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== 現代ミステリ ==

源にふれろ

ケム・ナン
ハヤカワ文庫(絶版)
★★★★★



陽光あふれるカリフォルニアのビーチに青春の夢と挫折を描く成長小説

【あらすじ】
砂漠地帯の田舎町に住んでいるチビのアイクは、
町を訪れた見知らぬ若者から失踪した姉の事を聞いた。
「おたくの姉さんはハンティントン・ビーチにいたんだ。
 去年の夏、彼女はメキシコに行った。
 ハンティントンの男が何人かいっしょだった。
 男たちは帰ってきたが、姉さんは帰ってこなかった。」
二年前町を出て行った姉エレンの身に何が起こったのか。
アイクはエレンを探しにカリフォルニアのビーチに赴く。

【読みどころとポイント】
出会ったことを心から喜びたくなる小説がある。
物語が終わっても頁を閉じるのが惜しくなる小説がある。
本書はまさにそんな一冊だ。

ひ弱で内向的な田舎者の少年が姉をさがす課程で
ならず者たちの暴力やドラッグ、女に翻弄されながらも
自分自身の生き方を苦しみながら見いだして行く…
本作は、美しくも切ない青春小説であり、大いなる成長小説でもあるのだ。

作者のケム・ナンは、眩しいくらいのカリフォルニアの描写と
青春時代の翳りを見事なまでに対比させ
若き日の夢と挫折、あやうさ、喪失と再生を描ききった。

何も無い砂漠の田舎町サン・アルコから、
光あふれるカリフォルニアに出てきたアイクのとまどいと不安を
ケム・ナンは実にうまく描いている。
全体的に過多な心理描写を抑えた語り口にすることで
見知らぬ町でのアイクの孤独感と心の葛藤を浮き彫りにしている。

エレン失踪の鍵を握る二人の人物、地元のサーファー「ハウンド」と
ハーレーを駆る暴走族のリーダー「プレストン」。
心に傷を負い対照的な生き方を歩んだ二人を否定しつつも憧れを抱くアイク。
彼らとアイクの心の交錯も読みどころのひとつだ。

随所に織り込まれる過去の挿話もいい。
読んでいない方の為に詳しくは書かないが、
そのひとつひとつが本当に切なく
アイクの孤独感をいっそう際立たせているのだ。

そしてもうひとつの読みどころがサーフィンの場面だ。
波乗りのシーンはダイナミックかつエキサイティング。
まるで自分がサーフィンをしているかのような感覚だ。
自分自身がアイクになってボードを操り波のループをくぐりながら
大きなうねりと一体化する素晴らしい体験が味わえる。
とにかく全編が映像的な描写で、海、光、風、潮の香りまで感じられるようだ。

舞台となっているカリフォルニアのハンティントン・ビーチも
リゾート開発とともにかつての輝きは徐々に色あせており
いたるところにあったロングビーチの多くは失われ
二度と取り戻せない青春時代の輝きを象徴するかのようである。

失われた青春時代の輝きへの悔恨といとおしさを
かくも美しく切なく描いた本書に改めて拍手を贈りたい。
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┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

┗ Comment:5 ━ Trackback:1 ━ 23:30:59 ━ Page top ━…‥・

== Comment ==

No title
絶版ですか…。図書館を調べてみましょう。
バンコランさんの感想は、ついついそそられてその気になってしまいます。
ディックさんへ
ケム・ナンはこの他にあと1作が翻訳されていた程度のマイナーな作家。
でもこれはおススメです。
けっこう成長小説が好きなので
このたぐいはつい★が増えてしまいます。
No title
本日、市立図書館に予約を入れました。
他の区から回ってきますが、すぐに読めそうです。
ディックさんへ
予約を入れて下さったんですね。
昔のサーフィン映画「ビッグ・ウェンズデー」や「カリフォルニア・ドリーミング」を思い出すような小説です。
読みました
「成長」小説とか、「青春」時代を描くとか、ぼくが書くとどうもえらそうな感じがするからと、これらの言葉を封印して感想を書き上げ、もう一度こちらへうかがってみると、パンコランさんのレビューのほうが本書の特徴をよくとらえ、読んだ方は「おもしろそうな本だ」と感じそうに思います。
う~む、本の感想を書くのはむずかしいです。





        
 

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源にふれろ/ケム・ナン
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