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== マンガ ==

ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~

少年チャンピオン・コミックス・エクストラ
宮崎 克(原著)、吉本浩二(イラスト)
秋田書店

★★★★★




漫画にかける手塚治虫と彼をとりまく編集者たちの熱き戦いのドラマ。

【あらすじ】
不朽の名作ブラックジャックはいかにして誕生したのか?
手塚治虫の漫画はいかにして作られていたのか?
彼を支えた編集者たちの漫画にかけた情熱とは?
漫画の神様の制作現場には想像を絶する格闘のドラマがあった。
”手塚治虫の創作の現場を関係者の証言で再現する魂のノンフィクション!

【読みどころとポイント】
私がブラックジャックにハマったのは小学校6年生の頃だったと思うが
わずか数十ページの中に凝縮された濃密な人間ドラマに
子どもながら圧倒されて夢中で読みふけったものだ。

本書はブラックジャック創作秘話というタイトルになっているが
内容的には手塚治虫と彼をとりまく編集者たちの
壮絶な漫画制作の舞台裏を追った熱きドキュメントである。

鉄腕アトムやジャングル大帝で大ヒットをとばした手塚治虫は
1,960年代後半になると劇画漫画が台頭するようになり、
スランプ状態に陥りアニメ事業の多額な負債も抱え虫プロは倒産。

「もう手塚は終わった」と世間も噂するようになる。
そこに名物編集長、カベさんこと「壁村耐三」が少年チャンピオンの編集長に就任し
手塚治虫に連載をもちかけ、彼は見事ブラックジャックで奇跡の復活を果たす。

このカベさんというのが実にヤクザな編集長で
担当編集者に「手塚の原稿とれなかったらぶっ殺す」と脅し
漫画家に対しても脅迫まがいの事を繰り返す鬼のような男なのだ。
それだけに手塚の編集担当者も必死だ。
本書を読むとマンガというメディアが
いかに漫画家と編集者の二人三脚で成り立っているかというのが実感できる。

手塚治虫の作品作りにかける情熱はすさまじく妥協を許さない性格ゆえ
締め切りを守らないのは日常茶飯事。
たくさんの連載を抱え各社の編集担当者が原稿回収にシノギを削る。
そんな中で自分の担当原稿を一番に仕上げてもらうのに誰もが必死なのだ。

手塚治虫は常に3~4本のアイデアを考え
その中から編集担当者に一本に絞ってもらっていたそうだ。
手塚治虫渾身のストーリーだけに選ぶ方も真剣勝負。
いいかげんな態度や妥協は許されない。

途中、漫画の神様と言われている手塚治虫が
疲労困憊になりぼろ雑巾の様に床で眠るシーンが出て来る。
手塚の原稿遅れにキレた編集担当者が事務所の壁を壊す場面も出て来る。
これが神様の創作の舞台裏。まさに魂のぶつかり合い。命がけの格闘技なのだ。

本書の漫画のタッチはお世辞にも上手い絵ではないのだが
貪るように漫画と格闘する手塚治虫の鬼気迫る表情や
漫画にかける彼の熱い想いを迫真の描写で再現していると思う。

手塚治虫はスゴかった。そしてそれを影で支えた男たちもまたスゴかった。
今日のマンガがあるのはこうした人々の
血のにじむような格闘の日々があったからにほかならない。

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┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 国内小説 ==

1Q84

村上 春樹
新潮社
★★★★☆



「ありえたかもしれない世界」に展開する若者たちの孤独と共鳴の物語

【あらすじ】
1984年の東京。スポーツジムのインストラクターをしている女性の青豆は
DV犯の暗殺者というもうひとつの顔を持っている。
ある日、暗殺にタクシーで向かう途中渋滞に巻き込まれた青豆は
乗っていたタクシーを止め首都高の非常階段を下りると
天空に二つの月が浮かぶ異質な世界に入り込んでしまう。
一方、予備校の数学教師を務める天吾は
知り合いの編集者から新人賞に応募された作品のリライトをたのまれ
難色を示しつつもその作品の神秘的な力に惹かれ書き直しを承諾してしまう。
その作品を書いたのは深田絵里子(通称ふかえり)という17歳の女性で
後に「さきがけ」というカルト集団との関係が深い事が明らかになるが…。


【読みどころとポイント】
本書は基本的に青豆と天吾の章が交互に展開され
互いの章が共鳴しながらひとつの物語を形成していく構成となっている。

作中で二人の小学校時代の回想が綴られ
「証人会」と称される宗教に傾倒する家庭に生まれた青豆と
NHKの社員である父の集金回りに連れ回される天吾が、
同じクラスに在籍しそれぞれ人に語れぬ悩みを抱いていた事が明らかにされる。

そしてその時二人の間にかわされた一瞬の出来事が
長い時間を経てお互いの心の中に忘れ難い思い出となっていくのである。

本書ではDVを受ける女性たちをかくまいつつ青豆の協力を得ながら
広汎な正義と称して犯罪者に死を与えることを正当化する老婦人や
彼女と青豆の護衛役を務め殺人も厭わない元自衛隊のレンジャー、
警官でありながら青豆と危険な性行動にはしる女性、
新人賞に応募された作品のリライトを天吾に依頼する編集者など
どこか壊れてしまった人間が数多く登場する。

