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== ノワール ==

明日への契り

ジョージ・P・ペレケーノス
ハヤカワ文庫
★★★★★



男たちの生きざまと哀しみ、そして誇りを高らかに描いた傑作

【あらすじ】
ワシントンDCでレコード店を営むマーカス・クレイは
相棒のディミトリ・カラスと4つ目の新しい店を開いたところだ。
その店の前でスピードを出しすぎた自動車が事故を起こし車は炎上。
たまたま近くに居合わせた白人の若者が
炎上する車の中に大金を見つけ持ち去ってしまう。
その金は、実は地元を牛耳るコカインの売人タイレルのものだった。
偶然現場を目撃した少年アンソニーからその話を聞いたマーカスは
彼に危険が及ぶ事を案じたが、やがて組織の手は徐々に少年に迫ってきた。
ワシントンDCの裏面史を描くサーガ第3弾。

【読みどころとポイント】
1作目の『俺たちの日』でペレケーノスのファンになった人も多いと思うが
今回もその期待を裏切る事無く素晴らしく感動的な物語に仕上がっている。

舞台となっている1980年代のワシントンDCは街が腐敗し
90年初頭には市長までが麻薬所持で逮捕されるほどの状況だったそうだ。
そんな汚れた卑しい街を舞台に生きる男たちの夢や挫折、
哀しみ、そして誇り高き生き様を実にいきいきと描かれている。

妻や息子と別れ失意にありながら復活にかけるマーカス、
出来心で大金を盗んでしまった若者エディ、
ヤクに日々逃避するろくでなしのディミトリ、
盗難現場を偶然見かけた貧しくも純粋な心を持つ少年アンソニー、
街を牛耳る売人タイレルと冷酷な手下たち、
タイレルから賄賂をもらいながら街を徘徊する警官。

さまざまな事象が複雑にからみあいながら
誰もが逃れられない状況がつくられていき
それが徐々に沸点に達しクライマックスへなだれこむ。
頁をめくる手が徐々にスピードアップしていく興奮。

ノワールとしての緊迫感ももちろんよく出来ているのだけれど
それよりも随所に織り込まれるエピソードが実に感動的。
アンソニーに別れた息子を重ね合わせ手を差し伸べるマーカス。
悪事に手を染めながらも心を病む妻を思いやる警官ケビン。
どれもこれもが一読忘れ難い名シーンなのである。

本3部作の前に既にワシントンDCを舞台にした2作があり
この後にもサーガ完結編の『生への帰還』が続いている。
登場人物が何世代かにわたって描かれていくこの物語は
すべて読破しなければならないと改めて心に誓った。
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┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== マンガ ==

COPPERS

オノ・ナツメ
講談社モーニングKC
★★★★



ニューヨーク市警51分署の警官たちの活躍を乾いたタッチで描く短編集

【あらすじ】
アメリカニューヨークのブロンクス地区にある
NYPD(ニューヨーク市警)51分署の警官たちは実に個性的な面々。
各々独自のスタイルで今日も大都会の片隅でパトロールに奔走中。
大都市ニューヨークに渦巻く警官と市民の人間模様を
乾いたタッチだけれどハートウォーミングに描く
オノ・ナツメ版、アメリカ警察ドラマの傑作!

【読みどころとポイント】
それにしても、オノ・ナツメはいい。
どこか乾いたタッチで登場人物のセリフも最低限。
タッチもカット割りもイラストレーションっぽくて
マンガっぽくないんだけれど
この作風が本作に実にマッチしてるんだな。

多くの言葉を語らない登場人物一人ひとりは
それなりに悩みや課題を抱えているけれども
心の奥底に警官であることの矜持を持っている。
そんなニューヨーク市警の警官たちを軸に進むストーリーは
大都会に渦巻く人間模様をいきいきと描き出しているのだ。

当然ながらマクベインの「87分署シリーズ」を意識しているだろうけど
あまり派手なアクションや陰惨な事件は起きず
静かだけれど心地よい余韻と感動のあるストーリーが展開。

常に冷静沈着、部下からの信頼も厚い警部補ヴォス。
のんだくれの万年ヒラ最古参刑事、心優しき庶民の味方タイラー。
交際相手からプロポーズされ、警察を辞めるべきか悩む女警官モーリーン。
自己管理力ゼロのお調子者、新米刑事のヴァル。
ヴァルのような問題児の教育を押し付けられる模範刑事キース。
気弱で何をやってもうまくいかない内勤巡査のハウスマン。

一人ひとりのキャラクターも実によく立っていて
読み終えた後でも、何度も彼らに会いたくなってしまう。
今のところ2冊のみであるが、Season1となっており
作者によると、今後の続編も予定されているらしい。
早く彼らにまた会いたいものだ。



┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 冒険小説 ==

眠れる犬

ディック・ロクティ
扶桑社ミステリー(絶版)
★★★☆



14歳の生意気娘セーラと中年探偵レオの絶妙コンビが活躍するロードミステリ!

