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== 現代ミステリ ==

白夜に惑う夏

アン・クリーヴス
創元推理文庫
★★★☆



白夜のシェトランド島に起こった事件をめぐるペレス警部の活躍

【あらすじ】
イギリス最北に位置するシェトランド島に白夜の夏が訪れた。
地元警察のペレス警部は恋人のフランに付き添って
彼女が友人のベラと共同で開催する絵画展に赴いた。
そこでペレスは、一枚の絵を前に急に嗚咽する奇妙な男を目にする。
その後、その男は逃げるように会場から姿を消し
後日、その男とおぼしき者が死体で発見され殺人と断定される。
この男は一体何者なのか?犯人は島の住民か?
アン・クリーヴズが贈るシェトランド四重奏の2作目。

【読みどころとポイント】
冬が長いシェトランドでは、夜なお明るい白夜が
住まう人々を躁状態にさせてしまうそうだ。
夏だというのに、物語全体に何となく鬱陶しい雰囲気が満ちている。

本作も前作同様、島内で殺人事件が起こり
ペレスが島民一人ひとりにじっくりと話を聞きながら
徐々に事件の真相に迫って行くストーリーだ。

筋立て地味ながら、あいかわらずシェトランド島の風景描写と
島の人々のキャラキターや生活ぶりを丁寧に書いている。
謎解きよりも、ペレスと島民の対話を通して
都会から離れた彼らの飾らない暮らしぶりと、
人生の喜びや哀しみ、ささやかな夢を垣間見て行くことがこの物語の醍醐味だ。

また、物語の横軸としてバツイチどうしのペレスとフランが
お互いに気をもみながら愛情を深めて行くプロセスが描かれ
これもまたひとつの読みどころとなっている。

今回もプロットは地味だが、冒頭でいくつかの魅力的な謎が提示され
真相もかなり後半にならないとわからない構成となっており
ミステリとしても、かなり期待をもって読み進めたのだが
この点に関してはやや期待不足という感は否めかった。

いくつかこの点での課題をあげるとすれば、
全編にわたってぎっちり書きこまれた島民への聞き込み内容が
真相解明にあまり役立てられていないこと、
後半に真相解明の重要な手がかりとなる「ある物」が発見されるが
その提示がかなり遅く、逆に発見以降の解決があまりにあっさりすぎること。

ミステリとしての完成度はやや弱いものの
それでもこのシェトランドシリーズは読み応えがある。
何しろ、後半まで読むと
“島の人々を誰も犯人にしたくなくなる”のである。
シェトランド四重奏の3作目にも大いに期待をしたい。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 現代ミステリ ==

苦い林檎酒

ピーター・ラヴゼイ
ハヤカワ・ミステリ文庫(絶版)
★★★



英国のリンゴ園で起こった殺人事件の真相をたどる芳醇なヴィンテージ・ミステリ

【あらすじ】
イギリスで大学講師をするセオの元へアメリカ娘のアリスがやってきた。
彼女は戦時下のリンゴ園で起った殺人事件をめぐる裁判で
有罪となり死刑に処せられた米軍兵士デュークの娘だった。
セオは当時、デュークに不利な証言をしてそれが判決に影響を与えた。
アリスは父親の無実をはらそうと、セオを訪ねてきたのだった。
あれは冤罪だったのか?20年前の殺人事件の真相は…。

【読みどころとポイント】
ヴィクトリア朝を舞台にした歴史ミステリを得意としてきたラヴゼイが
第二次大戦中に時代をうつして書き上げたミステリ。

戦時下、当時9歳だったセオは、ロックウッド夫妻の経営するりんご園に預けられ、
夫妻の娘である19歳のバーバラに可愛がられた。
やがてデュークとハリーというアメリカ兵がりんご園を訪れるようになり
バーバラとも親交を深めるようになっていった。

一方、近隣に住む臨時雇いの青年クリフ・モートンが
バーバラにつきまとうようになり暴行事件を起こしてしまう。
そして、クリフは失踪。バーバラは自殺をした。
ところが林檎酒を作る発酵桶の底からクリフの頭蓋骨が見つかったのだ。

バーバラと恋愛中だったデュークの発作的な殺人と見なされ
二人の関係を裏付けるセオの証言もデュークの有罪を後押しすることに。
目撃者不在のなか、状況証拠でデュークは死刑確定となってしまったのだ。