舞台となる1Q84という世界そのものが現代社会が抱える課題を比喩に
独特の世界観を形成しているため本書の感想を書く事は極めて難しい。
どこかで何かが起きているようなのだが
それが明快にわからずほんやりとした不安が漂い
それを象徴するかのように天空には2つの月が不気味に浮かぶ。
物語の途中から「さきがけ」と通じて二人の身辺を調べる牛河という人物が現れ
彼の視点の章が挿入されるようになると不穏な空気が徐々に物語を支配し始める。

「羊をめぐる冒険」や「ダンス・ダンス・ダンス」で書かれてきた
現実から乖離したどこか茫洋とした不思議な感覚は残されつつも
それらに見られた牧歌的な暖かみや軽みは消え去り
1Q84という世界の神秘性と目に見えない闇に対する不安を
青豆、天吾の二人の視点を通して色濃く描いた作品となっている。

村上自身が本作を書いたきっかけとして地下鉄サリン事件をあげており
オウム真理教の地下鉄サリン事件で被害にあった人たちの
インタビューをベースにまとめられた「アンダーグラウンド」などの執筆を通して
原理主義やカルト的な精神支配への対抗を
小説という形態で紡ぎだしてみたいと思うようになったらしい。

例えば、青豆が「さきがけ」のリーダーを暗殺しようとする場面では
儀礼的行為としての幼児虐待に及ぶリーダーを
ことさら狂信者として強調するのではなく
人間とかけ離れた神秘的な存在として描き出すことで
実体の見えないものが人々の精神を支配することの恐怖を
リアリティをもって読者に伝えることに成功している。

現実と虚構を織り交ぜたような構成と
現代社会が抱える闇を独特の比喩と世界観で語った作品だけに
本書の解釈論をめぐっては各方面で様々な議論があるようだ。

難しいことを言わずに単純に「面白い」か「面白くない」かと聞かれれば
「う~ん、面白くはないかなぁ」と答えてしまいそうだが
個人的には、このような物語を現代社会と照らし合わせて
自分なりの解釈をしてみるという読み方をおすすめしたい。



1Q84 BOOK 1


1Q84 BOOK 2


1Q84 BOOK 3

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 警察小説 ==

警視の孤独

デボラ・クロンビー
講談社文庫
★★★★



謎の連続放火と失踪事件に挑むキンケイド&ジェマの活躍

【あらすじ】
舞台は再開発が進むロンドンのサザーク地区。
ヴィクトリア朝の歴史的な建物が火事になり
持ち主は地域の再開発に反対していた大物政治家だったことが判明した。
現場からは謎の女性の死体が発見され、
スコットランドヤードの警視キンケイドが。
デリケートな捜査の担当をまかされることになったが
遺体の女性の身元は判らず、やがて第2、第3の放火事件が…。
キンケイド&ジェマが活躍する人気の警視シリーズ第10弾。

【読みどころとポイント】
本シリーズを読むのは初めてなのだが
本書は10作目で各国で翻訳されけっこうな人気らしい。

警視のキンケイドと警部補のジェマは
かつての上司と部下で今は別々の職場に従事しているものの
お互いの子どもを連れて同居生活を営んでいる。

プライベートではキンケイドの息子の親権を求めて
義理の祖父母が裁判を起こすなど心配の種がつきないが
そんな家族の日常を無視するように次々と難事件が発生する。

お互いの子どもを連れての同居だが結婚には至っておらず
おそらくシリーズの最初から読み続けている読者は
二人がいつ平穏な結婚生活にたどりつくのか
いつも気になっているに違いない。

女性の謎の失踪、行方不明となった10歳の少女。
そして第2、第3の放火事件の発生と
複数の事件が平行して次々に発生し事件は混迷を極める。
果たしてそれらの事件はすべて関連性があるのか?

本書のミステリとしてのうまさは、
それらの事件の関連性を読者に示唆しながらも
その係わりの真相をラスト近くまで隠し
モジュラー型警察小説のしくみそのものを
うまくミステリの筋立てとして組み込んだ点にあると思う。
この点は詳しく書けないので本書を読んで欲しい。

それともうひとつの読みどころ(こちらが主かな)は
錯綜する事件を丁寧に書き分けながら、なおかつ
登場人物一人ひとりの物語にスポットをあてた点だ。

キンケイドとジェマの家族ドラマももちろん
脇役ながら、連続放火に挑む若き女性消防士の活躍も見どころ。
圧倒的な炎の中に決死の覚悟で飛び込んでいく彼女の姿は
ポジティブで爽やかな性格も手伝い実に清々しい。

脇役に至る一人ひとりにまできめ細やかに視線をくばり
事件を通して人間ドラマや家族の愛を丁寧に書き込んだところが
本シリーズの持ち味らしくファンが多い所以だと思う。

私なりに難点をあげるとすれば
最近乾いた文体のハードボイルド系の小説に傾倒していたため、
やや説明過多な状況描写や心理描写がくどく感じられた事だ。
この点を抑えればもっと緊迫感あるミステリになったと思う。

とは言え、これからもキンケイドとジェマの活躍は
多くの読者を魅了していくのではないだろうか。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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