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== 国内SF ==

虐殺器官

伊藤 計劃
ハヤカワ文庫JA
★★★★★



人類の罪と罰を圧倒的なディテイルで描く近未来フィクションの金字塔!

【あらすじ】
サラエボが核爆発によってクレーターとなった近未来。
先進諸国は厳格な情報管理体制でテロに対抗する一方、
後進国では内戦と民族衝突、虐殺の嵐が吹き荒れていた。
アメリカ情報軍のクラヴィス・シェパード大尉は、
大量殺戮の謎を探るべく戦地へと向かい、
虐殺の影に暗躍する謎の人物ジョン・ポールの存在をつきとめる。
果たして彼は何者なのか、そしてその目的は?人々を狂わす虐殺の器官とは?
不治の病で急逝した伊藤計劃が残した近未来フィクションの金字塔。

【読みどころとポイント】
久しぶりにスゴイとうならせる小説を読んだ。
圧倒的なディテイルと近未来のリアリティある設定、
ふんだんに盛り込まれた豊富な知識と教養。

作者の伊藤計劃は、政治や経済、科学、宗教、哲学、情報など
様々なジャンルにおよぶ知を総動員し
単なる軍事スリラーにとどまらない重厚かつ崇高な叙事詩を構築した。

随所に織り込まれる技術も今日の研究領域の延長にあるものばかりで
それが作品のリアリティを高めている。
過酷な戦闘状況に対応するための感情や痛覚へのマスキング処理や
ヘッドセットギアを使わず特殊な薬品で網膜へ直接情報を表示できるシステム、
体内埋め込み型のID認証チップ、さらには人工筋肉を使用した輸送機など
現在の社会において実験段階もしくは構想中の技術が
既にあらゆる場面で実用化されているという設定なのだ。

主人公のクラヴィスは、母親の死について負うところがあり
それが精神的なトラウマになり
自分自身の行動を常に客観的に自問自答しながら戦地での行動にあたっている。

彼の乾いた目線を通して描かれる殺戮の現場は
どこか無機質で抑揚の無い空虚な世界観として提示され
それが逆に人類の罪と罰を明確に浮き立たせ
読者の胸にぐっと迫ってくるのだ。

大量虐殺やテロを抑えるための正当化された暗殺任務に疑問を持ちつつも、
虐殺を引きおこす人物にどこか同じ匂いを感じ取ってしまうクラヴィス。
彼もまた現代社会のゆがみが生み出した虐殺器官であったのかもしれない。

ストーリーについてはやや難があり
謎の人物が大量虐殺に及んだ理由は十分納得できるものではなく
最後に主人公がとった行動と結末についても不満が残る。
また大量虐殺を引き起こす具体的なシステムが
十分開示されていないことに不満を示す読者もいるだろう。

それでも、ここまでの高水準のフィクションを
堂々と書き上げた伊藤計劃の並々ならぬ力量には驚嘆せざるをえない。
彼の急逝が本当に惜しまれる。
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┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== Comment ==

No title
はじめまして。
当方ブログへのコメントありがとうございました。

私もこの作品で使われた大量虐殺を引き起こさせるアイデアにはチョットした驚きを覚えました。この作品が良かったので伊藤の他の作品「ハーモニー」も読んでみましたが、そちらの方もナカナカでした。
nanikaさんへ
こちらこそ当ブログへおいでいただきありがとうございます。ハーモニーもぜひ読んでみたいと思います。よろしければ時々お立ち寄りください。





        
 

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