捕される。
既にクリスと恋仲だったテリーザは愕然とする。
はたしてこれは自殺か、それとも他殺か?そして犯人は?
真相をめぐって息詰る法廷戦が繰り広げられる。

【読みどころとポイント】
素晴らしい。どこから話をすれば良いのだろう…。
この法廷劇は単なる殺人事件の真相究明の争いではない。
これは愛する家族を守る者たちの戦いなのだ。

冒頭からリッチーが謎の侵入者に襲われる緊迫感あふれるシーンが展開。
この導入部は、その後の法廷戦を左右する非常に重要な場面だ。
一転、作者は邪悪な夫リッチーとの生活に疲れたテリーザと
彼女を暖かく癒すクリスの愛をじっくりと描く。
読者はいつの間にか二人の行方を自然に応援したくなる。

クリスはテリーザと息子のカーロを心から愛し
非のうちどころの無い誠実な人間として描かれ
とても殺人をするようには見えない。
ところが、読者には冒頭の侵入者とリッチーのやりとりが頭に離れず
事件後、クリス自身も不審な行動をすることから
クリス=殺人者の疑いをぬぐいきれないのだ。

テリーザとリッチーの幼い娘エレナは事件のショックで心を閉ざし
クリスの息子のカーロはエレナ虐待の容疑を負わされ
事件は子供たちを否応無く巻き込み
いつしか物語は家族を守る愛の戦いへと発展していくのだ。
このあたりの構成や展開は非常にうまく
読者はこの物語の結末を知りたくて頁をめくる手を止められない。

テリーザとクリスの不遇な幼少時代や
双方の家族の悲劇的な背景を丁寧に織り込みながら
ひとりひとりの人間像をぐっと浮き彫りにする事で
物語に深みを与え重厚な人間ドラマをつくりあげている。

危機的な状況に陥ったクリスを弁護する
女性弁護士キャロラインの胸のすくような法廷合戦も見事。
検察側との緻密な頭脳戦はまさに“息詰る攻防戦”という形容詞がふさわしい。

そして、すべての真相が解明された後に残されたもうひとつの命題。
傷ついた者たちは、はたして家族の愛を取り戻せるのか。
幼いエリナとカーロに幸せはふたたび訪れるのか。
それは本書を読んでみなさんの眼で確かめていただきたい。
スポンサーサイト

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

┗ Comment:4 ━ Trackback:1 ━ 23:13:39 ━ Page top ━…‥・

== 未分類 ==

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命

梅田 望夫・飯吉 透
ちくま新書
★★★☆



知と教育の開放~オープンエデュケーションの実像に迫る

「ウェブ進化論」の著者梅田望夫が教育学者の飯吉透とともに
知と教育の開放~オープンエデュケーション~について
アメリカの先行事例を中心にその可能性をこれでもかと書いた新書。

本書執筆の発端は、マサチューセッツ工科大学が大学の教育コンテンツを
ウェブを通じて全世界に無料で配信すると宣言したことにある。
当初課金ビジネスを視野においたが、ビジネス化が難しいと判断した時点で
それならいっそ世界中の人々に無料で使ってもらおうと決めたのだから驚きだ。

オープンエデュケーションと呼ばれるマサチューセッツ工科大学の大胆な試みは
教育界はもとより産業界、経済界、社会全体にセンセーショナルを巻き起こした。
これによって金銭面や諸事情で大学に通うことのできない人々も
教育の自由、学ぶ事の自由を手に入れられるという訳だ。

著者の梅田は、アメリカのオープンエデュケーションの急速な広がりについて
その根底に自由の国アメリカの“相互扶助”や“ボランティア精神”があると語る。
日本の大学でも近年オンラインで講座を受講できるしくみや
キャンパスそのものを持たないサイバー大学も出始めてはいる。
しかし、日本の大学がすべての知を無料で世界中に開放しようという試みは
国民性や文化を考えると生まれにくいなと思ってしまう。

教育そのものを学ぶ側に思い切って預けてしまおうという大胆な発想。
その意味では、オープンエデュケーションは学ぶ側にも
膨大に流布される教育コンテンツを目利きし
自ら学習の体系を組み上げ学び取る能力が求められる。
この結果、ウェブを通した人のつながり=学びのコミュニティが形成され
そこにまた新たな学び合いによる価値が生まれるという。

確かに近年、国内の有名大学を出たにもかかわらず
就職できずにアルバイトにつく若者も後をたたない。
日本の大学も大きな岐路に立たされているのは間違いない。

我々は既にウェブという革新的な道具を得て
世界中の知の海を泳ぐ事ができるようになった。
さらにそこに教育というシステムが、世界中の人々によって付与されたなら
学びはもっと加速し人類の知のポテンシャルが大きく飛躍するということらしい。

本書の書きっぷりがあまりにも肯定的なのがやや鼻につくが
ウェブによる教育の新たな潮流が確実に生まれつつあるのは事実で、
今後の日本においてどのように受け入れられていくのかに注目してみたい。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

┗ Comment:0 ━ Trackback:0 ━ 22:44:45 ━ Page top ━…‥・
New « ┃ Top ┃ » Old
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。