== スポンサー広告 ==

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
┗ --:--:-- ━ Page top ━…‥・

== 国内小説 ==

1Q84

村上 春樹
新潮社
★★★★☆



「ありえたかもしれない世界」に展開する若者たちの孤独と共鳴の物語

【あらすじ】
1984年の東京。スポーツジムのインストラクターをしている女性の青豆は
DV犯の暗殺者というもうひとつの顔を持っている。
ある日、暗殺にタクシーで向かう途中渋滞に巻き込まれた青豆は
乗っていたタクシーを止め首都高の非常階段を下りると
天空に二つの月が浮かぶ異質な世界に入り込んでしまう。
一方、予備校の数学教師を務める天吾は
知り合いの編集者から新人賞に応募された作品のリライトをたのまれ
難色を示しつつもその作品の神秘的な力に惹かれ書き直しを承諾してしまう。
その作品を書いたのは深田絵里子(通称ふかえり)という17歳の女性で
後に「さきがけ」というカルト集団との関係が深い事が明らかになるが…。


【読みどころとポイント】
本書は基本的に青豆と天吾の章が交互に展開され
互いの章が共鳴しながらひとつの物語を形成していく構成となっている。

作中で二人の小学校時代の回想が綴られ
「証人会」と称される宗教に傾倒する家庭に生まれた青豆と
NHKの社員である父の集金回りに連れ回される天吾が、
同じクラスに在籍しそれぞれ人に語れぬ悩みを抱いていた事が明らかにされる。

そしてその時二人の間にかわされた一瞬の出来事が
長い時間を経てお互いの心の中に忘れ難い思い出となっていくのである。

本書ではDVを受ける女性たちをかくまいつつ青豆の協力を得ながら
広汎な正義と称して犯罪者に死を与えることを正当化する老婦人や
彼女と青豆の護衛役を務め殺人も厭わない元自衛隊のレンジャー、
警官でありながら青豆と危険な性行動にはしる女性、
新人賞に応募された作品のリライトを天吾に依頼する編集者など
どこか壊れてしまった人間が数多く登場する。

舞台となる1Q84という世界そのものが現代社会が抱える課題を比喩に
独特の世界観を形成しているため本書の感想を書く事は極めて難しい。
どこかで何かが起きているようなのだが
それが明快にわからずほんやりとした不安が漂い
それを象徴するかのように天空には2つの月が不気味に浮かぶ。
物語の途中から「さきがけ」と通じて二人の身辺を調べる牛河という人物が現れ
彼の視点の章が挿入されるようになると不穏な空気が徐々に物語を支配し始める。

「羊をめぐる冒険」や「ダンス・ダンス・ダンス」で書かれてきた
現実から乖離したどこか茫洋とした不思議な感覚は残されつつも
それらに見られた牧歌的な暖かみや軽みは消え去り
1Q84という世界の神秘性と目に見えない闇に対する不安を
青豆、天吾の二人の視点を通して色濃く描いた作品となっている。

村上自身が本作を書いたきっかけとして地下鉄サリン事件をあげており
オウム真理教の地下鉄サリン事件で被害にあった人たちの
インタビューをベースにまとめられた「アンダーグラウンド」などの執筆を通して
原理主義やカルト的な精神支配への対抗を
小説という形態で紡ぎだしてみたいと思うようになったらしい。

例えば、青豆が「さきがけ」のリーダーを暗殺しようとする場面では
儀礼的行為としての幼児虐待に及ぶリーダーを
ことさら狂信者として強調するのではなく
人間とかけ離れた神秘的な存在として描き出すことで
実体の見えないものが人々の精神を支配することの恐怖を
リアリティをもって読者に伝えることに成功している。

現実と虚構を織り交ぜたような構成と
現代社会が抱える闇を独特の比喩と世界観で語った作品だけに
本書の解釈論をめぐっては各方面で様々な議論があるようだ。

難しいことを言わずに単純に「面白い」か「面白くない」かと聞かれれば
「う~ん、面白くはないかなぁ」と答えてしまいそうだが
個人的には、このような物語を現代社会と照らし合わせて
自分なりの解釈をしてみるという読み方をおすすめしたい。



1Q84 BOOK 1


1Q84 BOOK 2


1Q84 BOOK 3
スポンサーサイト

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

┗ Comment:2 ━ Trackback:0 ━ 21:41:41 ━ Page top ━…‥・

== Comment ==

お邪魔しました。
KalaKaLaさんへ
当ブログへお立ち寄りいただきまして
ありがとうございます。
あまり更新できていませんが
よろしければまたおこし下さい。





        
 

== Trackback ==

http://bencolin.blog9.fc2.com/tb.php/97-584f8bef
 
Prev « ┃ Top ┃ » Next
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。