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== ノワール ==

ブルー・ベル

アンドリュー・ヴァクス
ハヤカワ文庫(絶版)
★★★★★☆



アウトロー探偵とベルの激情が胸を打つバークシリーズの最高峰!


【あらすじ】
探偵バークに一人のストリッパーから依頼があった。
ベルと名乗るその女は大柄でグラマラスな肢体を持っていた。
彼女の話では〈幽霊ヴァン〉なる不気味な車が界隈に現れ
少女売春婦だけを次々に襲い射殺や拉致を繰り返しているというのだ。
依頼を受けたバークは真相を探り始めるが、
逆に死神の空手使いから狙われるハメになってしまう。
現代ネオハードボイルドの鬼才ヴァクスが描く
アウトロー探偵バークシリーズの最高傑作!

【読みどころとポイント】
ニューヨークのアンダーグラウンドを舞台に
アウトロー探偵バークが活躍するシリーズ第3弾。

弁護士でもある作家のアンドリュー・ヴァクスは
法の目をかいくぐる幼児虐待や性犯罪をテーマに
探偵バークとそのファミリーが犯罪者に鉄槌をくだす物語を描く。

今回も〈幽霊ヴァン〉なる不気味な車が出没し
次々に少女を手にかけていくダークな展開だ。
第1作目、2作目ともに印象的な女性キャラが出演して
バークは彼女たちの依頼で仕方無く事件に巻き込まれるのだが
今回も基本的な構成は同じ。

それでも本作がシリーズの最高傑作たる所以は
ストリッパー「ベル」の圧倒的なキャラクター設定だ。
大柄で素晴らしい肉体を持つベルは
ストリップでも官能的な動きで男たちを挑発。
バークにも持ち前の存在感でぐいぐいと迫ってくる。

時には激しく時には可愛い女豹のようにふるまうベルに
バークもいつしか心を開き彼女との愛に溺れていくが
天真爛漫で奔放に見えたベルにはどす暗い過去があった。

親しくなったバークに自らの出生の秘密を明かすベル。
その悲劇によって彼女の身体に流れる黒い血は
ベルの容姿にも影響を及ぼし心にも深い傷を残していたのだ。
バークとベルの激情的な愛を軸に物語はつき進む。

バークの脇を固める闇のファミリーの面々も健在。
スパイをつとめるオカマのミシェルや浮浪者のプロフ、
科学技術者で爆弾の扱いにたけたモグラや空手使いのマックスなど
個性豊かなやつらが物語をさらにワイルドに盛たてる。

バークとベルの狂おしいまでの激情は
物語のクライマックスに向けてぐんぐんと加速し
読む者をハイテンションのまま衝撃の結末へと導いていく。
闇の敵との激闘の末に訪れる哀切極まりないラストシーン。
結末はただひたすら悲しく読後いつまでも心に残るだろう。
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┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== ハードボイルド ==

八百万の死にざま

ローレンス・ブロック
ハヤカワ文庫(絶版)
★★★★★☆



大都会ニューヨークを生きる人々の夢と孤独を描ききった傑作

【あらすじ】
コールガールをしているキムが、足を洗いたいので
ヒモのチャンスに話をつけてくれとスカダーに頼んできた。
交渉にのぞんだスカダーだったがヒモはあっさりと
その依頼を受け入れてくれた。
ところが後日、キムが何者かに滅多刺しにされ殺された。
チャンスの仕業とにらんだスカダーだったが
彼は否認し逆に犯人探しをスカダーに依頼して来る。

【読みどころとポイント】
アル中探偵マット・スカダーの視点を通して
大都会マンハッタンで生きる人々の夢と孤独を
哀感たっぷりに描いたシリーズの代表作。

ニューヨーク市警だったころ、強盗犯に向けて発砲した流れ弾で
八歳の少女を死なせてしまった暗い過去を引きずるスカダー。

この事故が契機となって警察を辞職し
アルコール依存の道へ歩むことになってしまった彼は
探偵稼業を続けながらAA(禁酒に取り組む人々の集会)に
足繁く通うさえない毎日を送っている。

