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== 現代ミステリ ==

記憶をなくして汽車の旅

コニス・リトル
創元推理文庫
★★★



記憶喪失の女性が巻き込まれたオーストラリア横断鉄道車中の殺人事件


【あらすじ】
“わたし”は、オーストラリア横断鉄道の車中で目覚めた。
なぜこの列車に乗っているのか、私は誰なのか全く思い出せない。
メルボルンの駅から合流したおじさん一家や
婚約者を自称する青年医師にもまったく覚えが無い。
不安の中、列車はオーストラリアを西へひた走るが
車中で次々に不可解な事が起きて、ついには殺人が!
ユーモアとサスペンスが入り交じったトラベルミステリ。

【読みどころとポイント】
なかなか面白い掘り出し物だった。
コニス・リトルという作家。まったく知らなかった。
翻訳されているのも本書を加えて3冊のみ。どれも絶版らしい。

まず冒頭からいきなり記憶喪失という設定と
舞台がオーストラリア横断鉄道の中というのが面白い。
まず、日常から主人公を隔絶させてしまうことで
この危機を自ら乗り越える試練を与える設定が良い。

メルボルンの駅で主人公の“わたし”を待っていた面々は
ちょっと個性的で風変わりな人たち。主人公である“わたし”も、
「記憶なんて戻らなくていい。まっさらな状態からやり直せばいい!」と
大胆にも開き直ってしまうどこか天真爛漫な女性キャラなのだ。

身内に殺人が起きても、登場人物たちがどこかのんびりしてたり
主人公が記憶喪失の割には意外にお気楽な面を見せたりと
そこかしこに違和感があるも、その辺は割り切って読む方がベター。

こうしたユーモラスな登場人物たちが繰り広げるドタバタ劇と
オーストラリア横断鉄道車中の殺人事件が
絶妙なブレンドを醸し出して、なかなか面白いミステリになっている。

記憶を無くした女性の心理的不安や恐怖感を書き込めば、
サスペンスとしては、もっと盛り上がったと思うが、
作者は、ちょっと奇抜な設定とおかしな謎を散りばめた
コージーな雰囲気づくりの方ににこだわったようである。

あまり、暗くなりすぎない展開と車中の滑稽とも言える人間模様は
アガサ・クリスティにも通じる英国伝統の風習喜劇っぽくて、
これはこれで、良いんではないかな~という印象。

紅茶とクッキーを片手にイギリスの地図を広げながら
ゆったり楽しみたいミステリだ。


┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== 現代ミステリ ==

黒い風

トニイ・ヒラーマン
ハヤカワ・ミステリアス・プレス文庫
★★★★



大破したセスナと麻薬密輸にからむ事件の謎を追うナヴァホ警察官

【あらすじ】
真夜中、インディアン保留地の砂漠でセスナが着陸に失敗して大破した。
警察の捜査では麻薬の密輸が疑われていた。
しかし機の残骸や付近から麻薬は発見されなかった。
別件の捜査中に偶然事件現場に居合わせたジム・チー巡査は、
連邦警察から疑いの目をむけられ執拗な追及を受ける。
上司の制止を無視して、真相の究明に乗り出すが…。

【読みどころとポイント】
インディアン保留地を舞台にしたミステリを数多く手がけてきた
トニー・ヒラーマンのジム・チー巡査シリーズ第一作目。
冒頭、ホピ族の一行が不可解な死体を発見するところから物語は始まる。
その後、場面が変わり夜間を航行する一機のセスナが着陸に失敗し大破。

印象的なシーンで幕を開ける本書は、ほどほどの厚さながら
重層的な謎がうまく提示されてプロットもなかなか練られており
ミステリとしてもかなり読ませるのだ。

本作の主な舞台は、もともとナヴァホとホピの共同の使用地だった場所で
最近の裁判でホピの土地に決まったという曰く付きの場所であり
捜査にあたるのがナヴァホ族警察のジム・チー巡査という設定だ。

部族が違えば聞き込み捜査も簡単にはいかない。
ナヴァホ族警察のジム・チーがホピ族の長老に話を聞き出すシーンも印象的。
同じホピ族の保安官補との微妙なコンビネーション捜査も読みどころのひとつ。
後半、神秘的なホピ族の「カチナの儀式」に向かって謎解きも加速し
クライマックスでポラッカ低地を襲う洪水のシーンなどはなかなかの迫力だ。

