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== 国内小説 ==

武士道シックスティーン

誉田 哲也
文春文庫
★★★★★



女子高生と剣道のハイブリッドな展開が読ませる傑作青春ストーリー

【あらすじ】
幼い頃から剣の道を志し宮本武蔵を師と仰ぐ香織。
日本舞踊から剣道に転向したお気楽な早苗。
中学最後の横浜市民大会で初対戦した二人だったが、
香織は鮮やかに早苗に面をきめられ破れてしまう。
そんな二人は皮肉にも同じ高校に進み剣道部で再会することになったが…。
女子高生と剣道のハイブリッドな展開が見どころの人気シリーズ第1弾。


【読みどころとポイント】
もう既に不動の人気シリーズとなっている作品の1作目
さほど国内小説は読まないので随分遅れての読了となったが
噂にたがわぬ傑作青春剣道ストーリーだった。

女子高生と剣の道というハイブリッドな設定が大成功。
髪を金髪に染めて着け睫毛、ネイルアートに
ケバい化粧、スマートフォン片手に街を闊歩するチャラ系女子高生が
増殖している時代だからこそ、本書の設定は新鮮で多くの読者にうけた。

もちろん設定のうまさだけでなく
誉田哲也の物語づくりのうまさが光っている。
中心となる二人の女子高生(香織と早苗)の造形と
彼女たちを取り巻く登場人物の設定、
ストーリーの組み立て方、いずれもが実にうまいのだ。

磯山 香織
警察官で剣道家の父をもつ家庭に育った自称女剣士。
幼い頃から剣道にふれ、剣道以外のものに興味なし。
自分の目に立ちはだかるものは容赦なくぶった斬ると言い切る性格。
家族愛だとか友情だとか人に自分を委ねる生き方を嫌い
高校の同じ剣道部員との馴れ合いを避け一匹狼を貫く。
愛読書は新免武蔵(宮本武蔵)の五輪書ときている。
およそ誰の共感も得ないようなアンチヒロインだ。

西荻 早苗
日本舞踊から剣道に転身したお気楽のんきな性格。
剣道歴は浅いが日本舞踊をベースにした安定感とセンスで
時には強者からもするっと一本とってしまう天才肌。
相手とのトラブルを極力避けて
勝つことより剣道を楽しむ事に重きをおく女子高生。

物語の冒頭は二人が初めて相対する中学最後の剣道大会。
香織は絶対の自信をもって大会に臨んだが
何と早苗に正面から面を鮮やかにきめられ負けてしまうのだ。

剣士を自負する香織が、お気楽ものの早苗に負けるという
鮮烈なイントロダクションを読めば
誰もがたちまち物語に引き込まれてしまうだろう。

私も中学時代に剣道部に所属していたので経験としてわかるのだが
柔道の一本勝ちがたやすくないように
剣道でも相手をきれいに「斬る」というのはそう簡単には行かないのだ。

剣の道一筋を貫く香織だけに、この時の敗退は屈辱的であった。
そして香織が入学を果たした高校に早苗も入学してきたのだ。
高校に入ってからもそのトラウマは長く尾を引く事となる。

剣道は心技体が大事とはよく言ったものだ。
どんな達人でも立ち会い中にはわずかの隙ができる。
「あっ」と思った時には既に斬られている、というのが剣道だ。

圧倒的な強さを誇っていた香織だが
物語の後半では心の迷いから手痛い連敗を繰り返す。
彼女に何があったのかは物語を読んで欲しい。

私の個人的な感想としては
ハイブリッドなテーマや構成のうまさもさることながら
女子高生の若さゆえの心のとまどいや不安を、
剣の道に通ずる心技体と対比させて比喩的に描いていくことで
新鮮な青春ストーリーに仕立て上げた事が成功の要因と思っている。

彼女たち二人が今後どのような成長をしていくのか
今後の作品展開が楽しみだ。
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┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 現代ミステリ ==

告 解

ディック・フランシス
ハヤカワ・ミステリ文庫
★★★



過去の競馬界で起きた不祥事の真相に新進の若手映画監督が挑む!

【あらすじ】
「私は…彼を殺したことを告白します」
末期癌で意識が朦朧となった老人の元装蹄師は、
枕元にいた新進の映画監督トマス・ライアンを神父と間違えて謎の告白を残す。
その後ほどなく元装蹄師は息を引き取り、トマスはさして気にもとめなかった。
トマスは過去の競馬界で起きた不祥事を題材にハリウッド映画づくりに努めていたが
不祥事の真相をめぐり脚本家との対立が顕著になっていた。
そんな折、ロケ中止の脅迫が舞い込み出演者がナイフで襲われ
やがてトマスにも魔の手がしのびよる。フランシス33番目の作品。

【読みどころとポイント】
ディック・フランシスの作品では競馬若しくは競馬に関連する題材が
ミステリの背景として扱われているため、
主人公は騎手や競馬に直接関わる職種に就いている事が多かったが
後期の作品では多彩な職業人が登場するようになり
それぞれの職種の知られざる面を読んでいく楽しみが増えた。

本作の主人公トマスは若手実力派の映画監督で
競馬を題材にした映画づくり取り組んでいるという設定だ。
本作では映画づくりと同時進行で物語が進んで行くため
さまざまな場面でハリウッドにおける映画づくりの舞台裏を
かいま見る事ができて実に興味深い。

映画は監督以外にも、映画会社、スポンサー、脚本家、演出家、俳優など…、
さまざまな職種の人々が関わる共同制作のビジネスである。
作中で制作される映画は、過去に英国の競馬界で起きた
実在の不祥事を題材にしている。
迷宮入りした当時の事件を作品として出版した作家が
自ら脚色し映画の脚本として再構成したものだ。

基本的には脚本があるのだからそのまま映像化すれば良いのだが
ハリウッドの映画づくりはそう簡単にはいかない。
ビジネスとして成功する映画に仕立てるには
必要に応じて脚本や演出を柔軟に変えていく作業が必要なのである。

原作を描いた作家はアメリカとイギリスで名誉博士号を取得している実力派で
脚本を書き換える監督のトマスに敵意を抱き様々ないやがらせを図る。
こうしたアンチな存在や個性的な映画スター、スポンサーたちを懐柔しながら
苦労して作品を仕上げていくプロセスは
さながら一級のビジネス小説を読んでいるようで興味深い。

今回★3つとしたのはミステリとしてのプロットがやや弱いから。
プロローグで謎の言葉を残したまま末期癌の元装蹄師が息を引き取るが
その後たいした事件も起こらないまま物語は映画づくりを中心に展開。

映画づくりの舞台裏を描いたサイドストーリーの方が前に出過ぎていて
フランシスの作品にしては全体的にサスペンス性に乏しいのである。

ところがミステリとしての謎解きが弱いかと言うとそんな事はなく
いったい何故映画づくりを妨害しようとする輩がいるのか
ナイフで殺人を犯してまで隠そうとすることは何なのか
かなり後半にならないと事件の真相や犯人がまるっきり分からない。

トマスが映画の題材となっている過去の不祥事の背景を探るプロセスが
本作のミステリと有機的につながっている点がミソなので
そこはぜひじっくりと読み込んでほしいと思う。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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