新聞では毎日のように繰り返し殺人の報道がなされ
どこの刑務所も受刑者過剰。仮釈放委員会が力を持ち
手当たり次第に釈放しニューヨークには犯罪者があふれている。
スカダーの知り合いの刑事がつぶやく。
この腐りきった街には八百万の死に様ざまがあると。

コールガールの死など新聞の片隅でしか報じられない卑しい街で
スカダーは、うらぶれた生活をおくる人々を訪ね歩き
彼らの孤独、夢、挫折をひとつひとつ拾い集めていく。

世の中の不条理と深い孤独にさいなまれ
何度となく酒への誘惑に負けそうになるスカダーが
自らの弱さと対峙しながら信条を貫こうとする姿に
心うたれないではいられない。

そしてすべての真相をつきとめた後のラストシーン。
最後に起こる「最高にくだらないこと」は
何度読んでも、やっぱり泣かされる。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 冒険小説 ==

ボビーZの気怠く優雅な人生

ドン・ウィンズロウ
角川文庫
★★★☆



伝説の麻薬王に仕立てられた泥棒が繰り広げる冒険クライムストーリー!

【あらすじ】
海兵隊あがりのチンケな泥棒ティム・カーニーは、
服役中の刑務所で正当防衛のためにヘルズエンジェルズのならず者を殺し、
ムショにいながら命を狙われる身となってしまった。
そこに目をつけた麻薬取締局がとんでもない取引きをティムに持ちかける。
南カリフォルニアに君臨する麻薬組織の帝王、ボビーZの替え玉となって
メキシコの麻薬組織に拘束されている捜査官との人質交換に応じろというのだ。
ドン・ウィンズロウが描く痛快でスリルあふれる冒険クライムストーリー!

【読みどころとポイント】
容姿が麻薬組織の帝王ボビーZにそっくりであることから
Zの替え玉にされてしまった哀れなティム。
当局の話では、ボビーZは既にタイで死亡。
これはメキシコの麻薬組織も知らない極秘情報なのである。

ところがいざ人質交換の場所に赴くと
取引現場で銃撃戦が起こり作戦は失敗。当局の人質捜査員は死亡。
ティムはどさくさにまぎれてメキシコ麻薬ディーラーのもとへ逃走する。
予想外の展開にとまどうティムだったが
麻薬取引が築き上げたアジトに着くと、そこはまさに夢の楽園。

豪華なコテージに夢のようなご馳走、周りは美女だらけ。
ボビーZの優雅な日々を満喫するティムだったが
ここからドラマは一転、6歳の子どもを連れての逃避行へ。

タイトルの「優雅な〜」とは裏腹にスリリングな逃亡劇が
これでもかとばかりにアクションたっぷりに展開。これは痛快だ!
海兵隊で培ったサバイバル術を駆使して
迫り来る追っ手を次から次へと翻弄するティム。
派手な銃撃戦や過酷な山越えなど見せ場もたっぷり。

本物のボビーZの女、エリザベスとの甘いロマンスや
一緒に連れ歩く少年キットの恐怖心をあおらないように
これはヒーローのアクションムービーだよなんて思わせちゃう
ちょっとハートウォームな場面もあったりして泣かせます。

いや〜、ドン・ウィンズロウは何を読んでも面白い。
ラストは意外(ややありがち?)なオチもあり
まるでハリウッドのアクションムービーを見ているようだ。
このスピーディーで痛快なエンターテインメント、未読の方はご一読を。


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== サスペンス ==

閉じられた環

ロバート・ゴダード
講談社文庫
★★★★



歴史の運命に翻弄された者たちをサスペンスフルに描くミステリロマン

【あらすじ】
大恐慌時代の余波さめやらぬ1931年、アメリカでの失策により
這々の体で豪華客船に乗り込みイギリスへ戻る詐欺師コンビ、ガイとマックス。
船上で偶然乗り合わせた著名な投資家の娘ダイアナをカモろうと画策するが
絶世の美女を前にしたマックスは本当の恋に落ちてしまう。
2人の様子から当初の計画履行に不安を抱くガイであったが
ダイアナの父であるチャーンウッドから彼らの恋愛を阻止するように頼まれ
躊躇しつつもやむなく行動をおこしてしまう。
しかしそれは思いもかけぬ殺人劇へのプロローグだった。

