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== 現代ミステリ ==

苦い林檎酒

ピーター・ラヴゼイ
ハヤカワ・ミステリ文庫(絶版)
★★★



英国のリンゴ園で起こった殺人事件の真相をたどる芳醇なヴィンテージ・ミステリ

【あらすじ】
イギリスで大学講師をするセオの元へアメリカ娘のアリスがやってきた。
彼女は戦時下のリンゴ園で起った殺人事件をめぐる裁判で
有罪となり死刑に処せられた米軍兵士デュークの娘だった。
セオは当時、デュークに不利な証言をしてそれが判決に影響を与えた。
アリスは父親の無実をはらそうと、セオを訪ねてきたのだった。
あれは冤罪だったのか?20年前の殺人事件の真相は…。

【読みどころとポイント】
ヴィクトリア朝を舞台にした歴史ミステリを得意としてきたラヴゼイが
第二次大戦中に時代をうつして書き上げたミステリ。

戦時下、当時9歳だったセオは、ロックウッド夫妻の経営するりんご園に預けられ、
夫妻の娘である19歳のバーバラに可愛がられた。
やがてデュークとハリーというアメリカ兵がりんご園を訪れるようになり
バーバラとも親交を深めるようになっていった。

一方、近隣に住む臨時雇いの青年クリフ・モートンが
バーバラにつきまとうようになり暴行事件を起こしてしまう。
そして、クリフは失踪。バーバラは自殺をした。
ところが林檎酒を作る発酵桶の底からクリフの頭蓋骨が見つかったのだ。

バーバラと恋愛中だったデュークの発作的な殺人と見なされ
二人の関係を裏付けるセオの証言もデュークの有罪を後押しすることに。
目撃者不在のなか、状況証拠でデュークは死刑確定となってしまったのだ。

う〜ん、なかなかよく出来ている。まず、テーマと舞台設定が良い。
ほろ苦くも甘い林檎酒の香りと、年上の美しい娘への憧憬が
何とも言えぬ郷愁感を誘う芳醇なヴィンテージ・ミステリとなっているのだ。

そしてもうひとつ、この小説のポイントは、
少年の頃の甘酸っぱい淡い恋心や、純朴な心の中に芽生える大人への憧れが
極めて重要なミステリの要素になっていることだ。
これ以上、詳しくは書けないが、ラヴゼイが仕掛ける巧妙な演出に
読者も知らず知らずのうちに騙されてしまうのではないだろうか。

難点をあげれば、大人になった主人公セオの個性がやや乏しく
当時のデュークやバーバラとの交流の書き込みが足りないため
真相究明の行動の必然性や真相解明後のカタルシスが弱いところだろうか。

とは言え、秋深まるこの時期に、林檎酒を片手に香りを楽しみながら
クラシックなミステリを堪能するのも良いのではないだろうか。
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┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 国内小説 ==

武士道エイティーン

誉田哲也
文春文庫
★★★★★



青春エンターテインメント「武士道シリーズ」、感動の完結編。

【あらすじ】
宮本武蔵を心の師と仰ぐ磯山香織と、日舞から剣道に転進した甲本早苗。
彼女たちもついに三年生。最後のインターハイでの決戦は目前だ。
部下の指導に頭を悩ます香織、思わぬアクシデントに見舞われる早苗。
二人の勝負のゆくえはいったいどうなるのか?
オールキャスト総登場でおくる感動のクライマックス。
青春エンターテインメント「武士道シリーズ」、堂々の完結編。

【読みどころとポイント】
既に読んでいたのだけれど、随分レビューが遅くなってしまった。
シックスティーン、セブンティーンと続いてきた3作目の完結編。
結論から言うと、完結編にふさわしい出来映えだった。

宮本武蔵を崇拝する一匹狼の女剣士「磯山香織」も剣道部の主将。
剣道部をまとめあげていく事に難儀し、後輩の指導にも頭を悩ます毎日。
そもそも自分勝手に生きてきた人間がはじめて剣道部を俯瞰し
リーダーシップを発揮していくのだから無理も無い。

一方、福岡南高校に転校したライバルの甲本早苗も
思わぬアクシデントに見舞われ、香織との闘いの前に
大きなハンデを背負ってしまう。
もともとお気楽に剣道をやってきた早苗が
この危機をどのように乗り越えて行くのかも見どころ。

本書の楽しみはそれだけでなく、脇役の銘々伝もなかなか読ませる。
香織の師匠「桐谷隆明」が道場を開いたいきさつや
早苗が所属する福岡南高校の顧問「吉野先生」の血風録、
モデルをめざす早苗の姉「緑子」の恋愛話まで、
とにかくオールキャスト総登場、サービスたっぷりの完結編だ。

とにかく、武士道シリーズは面白かった。
武士道という見立ての中で、香織と早苗の「心の間合い」や
一人ひとりの生き方、人生観を鮮やかに描き出した点が素晴らしい。
3年間が輝いていただけに、ラストはほんの少し寂しいけれど
それもまた人生。香織と早苗、二人の未来に幸あれ!