う〜ん、なかなかよく出来ている。まず、テーマと舞台設定が良い。
ほろ苦くも甘い林檎酒の香りと、年上の美しい娘への憧憬が
何とも言えぬ郷愁感を誘う芳醇なヴィンテージ・ミステリとなっているのだ。

そしてもうひとつ、この小説のポイントは、
少年の頃の甘酸っぱい淡い恋心や、純朴な心の中に芽生える大人への憧れが
極めて重要なミステリの要素になっていることだ。
これ以上、詳しくは書けないが、ラヴゼイが仕掛ける巧妙な演出に
読者も知らず知らずのうちに騙されてしまうのではないだろうか。

難点をあげれば、大人になった主人公セオの個性がやや乏しく
当時のデュークやバーバラとの交流の書き込みが足りないため
真相究明の行動の必然性や真相解明後のカタルシスが弱いところだろうか。

とは言え、秋深まるこの時期に、林檎酒を片手に香りを楽しみながら
クラシックなミステリを堪能するのも良いのではないだろうか。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 現代ミステリ ==

二流小説家

デイヴィッド・ゴードン
ハヤカワ文庫
★★

二流

冴えない二流小説家ハリーが巻き込まれた連続殺人事件

【あらすじ】
中年作家のハリーは、SFからヴァンパイア小説、ポルノまで
様々な執筆で何とか生計を立てているも、
彼女には愛想をつかされ冴えない日々を送っている。
ところが、そんなハリーに逆転のチャンスが訪れた。
服役中の連続殺人鬼から告白本の執筆を依頼されたのだ。
殺人鬼の面会に刑務所へ赴くハリーだったが
それは思いもよらぬ連続殺人の幕開けだった。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補作

【読みどころとポイント】
何なんでしょう。この小説は。
帯には「全米を欺いた三冠海外ミステリ」とうたわれているが
まったくもって理解出来ません。

たいしたドンデン返しがある訳でもなく
グロテスクな描写ばかりがクローズアップされ
主人公のハリーも連続殺人にドタバタを繰り返すだけ。

犯人の造形もありきたりです。
陰惨な事件が頻発するにもかかわらず
全体のトーンがコミカルで雰囲気がミスマッチ。

随所に挿入されるハリーの小説(作中作)も何らかの伏線かと期待するも
最後までたいした意味を持たず片手落ち。
最後の数行で思わせぶりな記述があるものの
オチを曖昧にしただけの尻切れとんぼで終わっている。

新刊文庫で1,000円もしますが、コスパ悪すぎです。
唯一の救いは、ハリーと彼をとりまく登場人物(特に女性)のキャラが
うまく書けていて会話のテンポやセリフ回しが良いこと。

むしろミステリよりもハートウォームなラブコメの方が
この作家はいきるんじゃないかなあ。
残念ながら、ミステリとしては二流小説でした。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 現代ミステリ ==

猟犬クラブ

ピーター・ラヴゼイ
ハヤカワ文庫
★★★☆



すべての海外ミステリファンに捧げるダイヤモンド警視シリーズの異色作

【あらすじ】
ミステリ愛好家の集まり「猟犬クラブ」は個性的な面々ぞろい。
集まるたびに、自己中心的なミステリ論を戦わせている。
そんな折、世界最古の切手が郵便博物館から盗まれるという事件が発生。
続いて、会員の一人が死体で発見されたから会員たちは大騒ぎ。
この難事件に挑むのは、ミステリ小説に詳しくないダイヤモンド警視。
全編にミステリの趣向がパロディとして詰め込まれ
黄金期の香りと現代の警察小説が融合したシリーズ最大の異色作。

【読みどころとポイント】
さて、ミステリ愛好家なら当然ご存知の『猟犬クラブ』である。
未読の方に少しだけ『猟犬クラブ』という会の紹介を。
ミステリ好きが集まって楽しく?ミステリ談義をして知識を共有が目的なのだが
どーもなかなかこのメンバーではそう上手くはいかないのである。

メンバーをざっと紹介すると…
初版本ミステリの蒐集家で猟犬クラブ会長のポリー・ウィチャリー。
ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』を聖書の如く崇めるミス・チルマーク。
熱烈なアガサ・クリスティファンのマイロ・モーション。
女性探偵もののエキスパートであるジェシカ・ショー。
ハードボイルドとクライムノワールに傾倒するルパート・ダービー。
寡黙で謎めいた存在のディクスン・カー愛好家のシド・タワーズ。
新会員で幅広いミステリ好きのシャーリー=アン・ミラーなど。

