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== サスペンス ==

つなわたり

ハヤカワ文庫
ピーター・ラヴゼイ
★★★



終戦後のロンドンを舞台に対照的な二人の女性が計画する危険な交換殺人

【あらすじ】
第二次大戦が終了し、平和を取り戻したロンドンで
二人の女性が偶然の再開をした。
戦時中は空軍司令部に所属していた二人だが
現在は既に結婚して夫がいる身であった。
一人は公務員の夫を持ちつつましく生活するローズ。
もう一人は富豪の夫の財産を湯水の様に使うアントニア。
生活も性格も対照的な二人だったがひとつだけ共通点があった。
それは、今の夫がうとましく邪魔な存在であること。
そして、ある日アントニアがローズに危険な計画をもちかけた。

【読みどころとポイント】
サスペンスで昔からよく使われる「交換殺人もの」である。
代表的な作品ではパトリシア・ハイスミスの「見知らぬ乗客」があり
ヒッチコック監督の映画作品としても有名である。

交換殺人は、まず2人の人間がそれぞれに殺したい相手がいて
自分で直接手を下さずに、相手に代行して殺人をやってもらうことである。
犯罪としての利点は、自分で直接手を下さないため足がつきにくい事。
逆に課題は、各々が予定通り殺人を遂行する事である。

この交換殺人、大抵は片方が先に殺人を犯すのだが
もう一人が躊躇して殺人が決行されない事が多い。
本書もアントニアが先に殺人を決行するものの
ローズが犯行を躊躇し、そこから計画の歯車が狂ってくる。

ローズにしてみれば自分の夫の不可解な死で
警察当局や関係者の視線が気になり
アントニアからも犯行を強要されることで
ここに強烈なサスペンスが生まれるという訳だ。

この流れはまあ、王道で特に目新しいものはない。
本作のポイントは交換殺人の計画者が二人の女性だということ。
ローズとアントニアに生まれる妬みや嫉妬、嘘や裏切りが
何とも嫌〜な雰囲気を醸し出してサスペンスを盛り上げるのだ。

難点はやや結末が強引で尻切れトンボのような印象を受けること。
よくある題材だけに、ラストのオチにもう少し工夫が欲しかった。
とは言っても、1989年の作品だからまあ仕方無いか。
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== 警察小説 ==

失踪当時の服装は

ヒラリー・ウォー
創元推理文庫
★★★★



女子学生の突然の失踪事件の謎を追う警察小説の古典的名作

【あらすじ】
マサチューセッツ州の女子大学生ロウエル・ミッチェルが失踪した。
警察の丹念な捜査にもかかわらず、行方は杳として掴めなかった。
失踪の理由は?果たしてミッチェルは生きているのか?
ブリストル警察署長のフォードと部下のキャメロン巡査部長は、
連日捜査に明け暮れるが有効な手がかりは何一つ発見されない。
警察の捜査活動をリアルに描ききった「警察小説」の古典的名作。

【読みどころとポイント】
これは紛れも無い「警察小説」だ。
しかし現代の警察小説に精通した読者が思い浮かべる
巷の警察小説とは少し趣が違う。

科学捜査が進展した現代では、
捜査の過程でいくつかの手がかりが発見されたり
ミステリとしての魅力づくりのために
割と早い段階で魅力的な謎が提示されたりするのだが
本書には全くそれが無い。

物語を2/3まで読み進めても何の手がかりも見いだせないのだ。
警察の捜査は全て空振り。よりどころとなるのは彼女が残した日記のみ。
しかし、手がかりにつながる記述はほとんど見当たらない。
とにかく捜査の進展が何も無いまま終盤に入るのだ。

それともうひとつ、昨今の警察小説と異なるのは
犯罪を巡る人間ドラマには主眼を置いていないのだ。

通常は聞き込みの課程で様々な登場人物が現れ
失踪した女子大生を取り巻く人間模様が露になっていくのだが
肝心の聞き込みのシーンの描写が無く
キャメロンが聞き込みの結果を署長へ報告するという形で
読者に提示されるため、登場人物の人間像がほとんど伝わらないのだ。

何だかこのように書いていると
とても地味でつまらない小説のように思えるかもしれないが
この物語にリズム感と新鮮さを与えているのは
フォード署長とキャメロン巡査部長のやり取りだ。
お互いに憎まれ口をたたきながらも、どこか信頼感で結びつき
警察官である事の誇りを失わない男たちの
プロフェッショナリズムあふれる行動は実に良いのである。

フォードの残された家族に向ける優しい眼差しや
朝から晩まで捜査に明け暮れるキャメロンの姿は
警察官としての矜持に溢れているのである。

ずばり、本書の醍醐味は…
警察とは何か?警察官の仕事とは何か?を
この二人の行動を通して浮き彫りにした事だと思う。

捜査が行き詰まりを見せ、弱音を吐きかけたキャメロンに
フォード署長が言った次の言葉が本書のテーマを象徴している。

『きみだって警察の仕事が
 どんなことかぐらいは知ってるだろう。
 歩く仕事だ、歩いて、歩いて、歩き回るんだ。
 あらゆる見こみをしらみつぶしにするんだ。
 1トンの砂をふるって一粒の砂金を探し出す仕事だ。
 百人の人間にきいても何の手がかりもなく、
 さらにまたもう百人の人間に
 ききに出かけてゆく仕事なんだ。』


冒頭に述べた紛れも無い「警察小説」たる所以はここにある。

必読。

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