【あらすじ】
女優の祖母とロスで2人暮らしをするセーラの愛犬が失踪した。
セーラは警察に届けるが相手にされず、代わりに中年私立探偵を紹介される。
後日セーラは、紹介されたレオ・ブラッドワースを訪ねるが
犬探しに気乗りしない彼は相棒のキャスパーに対応をたのんだ。
しかし、後日キャスパーが死体となって発見されてしまった。
かくして14歳の生意気娘セーラと、中年探偵レオの愛犬探しが始まったが
そこには恐るべき罠が待ち構えていた。86年ネロ・ウルフ賞受賞作。

【読みどころとポイント】
兎に角、探偵レオの相棒をつとめる14歳の超小生意気な娘
セレンディピティ・ダールクィスト(通称セーラ)の造形がダントツ。
怖いもの知らずの減らず口で、出会う全ての大人たちに痛烈な言葉を浴びせる。
これはまさに、少女版「ニール・ケアリ(『ストリート・キッズ』)」だ!

ストーリーの骨格をなす事件もなかなか複雑怪奇。
愛犬失踪の鍵をにぎる彼女の母親は、マフィアとおぼしき男とこれまた失踪中。
おまけに2人の行く手に次から次へと死体が現れて
レオが謎の男たちにメタメタにされたり
セーラが誘拐されたりと、読みどころはいっぱいなのだ。

拉致されてもなお軽口をたたくセーラの姿も堂々としたもの。
セーラとレオは、反目し合いながらもどこかお互いに信頼を寄せ合いながら
見事な?コンビネーションで真相解明の旅を続ける。
生意気ながらも感受性豊かな少女セーラと
それを大人の目線で見つめるレオのからみが何とも微笑ましいのである。

物語はレオとセーラの2人の視点で交互に進み
プロットもやや混みいっているため、少し読みづらい印象を受ける。
全体の贅肉をそぎ落としてスリムな物語にしたら
もっとスタイリッシュで軽快なロードミステリに仕上がっただろう。

エンディングは次にも期待を持たせるような終わり方で
調べてみたら案の定、続編も出ているらしい。
またこの2人の冒険に付き合えるのはこの上なく幸せだ。

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== 現代ミステリ ==

猟犬クラブ

ピーター・ラヴゼイ
ハヤカワ文庫
★★★☆



すべての海外ミステリファンに捧げるダイヤモンド警視シリーズの異色作

【あらすじ】
ミステリ愛好家の集まり「猟犬クラブ」は個性的な面々ぞろい。
集まるたびに、自己中心的なミステリ論を戦わせている。
そんな折、世界最古の切手が郵便博物館から盗まれるという事件が発生。
続いて、会員の一人が死体で発見されたから会員たちは大騒ぎ。
この難事件に挑むのは、ミステリ小説に詳しくないダイヤモンド警視。
全編にミステリの趣向がパロディとして詰め込まれ
黄金期の香りと現代の警察小説が融合したシリーズ最大の異色作。

【読みどころとポイント】
さて、ミステリ愛好家なら当然ご存知の『猟犬クラブ』である。
未読の方に少しだけ『猟犬クラブ』という会の紹介を。
ミステリ好きが集まって楽しく?ミステリ談義をして知識を共有が目的なのだが
どーもなかなかこのメンバーではそう上手くはいかないのである。

メンバーをざっと紹介すると…
初版本ミステリの蒐集家で猟犬クラブ会長のポリー・ウィチャリー。
ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』を聖書の如く崇めるミス・チルマーク。
熱烈なアガサ・クリスティファンのマイロ・モーション。
女性探偵もののエキスパートであるジェシカ・ショー。
ハードボイルドとクライムノワールに傾倒するルパート・ダービー。
寡黙で謎めいた存在のディクスン・カー愛好家のシド・タワーズ。
新会員で幅広いミステリ好きのシャーリー=アン・ミラーなど。

作者のラヴゼイは、ミステリのジャンルをわざとらしいまでに類型化して
その愛好家たちをキャラクターとして設定している。
これだけ趣味の異なった面々だから、集会のたびに激論が飛び交うわけで
そもそも会自体が成り立つはずがないなんて思うのは私だけでないはず(笑)

世界最古の切手が郵便博物館から盗まれるという事件が発生し
その切手が猟犬クラブの会員が持参した本(カーの『三つの棺』)の
頁の間から発見されるという、何とも古式ゆかしい展開が描かれ
続いてクラブの会員が住むナロウ・ボートから別の会員の死体が発見され
現場は完全な密室状態であったというオマケまでついてたりする。

犯人とおぼしき人物が残した謎のメッセージや、謎かけのような犯行予告など、
兎に角、ミステリファンを思わずニヤリとさせる展開が随所に散りばめられ
私のように海外ミステリを愛読してきた人間には読んでいて実に楽しいのである。

類型的な登場人物たちがミステリにかける情熱は
一般の人から見れば滑稽で時には遍質的に見えるけれど
この小説にニンマリする読者は少なからず彼らと同じ穴のムジナなのですよ。

レビューの★の数がやや少ないのは、犯行の動機が単純すぎて
あ〜結局それなんですか…という感じだから。
それでも、海外ミステリファンなら一度は目を通しておきたい作品。

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