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== サスペンス ==

リオノーラの肖像

ロバート・ゴダード
文春文庫(絶版)
★★★★★☆



親子2代にわたる出生の秘密と殺人事件の真相をたどるゴシック・ミステリの傑作

【あらすじ】
フランスのチエプヴァルに立つ第一次大戦行方不明者の記念碑の前に
70歳の老婦人リオノーラ・ギャロウェイは娘のピネロピを連れてきた。
長い人生をかけてようやく知りえた秘密を語り聞かせるために。
自分を生んだ直後に世を去った母。ソンムの会戦で戦死した父。
彼女が過ごしたミアンゲイト館で起こった殺人事件。
あの日に館でいったい何があったのか?
稀代のストーリーテラー、ロバート・ゴダードが贈るゴシック・ロマン。

【読みどころとポイント】
リオノーラ・ギャロウェイが物心ついた時に既に両親は他界し、
彼女はミアンゲイト館で不遇な少女時代を過ごした。
祖父の後妻であるオリヴィアからは冷たくあしらわれ
遺産も独り占めされてしまう。

そんな境遇にも負けずやっと結婚相手を見つけ
子どもにも恵まれ幸せな一歩を踏み出した矢先に
彼女の前にトム・フランクリンと名乗る一人の男が現れる。
その男は、父のジョンと戦友だったという。
彼が語りだした昔話は、長いあいだ闇に包まれていたリオノーラの
数奇な人生とミアンゲイト館で起こった事件にまつわるものだった。

本書は親子2代にわたる出生の秘密と
長い間ベールに隠されていたある殺人事件の真相を
回想形式で綴って行く重層的な物語である。

遡る時間とともに深まってゆく謎。
物語は二転三転し、ほとんどの真相が明らかになった後にも
さらに残る不可解な疑問…。
そしてラスト数ページで明かされる真実。

複雑な人間ドラマそのものを重厚なミステリにしてしまう才。
文庫で600頁以上ある物語の長さを全く感じさせない
これぞ、ゴダードの真骨頂。名人芸としか言いようがない。

デュ・モーリアの「レベッカ」のようなクラシカルなムードと
貴族の館ミアンゲイト館の醸し出すゴシックな雰囲気、
全編を漂う静かなサスペンスが見事に結晶した
ロバート・ゴダード初期の傑作である。

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== 国内小説 ==

世界でいちばん長い写真

誉田哲也
光文社文庫
★★★★



不思議なカメラを手にしたフツーの中学生のさわやかな青春小説


【あらすじ】
クラスの人気者だった親友の洋輔が転校してから、
宏伸は冴えない毎日を送っていた。
たいした目標もなく、クラブ活動の写真部も気が入らず。
そんなある日、祖父の古道具屋で不思議なカメラに出合う。
それは、世界一長い写真が撮れるカメラ。
そのカメラを手にした宏伸の生活が徐々に動き出して行く。
ベストセラー作家の誉田哲也が贈る、さわやかな青春小説!

【読みどころとポイント】
肩の力を抜いてサクサク読めるさわやかな青春小説。
主人公はどこにでもいるフツーの中学生。
勉強もフツー、スポーツも得意というほどではなく
恋愛に対してもあまり積極的ではない。

そんなどこにでもいそうな中学生が
ふとした事で不思議なカメラを手にした日から
生活が徐々に変わっていく。

まず、この小説のポイントは
これと言ってとりえのない(かと言って落ちこぼれでもない)
普通の中学生を主人公にすえた点だ。
読者に、何となく自分もこん感じだったよな〜という
妙な親近感を与えたことがミソ。

そしてもうひとつのポイントは作中で宏伸が手にした不思議なカメラ。
このカメラは、360度パノラマ写真による世界でいちばん長い写真が撮れるのだ。
360度を映し出すカメラを内向きな主人公に持たせることで彼の視野を広げ
「君の周りにはこんなに素晴らしい世界があるんだよ」という事を
宏伸にも、そして読者にも知らしめた事だ。

さすが上手いぞ、誉田哲也。
宏伸をとりまく年上の従姉・温子や写真部の部長・奈々恵とのやりとりも良い。
彼を叱咤激励するのがいづれも女性っていうのもハマっているのだ。
宏伸がこのカメラを使ってどんなチャレンジをするのかは読んでのお楽しみ。

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== 現代ミステリ ==

二流小説家

デイヴィッド・ゴードン
ハヤカワ文庫
★★

二流

冴えない二流小説家ハリーが巻き込まれた連続殺人事件

【あらすじ】
中年作家のハリーは、SFからヴァンパイア小説、ポルノまで
様々な執筆で何とか生計を立てているも、
彼女には愛想をつかされ冴えない日々を送っている。
ところが、そんなハリーに逆転のチャンスが訪れた。
服役中の連続殺人鬼から告白本の執筆を依頼されたのだ。
殺人鬼の面会に刑務所へ赴くハリーだったが
それは思いもよらぬ連続殺人の幕開けだった。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補作

【読みどころとポイント】
何なんでしょう。この小説は。
帯には「全米を欺いた三冠海外ミステリ」とうたわれているが
まったくもって理解出来ません。

たいしたドンデン返しがある訳でもなく
グロテスクな描写ばかりがクローズアップされ
主人公のハリーも連続殺人にドタバタを繰り返すだけ。

犯人の造形もありきたりです。
陰惨な事件が頻発するにもかかわらず
全体のトーンがコミカルで雰囲気がミスマッチ。

随所に挿入されるハリーの小説(作中作)も何らかの伏線かと期待するも
最後までたいした意味を持たず片手落ち。
最後の数行で思わせぶりな記述があるものの
オチを曖昧にしただけの尻切れとんぼで終わっている。

新刊文庫で1,000円もしますが、コスパ悪すぎです。
唯一の救いは、ハリーと彼をとりまく登場人物(特に女性)のキャラが
うまく書けていて会話のテンポやセリフ回しが良いこと。

むしろミステリよりもハートウォームなラブコメの方が
この作家はいきるんじゃないかなあ。
残念ながら、ミステリとしては二流小説でした。

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