本書の読みどころは、アメリカ・インディアンの文化や慣習が
巧みにミステリや謎解きにいかされている点である。
つまり真相を究明するには、ホピやナヴァホの文化を
丁寧に読み解いていく事が大切なのである。
この点は、本書を読んでじっくりと体験していただきたい。

全体的の過剰な書き込みや心理描写を抑えた筆致で
ドライな文体はジョゼ・ジョバンニに近いものがあり
大自然を舞台にしたハードボイルドのような作風が
私にとってはこの上なく嬉しい。
トニー・ヒラーマンは初読だが、他の作品もぜひ読んでみたい。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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== サスペンス ==

つなわたり

ハヤカワ文庫
ピーター・ラヴゼイ
★★★



終戦後のロンドンを舞台に対照的な二人の女性が計画する危険な交換殺人

【あらすじ】
第二次大戦が終了し、平和を取り戻したロンドンで
二人の女性が偶然の再開をした。
戦時中は空軍司令部に所属していた二人だが
現在は既に結婚して夫がいる身であった。
一人は公務員の夫を持ちつつましく生活するローズ。
もう一人は富豪の夫の財産を湯水の様に使うアントニア。
生活も性格も対照的な二人だったがひとつだけ共通点があった。
それは、今の夫がうとましく邪魔な存在であること。
そして、ある日アントニアがローズに危険な計画をもちかけた。

【読みどころとポイント】
サスペンスで昔からよく使われる「交換殺人もの」である。
代表的な作品ではパトリシア・ハイスミスの「見知らぬ乗客」があり
ヒッチコック監督の映画作品としても有名である。

交換殺人は、まず2人の人間がそれぞれに殺したい相手がいて
自分で直接手を下さずに、相手に代行して殺人をやってもらうことである。
犯罪としての利点は、自分で直接手を下さないため足がつきにくい事。
逆に課題は、各々が予定通り殺人を遂行する事である。

この交換殺人、大抵は片方が先に殺人を犯すのだが
もう一人が躊躇して殺人が決行されない事が多い。
本書もアントニアが先に殺人を決行するものの
ローズが犯行を躊躇し、そこから計画の歯車が狂ってくる。

ローズにしてみれば自分の夫の不可解な死で
警察当局や関係者の視線が気になり
アントニアからも犯行を強要されることで
ここに強烈なサスペンスが生まれるという訳だ。

この流れはまあ、王道で特に目新しいものはない。
本作のポイントは交換殺人の計画者が二人の女性だということ。
ローズとアントニアに生まれる妬みや嫉妬、嘘や裏切りが
何とも嫌〜な雰囲気を醸し出してサスペンスを盛り上げるのだ。

難点はやや結末が強引で尻切れトンボのような印象を受けること。
よくある題材だけに、ラストのオチにもう少し工夫が欲しかった。
とは言っても、1989年の作品だからまあ仕方無いか。

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== 警察小説 ==

失踪当時の服装は

ヒラリー・ウォー
創元推理文庫
★★★★



女子学生の突然の失踪事件の謎を追う警察小説の古典的名作

【あらすじ】
マサチューセッツ州の女子大学生ロウエル・ミッチェルが失踪した。
警察の丹念な捜査にもかかわらず、行方は杳として掴めなかった。
失踪の理由は?果たしてミッチェルは生きているのか?
ブリストル警察署長のフォードと部下のキャメロン巡査部長は、
連日捜査に明け暮れるが有効な手がかりは何一つ発見されない。
警察の捜査活動をリアルに描ききった「警察小説」の古典的名作。

【読みどころとポイント】
これは紛れも無い「警察小説」だ。
しかし現代の警察小説に精通した読者が思い浮かべる
巷の警察小説とは少し趣が違う。

科学捜査が進展した現代では、
捜査の過程でいくつかの手がかりが発見されたり
ミステリとしての魅力づくりのために
割と早い段階で魅力的な謎が提示されたりするのだが
本書には全くそれが無い。

物語を2/3まで読み進めても何の手がかりも見いだせないのだ。
警察の捜査は全て空振り。よりどころとなるのは彼女が残した日記のみ。
しかし、手がかりにつながる記述はほとんど見当たらない。
とにかく捜査の進展が何も無いまま終盤に入るのだ。