【読みどころとポイント】
相手を騙そうと思った者が逆に思いも寄らぬ運命に呑み込まれ…。
名匠ロバート・ゴダードお得意の逆?巻き込まれ型サスペンス。
相変わらずのストーリーテリングで読ませる読ませる。

初期の作品に見られた重厚な謎をゆっくり紐解いていく味わいは薄れたけれど
読み始めたらやめられないサスペンスフルな展開は面白さ十分。
読者は主人公のガイと一緒に次々と訪れるトラップに翻弄される。

ガイは詐欺師としての打算とある種の冷静さを兼ね備えた男だが
相手を徹底的に不幸にするほどの非情さは無く
ユーモアと自虐を兼ね備えた実は「いい奴」なのである。
だからこそ、読者はガイに感情移入しどこかで彼を応援してしまうのだ。

ゴダードの作品はプロットが実に緻密に練られており
物語の構成自体がミステリになっているため
ストーリーをここであまり丁寧に紹介しすぎてしまうと
未読の方の興味を大きく損なってしまう。
まったくもってレビューにはいつも泣かされる。

仕方無いので少しだけ書いておくと
本作では美女ダイアナの父に隠されていた恐るべき秘密が
物語の鍵ですべての悲劇の発端なのだが
この真相自体はやや荒唐無稽と言えなくもない。

それよりも、その運命に翻弄された者たちが繰り広げる
緻密な人間ドラマが本作のミソ。
詐欺師であるガイが逆に様々な人間のエゴや打算に相対して
己を見つめ笑いそして行動を起こす清々しさ。

何度も罠におちいりながら最後にガイにおとずれる灯。
パンドラの匣の底には「希望」が残っていた。
というわけで、この手のサスペンスを書かせても
ロバート・ゴダードはやっぱりひと味違いますね。


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== 現代ミステリ ==

エアーズ家の没落

サラ・ウォーターズ
創元推理文庫
★★★★




ミステリと文学が融合した美しくも残酷な滅びの物語

【あらすじ】
イギリス中部のウォリックシャー地方で栄華を極めたエアーズ家の一族は、
第二次世界大戦終了後、ゆっくりと着実に没落の道をたどっていた。
かつてエアーズ家に憧憬を抱いていたファラデー医師は、
往診をきっかけに一族との親交を徐々に深めていく。
一方、広壮なハンドレッズ領主館でひっそりと暮らすエアーズ家の一族に
次々と異変が続発し不穏な空気が屋敷全体を満たしていく。
ミステリと文学が融合した美しくも残酷な滅びの物語。

【読みどころとポイント】
時代の移り変わりと共に没落していく貴族の姿を克明に描いた作品。
かつて隆盛を極めた一族の滅びの様子を丁寧な筆致で
あくまでも美しくミステリアスに描き出した傑作である。

サラ・ウォーターズは「荊の城」や「夜愁」でも知られる通り
英国を舞台にしたミステリを手がける作家であるが
かつての英国の栄華に隠れた悲劇を描き出すのが実に上手い。
インタビューでも好きな作家にディケンズをあげており
作風もかなりディケンズを意識していると思われる。

本作では、壮大なハンドレッズ領主館で没落をたどる一族と
ファラデー医師の交流を軸に物語は展開していく。
一族との交流を深めるファラデーは足繁くエアーズ家を訪れるが
領主館を包む不穏な空気が徐々に一族の精神を蝕んでいく。

愛犬に訪れた悲劇、夜ごと頻出する不穏な物音、
部屋の壁や天井に浮き出る不気味な染み、
長兄のロデリックはやがて精神に異常をきたす。
果たしてこれは何者かの仕業なのか。

不気味な雰囲気を全編に漂わせながら
物語は読者を残酷な滅びの世界へ導いていく。

やや使い古された恐怖小説の構成をとりながらも
サラ・ウォーターズの鮮やかな筆さばきは
安直なゴシックミステリやモダンホラーに陥る事無く
かくも美しい滅びの文学に昇華させた。
これからの秋の夜更けにおすすめしたい作品だ。



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