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== 現代ミステリ ==

大鴉の啼く冬

アン・クリーヴス
創元推理文庫
★★★



厳寒のシェトランド島で起きた少女殺人事件をめぐる人間ドラマ

【あらすじ】
新年を迎えた厳寒のシェトランド島。
大鴉の舞う雪原で少女の絞殺死体が発見された。
彼女は真っ赤なマフラーで首を絞められていた。
近くに住む孤独な老人マグナスが容疑者として逮捕されたが
彼を犯人と断定する証拠は乏しく事件の真相は掴めないままだった。
顔見知りばかりが住むこの島の小さな町で、誰がなぜ彼女を殺したのか? 
地元警部ペレスの胸に8年前の少女失踪事件がふとよぎる。
2006年CWA最優秀長編賞を受賞したミステリ。

【読みどころとポイント】
まずシェトランド島を舞台に設定したことが功を奏している。
スコットランドの北東にあり北欧文化が残るこの島は
地元住民の結びつきも強く外部の人間を容易には受け入れない。

作者のアン・クリーブスはそんな北欧の島を舞台に
事件をめぐる人々のとまどいや不安、葛藤を丁寧に紡ぎだしている。
その細やかで行き届いた目線は物語に生命を吹き込み
読者を芳醇な物語の世界へと誘ってくれるのだ。

プロットは地味でミステリとしての構成力にもやや乏しいので
スリリングな展開や奇想天外な謎解きを望む方にはあまりおすすめ出来ない。
むしろ事件をめぐる人間ドラマを丹念に追うことがポイントといえる。

謎解きの醍醐味も弱いのだが、そこはCWA受賞作。
簡単に犯人がわかるというものではない。
ラストまで真犯人が誰かはほとんど検討がつかないだろう。

2つの事件の動機は大それたものでなはなく
ごくありふれた日常の中にあるものなのだが
だからこそそれ自体が寒々とした島の描写とあいまって
読者に事件の悲壮感をいっそう訴えかけてくるのである。

地元警察官のペレスも地味でいい味を出している。
派手なアクションは全くないけれど
寡黙なこの男は不器用ながら常に自分を抑制し
シェトランドの警部役を見事に演じているのだ。

登場人物一人ひとりがけっして派手でなないけれど
何故かかれらのその後が気にならずにはいられない。
こんな作品をじっくり味わうのもミステリの醍醐味だろう。







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== ハードボイルド ==

長いお別れ

レイモンド・チャンドラー
ハヤカワ・ミステリ文庫
★★★★★



哀切な男の友情と別れを一杯のギムレットとともに描いた巨匠の名作

【あらすじ】
フィリップ・マーロウは酒場で酔いつぶれたテリー・レノックスと出会い、
いつしか彼に惹かれ酒場で杯を傾けるようになる。
そんなある日マーロウはテリーから
“何も言 わず空港まで連れていってほしい”と頼まれた。
彼の手には拳銃が握られていた。
テリーを車で空港まで送りメキシコに向かう飛行機に乗せたが
後日彼の妻が死体で発見され、テリーは殺人の容疑者として手配されるが
彼はその後メキシコで自殺をとげてしまう。
テリーに殺人などできるわけがないと考えたマーロウは真相究明に動き出した。
ハードボイルドの巨匠レイモンド・チャンドラー不朽の名作。

【読みどころとポイント】
これまで多くの人々に読みつがれてきた小説で
いまさら感想を書くなど恥ずかしいのだが
何度読み返しても新鮮な感動がある作品である。

物語の冒頭、マーロウとテリーとの出会いはさして劇的なものでもなく
マーロウはテリーに惹かれるものがあったと簡単に語られるだけで
何故彼がそこまでテリーを助けるのかの具体的な説明はなされない。

それでも彼ら二人が酒を酌み交わす場面が秀逸で
読み手に彼らの絆を納得させてしまうのである。

容疑者を逃亡させた罪で投獄されようが
周囲から圧力をかけられようが生き方を曲げないマーロウ。
普通ならどうしてそこまでとなってしまうのだが
行間から立ち上って来る空気が
マーロウの行動を正当化してしまうのだ。

テリーの自殺後に全く別の事件の依頼がマーロウに舞い込むが
その捜査がやがて最初の事件とむすびつき意外な真相にたどりつく。
プロットはゆったり進みミステリとしての緊迫感やサスペンスは無い。

謎解きよりも全体の雰囲気とマーロウの生き方を味わう事が
本作品の楽しみ方と言えるだろう。

何度も出て来る酒場のシーン。
本作を読んでいると無性に酒が飲みたくなって来るのだ。

ほんのわずかしか登場しない脇役もよく立っている。
芝居がかったマーロウの皮肉っぽいセリフも
チャンドラーの小説では最高にかっこよく昇華されてしまうのだ。

一度読んだだけではわからないセリフの味わい。
読み返すたびに新たな発見がある小説というのはそうあるものではない。

本作を味わいつくすには私もまだまだ未熟ということだろう。
そう「ギムレットにはまだ早すぎるのだ」




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