作者のラヴゼイは、ミステリのジャンルをわざとらしいまでに類型化して
その愛好家たちをキャラクターとして設定している。
これだけ趣味の異なった面々だから、集会のたびに激論が飛び交うわけで
そもそも会自体が成り立つはずがないなんて思うのは私だけでないはず(笑)

世界最古の切手が郵便博物館から盗まれるという事件が発生し
その切手が猟犬クラブの会員が持参した本(カーの『三つの棺』)の
頁の間から発見されるという、何とも古式ゆかしい展開が描かれ
続いてクラブの会員が住むナロウ・ボートから別の会員の死体が発見され
現場は完全な密室状態であったというオマケまでついてたりする。

犯人とおぼしき人物が残した謎のメッセージや、謎かけのような犯行予告など、
兎に角、ミステリファンを思わずニヤリとさせる展開が随所に散りばめられ
私のように海外ミステリを愛読してきた人間には読んでいて実に楽しいのである。

類型的な登場人物たちがミステリにかける情熱は
一般の人から見れば滑稽で時には遍質的に見えるけれど
この小説にニンマリする読者は少なからず彼らと同じ穴のムジナなのですよ。

レビューの★の数がやや少ないのは、犯行の動機が単純すぎて
あ〜結局それなんですか…という感じだから。
それでも、海外ミステリファンなら一度は目を通しておきたい作品。

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利腕

ディック・フランシス
ハヤカワ文庫
★★★★★



己の恐怖心と闘い打ち勝つ不屈の男シッド・ハレーの活躍を描く傑作

【あらすじ】
調査員のシッド・ハレーのもとに、ある調教師の妻から依頼があった。
厩舎で期待されていた馬が次々と破れ出場不能になってしまうというのだ。
馬に不審な点は無く薬物の痕跡も見当たらないのだが
果たしてこれは何者かの陰謀なのか?
半信半疑で調査に乗り出したハレーだったが、
そこには彼を恐怖のどん底に陥れる脅迫が待ち受けていた。
アメリカ探偵作家クラブ賞、イギリスミステリ作家協会賞の
ダブル受賞に輝く競馬シリーズの傑作。

【読みどころとポイント】
騎手を引退したシッド・ハレーは競馬界で
徐々に調査員としての手腕を認められるようになってきている。
それだけに彼の活躍を疎ましく思う者たちも少なからずいる。

今回は競走馬を出走不能にする陰謀疑惑に関する調査と平行して
ハレーの元妻が巻き込まれた詐欺の調査と
競走馬を所有するシンジケート内での不正に関する調査の
3つのストーリーが展開する。

フランシスは、異なる3つの事件を手際良い筆運びで展開し
それぞれが独立しても成り立つようなドラマとして構成している。
しかも、各エピソードがメインストーリーを際立たせる重要な要素となっている。
いつもながら上手いな〜と感心してしまう。

自己を厳しく律し常にストイックで弱さに負ける事を何よりも恥じる男。
その頑固なまでの生き方に、やがて妻のジェ二イは愛想を尽かし彼の元を去った。
「自分に対して冷酷だわ。わたしはそれが我慢できなかったのよ」
元妻の言葉がハレーの胸につきささる。

その不屈の男が残った片腕に銃口をつきつけられ恐怖のどん底を味わう。
残された1本の腕を失う恐怖。体中が汗まみれになり恐怖にうち震えるハレー。
その脅迫にいったんは屈するものの、もう一度ハレーは立ち上がる。

落馬事故の後のある事件(「大穴」参照)で片腕を失ったハレーが
背筋も凍るような恐怖に見舞われつつも、己の恐怖心に打ち勝ち
悪を罰するまでの苦闘を誇り高く描いた傑作。

ディック・フランシスの書く主人公たちは
誰もが冷静でストイック、自分に厳しい確固たる生き方を持った者たちだが
けっして屈強なスーパーマンではない。
なかでもシッド・ハレーは“恐怖心”というものを
誰よりも知っているキャラクターなのだ。
だからこそ、彼が恐怖心を必死に乗り越える姿に読者は深く感動してしまうのだ。

シッド・ハレーの活躍は以降、「敵手」「再起」へと続いていく。
最後にフランシスファンなら誰でも知っている
シッド・ハレーの名言をここに記しておきたい。

「自分が永遠に対応できない、耐えられないこと、それは自己蔑視である」

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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