それともうひとつ、昨今の警察小説と異なるのは
犯罪を巡る人間ドラマには主眼を置いていないのだ。

通常は聞き込みの課程で様々な登場人物が現れ
失踪した女子大生を取り巻く人間模様が露になっていくのだが
肝心の聞き込みのシーンの描写が無く
キャメロンが聞き込みの結果を署長へ報告するという形で
読者に提示されるため、登場人物の人間像がほとんど伝わらないのだ。

何だかこのように書いていると
とても地味でつまらない小説のように思えるかもしれないが
この物語にリズム感と新鮮さを与えているのは
フォード署長とキャメロン巡査部長のやり取りだ。
お互いに憎まれ口をたたきながらも、どこか信頼感で結びつき
警察官である事の誇りを失わない男たちの
プロフェッショナリズムあふれる行動は実に良いのである。

フォードの残された家族に向ける優しい眼差しや
朝から晩まで捜査に明け暮れるキャメロンの姿は
警察官としての矜持に溢れているのである。

ずばり、本書の醍醐味は…
警察とは何か?警察官の仕事とは何か?を
この二人の行動を通して浮き彫りにした事だと思う。

捜査が行き詰まりを見せ、弱音を吐きかけたキャメロンに
フォード署長が言った次の言葉が本書のテーマを象徴している。

『きみだって警察の仕事が
 どんなことかぐらいは知ってるだろう。
 歩く仕事だ、歩いて、歩いて、歩き回るんだ。
 あらゆる見こみをしらみつぶしにするんだ。
 1トンの砂をふるって一粒の砂金を探し出す仕事だ。
 百人の人間にきいても何の手がかりもなく、
 さらにまたもう百人の人間に
 ききに出かけてゆく仕事なんだ。』


冒頭に述べた紛れも無い「警察小説」たる所以はここにある。

必読。

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== 現代ミステリ ==

狙われた大リーガー

ウィリアム・G・タプリー
扶桑社ミステリー文庫(絶版)
★★★



元大リーガーの息子誘拐事件に隠された陰謀に挑む弁護士コイン

【あらすじ】
ボストンで弁護士を営むブレイディ・コインは
クライアントの一人であるサム・ファリーナから
将来を期待された豪腕投手エディ・ドナガンの代理人になるように頼まれる。
その後エディは無事ボストン・レッドソックスに入団し
入団当初から連勝を重ね順風満帆のすべり出しに見えたが
一年目の後半から調子を崩し、その後失踪事件をおこし球団を解雇されてしまう。
退団後は妻とも離婚し細々と生計を立てるエディだったが
ある日、エディの息子のE・Jが誘拐され身代金の要求が来る。
そして、何故か犯人は身代金の配達係にコインを指名してきた。

【読みどころとポイント】
ボストンで金持ちのクライアントの弁護士業務を本業とするコインが
本書では選手のエージェントという立場で事件に関わることに。

日本人の多くがメジャーで活躍する今日、
スポーツエージェントの存在は特に珍しいものではないのだが
本作が出版(サンケイ文庫版)された1987年頃は
日本人にも馴染みが薄い職種だったにちがいなく
ストーリー的にも野球王国アメリカならではの設定といえる。

本作はミステリとしてはいたってシンプル。
プロスポーツの選手が巻き込まれる犯罪としての目新しさは無く
物語の経緯から大方の真相の察しはついてしまう。

ただし、つまらないかと言うとそうではなく
誘拐されたのが子どもなので全体的に緊張感も漂い
派手なアクションを好まない?都会派弁護士のコインが
渓谷で犯罪者とのワイルドなチェイスを繰り広げ
ハラハラ感たっぷりの演出も織り込まれている。

ダイナミックな自然の描写は相変わらず上手く
アウトドアライターをしていたタプリーの才が如何なく活かされ
このシリーズのひとつの読みどころともなっている。

犯罪に巻き込まれた選手と家族をめぐる愛や交流、葛藤も
なかなか良く描けていて読ませるし
物語のエンディングの刑事とコインのやりとりも良い。

タプリーは既に亡くなり、日本ではあまりメジャーになれなかったが
私の好きな海外ミステリ作家の1人だった。
上辞された作品はあまり多くはないが、
これからも少しずつ紹介していきたいと思っている。

┃ テーマ:ブックレビュー ━ ジャンル:小説・文学

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